角田災害・建設業担当部長インタビュー 建設業の環境づくり注力 建設DXを積極的に(千葉県)
県土整備部の災害・建設業担当部長に4月1日付けで就任した角田秀樹氏が弊紙のインタビューに応じ、「持続的に建設業が災害対応などに取り組める環境づくりに力を入れていきたい」と抱負を語った。建設業界では担い手の確保が大きな課題と話し、生産性を向上させるため、建設分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を積極的に進めていく考えを示した。
──就任の抱負を。
「近年、激甚化している台風や地震などの自然災害に対し、インフラ整備を着実に進めていくとともに、平時からどれだけ準備しているかが大切だと思う。この“事前防災”の取り組みを強化しながら、災害が発生した場合は初期対応を迅速に進めていきたい」
「県内の建設関連企業には、社会インフラの整備や維持のほか、災害発生時に昼夜を問わず最前線で対応していただいている。建設業がこれらの役割を持続的に担うことができるよう、環境づくりに力を入れていきたい」
──建設業界の課題は。
「県内だけでなく、全国的に深刻な課題となっているのが担い手の確保。これからの建設業を支える若手入職者を育成し、次世代へ技術を継承することが急務となっている。このほか、資材価格などの高騰にも対応していかなければならない」
──重点的に取り組みたいことは。
「生産性の向上につなげるために建設分野のDXを積極的に進めていきたい。具体的には、建設現場のICT施工、3次元モデルを導入して業務の効率化・高度化を図るBIM/CIMを強化するほか、ウェアラブルカメラを使い、現場の材料確認や立会などを実施する遠隔臨場、情報共有システム(ASP)などの取り組みを拡大していく」
「ICT施工については、適用工種を13工種に拡大して取り組みを進めているものの、特に小規模工事で活用が進んでいないことが課題だ。他県の事例や受注者の意見を踏まえながら、現場に合った取り組みを加速していく必要がある」
「DXは、受注者だけでなく、われわれ発注者にとっても大切。カメラ画像のAI活用による交通量調査やレーザースキャナを組み合わせた道路パトロール、ドローンによる点検などの取り組みを推進していきたい」
──週休2日制工事について。
「働き方改革の実現や職場環境の改善など、将来の担い手確保に向け、大変重要な取り組み。昨年10月から、月単位の補正係数を新設するなど、さらなる普及拡大を進めているところだ。単に休日を増やすだけでなく、受注者側の負担を軽減するため、書類の簡素化などにも取り組んでいく」
──建設業の魅力をどう発信する。
「産官学で構成する千葉県魅力ある建設事業推進協議会(CCIちば)では、建設関連団体の協力のもと、県内の小中学校で出張授業を実施している。昨年度は土木プログラム5校、建築プログラム5校の計10校で実施し、900人弱の生徒が参加した」
「3Dブロックで構成された仮想空間の中で、ものづくりを楽しめるゲーム・マインクラフトを活用し、小・中学生が道路や建物などの制作技術を競うコンテストを23年度から開催している。このような取り組みを通じて、建設業の楽しさや、やりがいを伝えていきたい」
──県土を守る災害対応は。
「2024年1月に発生した能登半島地震を教訓にしなければならない。本県は半島性という、同様の地理的特性を持っている。巨大地震が発生して道路が寸断すると、孤立集落の発生や復旧活動への影響などが懸念される。道路の防災機能を強化するとともに、応急対応に当たる建設関連団体など関係機関との協力体制が重要となる」
「昨年9月には県建設業協会など関係事業者の協力のもと、道路啓開計画を策定・公表した。さらに、緊急点検で対策が必要と判明した道路法面90カ所については、測量や地質調査を実施し、早期の着工を目指している」
「海上からの物資輸送の拠点となる港湾施設の整備も重要だ。千葉中央区地区や木更津南部地区などで耐震強化岸壁の整備を進めていく。このほか、無電柱化などにも取り組む必要がある」
──建設業界に一言。
「公共インフラの整備や維持・管理、災害時の迅速な対応には建設業の力は欠かせない。建設業界の皆さんは大切なパートナー。大きな信頼を寄せている。県建設業協会をはじめとする業界団体と積極的に意見を交わし、出された要望や提案には可能な限り対応していきたい」
■プロフィル
かくた・ひでき
1966年生まれの58歳。匝瑳市出身。91年3月に法政大学工学部土木工学科卒業後、印旛土木事務所や千葉土木事務所などでの勤務を経て、成田土木事務所長、河川環境課長、技術管理課長、企業局水道部次長、県土整備部次長などを歴任し、4月1日付けで現職。趣味は山歩き。