三枝所長インタビュー 「流域の安全向上」が使命 堤防整備にスピード感(利根川下流河川事務所)

三枝所長

三枝所長

[2025/4/22 千葉版]
 国土交通省利根川下流河川事務所長に4月1日付けで就任した三枝伸太郎氏が本紙のインタビューに応じ、「気候変動も含めた豪雨災害に対して、流域の安全度を向上させることが使命」と抱負を語った。また、「流域治水」の一環として、スピード感をもって無堤区間の堤防整備に取り組んでいく考えを示した。

 ──これまで国交省でどんな仕事に取り組んできた。

 「入省してからずっと河川関連の事業に携わってきた。本省では、気候変動に伴い、全国各地で発生している豪雨災害に対応する緊急治水対策プロジェクトなどの事業を担当し、事前防災の重要性を実感した。国会での質問対応も思い出深い」

 ──本県との関わりは。

 「茂原で生まれ、高校時代まで過ごし、都内などに住んだこともあったが、今は野田に自宅がある。少し偏りがあるかもしれないが、千葉県のことはある程度知っているほうだと思う。利根川下流河川事務所での勤務は初めてとなるので、地元の建設業界の皆さんと積極的に意見を交わしながら、地域の実情を把握していきたい」

 ──重点的に取り組みたいことは。

 「利根川の下流域でも、まだ堤防の整備されていない“無提区間”がある。これをなるべく早期に完成させることが“一丁目一番地”。流下能力を増やし、水位を下げるため、河道掘削などにも取り組んでいく」

 「管内は管理区域が広く、排水機場や水門、樋管など河川管理施設が非常に多い。施設の老朽化が進んでいるが、コストを抑えながら、しっかり維持管理し、確実に運用させることが重要だ。万が一災害が発生した場合を想定し、復旧を早期に進めていくため、河川防災ステーションの整備にも力を入れていきたい」

 「同時に“環境”にも配慮する必要がある。管内にはコウノトリが飛来している場所もあるようだ。鳥類をはじめとした生き物の生息環境が良くなっている証拠ではないか。河川改修では、このような場所も保全・創出していけるように努めていく」

 ──「流域治水」をどう進める。

 「流域治水のベースとなるのは河川改修となるが、流域全体の関係者がハード・ソフト両面で取り組んでいくことが大切だ。この地域はポテンシャルがあると思う。流域の一人一人が災害を“自分事”として捉えられるようになれば、災害のリスクを大幅に減らすことができる」

 ──建設業界の課題は。

 「人手不足が大きな課題だ。もっと建設業の魅力を発信していく必要があるのではないか。平時は平時の魅力、災害時には現場で活躍する魅力、色々あると思う。これらの魅力を積極的に発信して、担い手の確保につなげていきたい」

 ──建設業界に一言。

 「災害が発生した場合、建設業界の皆さんの力は必要不可欠。災害協定を締結し、対応に当たってもらっているが、地元建設会社が現場に一番精通している。その知識と経験をこれからも発揮してもらい、流域の安全度を向上させるため、活躍してほしい」

■プロフィル

 さえぐさ・しんたろう

 1973年6月生まれの51歳。茂原市出身。建設省に入省後、利根川上流河川事務所や荒川下流河川事務所、江戸川河川事務所、下館河川事務所での勤務を経て、2021年から関東地方整備局河川部の建設専門官、23年から本省水管理・国土保全局の治水課長補佐など歴任し、4月1日から現職。趣味はサッカー。社会人チームに所属している。東野圭吾や辻村深月などのミステリー小説が愛読書。

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