稲戸井調整池を推進 事業概要 防災ステーションで盛土工(利根川上流)

[2025/4/11 茨城版]
 国土交通省利根川上流河川事務所(飯野光則所長)は、本年度の事業概要をまとめた。事業費総額は前年度当初比7.6%減の98億0500万円で、河川改修費には58億2300万円を確保した。本県関係では、五霞町などを対象とした首都圏氾濫区域堤防強化対策や利根川堤防整備、稲戸井調整池整備、河川防災ステーション整備などを進める。河川防災ステーションでは、盛土工事に着手する計画だ。

 同事務所では、1947年に発生したカスリーン台風による利根川堤防の決壊に伴う甚大な被害などを受け、首都圏を洪水から守る堤防強化対策を重点的に進めている。本年度は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を活用し、「令和元年東日本台風」でも効果を発揮した堤防や調節池の整備などの取り組みを推進する。

 本年度事業費は、河川整備事業費として河川改修費に58億2300万円(前年度当初比12.8%マイナス)を確保。内訳は一般改修に41億2600万円(同16.9%マイナス)、大規模一般改修に16億9700万円(同0.7%マイナス)を盛り込んだ。このほか、河川維持修繕費に26億2900万円、河川工作物関連応急対策事業費に2億3700万円、堰堤維持費に10億8400万円、河川等災害復旧事業費に3200万円を投じる。

 本県関係の主な事業のうち、首都圏氾濫区域堤防強化対策はカスリーン台風規模の被害を防ぐため、五霞町や埼玉県の利根川右岸流域などを対象に堤防断面の拡幅による堤防強化対策を図っている。04年度に着手し、整備延長は利根川右岸の江戸川分派点から小山川合流点に至る延長約49.5kmで計画する。23年度に下流区間(I期、埼玉県羽生市~五霞町間約23.5km)が概成し、引き続き上流区間(II期)と合わせて早期完成を目指す。本年度は、五霞町から羽生市までの用地取得が完了した箇所で堤防の盛土工事や水路や道路の付け替え工事を実施するとともに、用地取得を進める。また、五霞町川妻などでは堤防整備を行う。

 境町の江戸川分派点から群馬県太田市までの利根川左岸でも堤防整備を推進する。この区間では、利根川が氾濫すると沿川の地形条件から浸水深が進み、甚大な被害が生じる恐れがある。このため、利根川と渡良瀬川が合流する埼玉県加須市北川辺地区や古河市、群馬県板倉町や明和町の堤防の拡幅を行い、治水安全度の向上を図る。本県では本年度、古河市鳥喰などで堤防整備を計画する。発注見通しによると、「R6渡良瀬川左岸鳥喰築堤他工事」を第2四半期に一般競争入札で発注。工事では盛土工3万6000立方mや植生工などを行う。

 取手市と守谷市では、洪水調節容量を増やすための稲戸井調節池を進めている。同位置の右岸で整備を進める田中調節池や左岸上流部にある菅生調節池と一体となり、利根川の水位低下による下流域の治水安全度を高める。24年度末の進捗状況は、池内掘削(全体計画800万立方m)が約272万立方m、用地・補償(同330万平方m)が約316万平方m。本年度は動植物や地下水などの状況を確認しながら引き続き掘削を進めていく計画だ。発注見通しによると、守谷市内で計5件の工事が予定され、第2四半期に発注する。

 稲戸井調節池の整備では、守谷市が進める守谷SAスマートIC周辺土地区画整理事業や新総合公園整備事業と連携。掘削土は公園の盛土工事などに活用されている。また、利根川左岸や鬼怒川左岸の堤防整備にも利用され、守谷市野木崎では築堤工事2件の発注を予定している。

 境町では、境町利根川左岸河川防災ステーションの整備で、本年度から盛土などに着手。「R7利根川左岸境河川防災ステーション基盤整備工事」を第2四半期に発注する。河川防災ステーションは、被災時に速やかな堤防復旧などを行うための拠点施設。県内では利根町や五霞町、取手市(藤代地区)、常陸太田市に続く5カ所目として、21年3月に整備計画が登録された。

 建設場所は、圏央道と新4号国道の間となる利根川左岸(123.5km-124km地点)。圏央道の西側約600mにわたって約6haを整備し、平常時には賑わいづくりの場や防災に対する意識向上を図る場として利用する。施設内にはコンクリートブロックや割栗石など復旧に必要な資機材を備蓄し、資材の搬出入や、建設機械の活動、水防活動に必要なスペース、ヘリポートなどを備えるなど、近隣の非常時には緊急避難場所としての活用も期待されている。

 国交省では盛土や造成工事を実施するほか、備蓄資材置場や駐車場、ヘリポートなどを担当し、町は水防活動の拠点となる水防センターを設置する。

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