管渠耐震化の対象拡大 流域下水道事業 経営戦略を改定(県上下水道課)
[2025/3/18 栃木版]
県上下水道課は、県流域下水道事業経営戦略を改定して公表した。成果指標は9つの指標のうち7つを見直し、主要設備の改築・更新は2029年度の目標を66設備から61設備に、中継ポンプ場や処理場の耐震化は同じく100%から66%に見直す。事業費の増大が主な要因で、このほか幹線管渠の耐震化率は対象施設を拡大したことで、29年度の目標が100%から56%に低下した。財政計画の見直しでは、資本的支出を計画に基づき事業費の平準化を図り、建設改良費に25年度36億0800万円、26年度21億1200万円などと試算している。
流域下水道事業経営戦略は、本県の流域下水道事業の経営基盤の強化を図り、将来にわたり安定的・継続的な事業経営を推進するための中長期的な経営の基本計画として、2020年3月に策定した。計画期間は29年度までの10カ年で、今回は策定後5年を経過することから、計画期間や経営方針は保持しながら、これまでの実績などを踏まえ後半5年間の成果指標の目標値や投資・財政計画を見直し、戦略の改定を行った。
主な改定内容は、中間年度の時点修正を行うため計画期間、経営方針、基本目標は保持しながら、後半期の成果指標および投資・財政計画を見直した。成果指標は、資材価格や人件費高騰に伴い指標を見直し、投資・財政計画の見直しでは過年度決算や24年度当初予算を踏まえた後半5年間の収支計画の改定や、計画的な点検・補修・整備・改築による事業費の平準化を図っている。
成果指標の目標値のうち、処理場の処理能力については、汚水処理量の調査推計を検討した結果、29年度の目標を従来の1日当たり22万3600立方mから21万7100立方mに変更する。
改築・更新を実施した主要設備数は、24年度の目標を従来の53設備から50設備に、29年度の目標を従来の66設備から61設備に見直す。近年、資材価格や人件費が高騰しており、今後も工事費の増大が見込まれることから、目標設備数を見直たうえで、引き続き優先順位を精査しながら設備の改築・更新を進めていく。
幹線管渠の耐震化率は、24年度の目標を現行の66%から29%に、29年度の目標を現行の100%から56%に見直す。目標を大きく引き下げたように見えるが、これまでに上位計画の重点的な取り組み推進で当初の想定以上に耐震化の進捗が図れたため、対象施設を優先箇所の431カ所から全数の1978カ所へと拡大したことで、分母が大きくなりパーセンテージが低下している。
中継ポンプ場・処理場の耐震化は、24年度の目標を従来の51%から45%に、29年度の目標を現行の100%から66%に見直す。こちらも処理場と同様に資材価格や人件費の高騰を踏まえ、今後も工事費の増大が見込まれることから、耐震化率を見直たうえで引き続き優先順位を精査しながら中継ポンプ場・処理場の耐震化に努めていく。
再生可能エネルギー導入等によるCO2削減は消化ガス発電の安定稼働や省エネ機器導入を踏まえて、24年度の目標を従来の年3800トンから4100トンに、29年度の目標を年4000トンから4100トンに見直す。引き続き、消化ガス発電や水処理運転の安定稼働の維持に努めていく。
下水汚泥の有効利用率は、昨年度に有効利用可能な新規の受け入れ施設を確保することができたことから、24年度の目標値78%、29年度の目標値82%ともに100%へと見直して、下水汚泥の有効利用量の増量に努めていく。
企業債残高は、地方公営企業で建設改良費に充当するために借入を行う地方債の残高であり、耐震化工事等の前倒しや資材価格・人件費の高騰で年度ごとの新規借入が増加したことから、最終年度の目標を従来の46億円から55億円まで引き上げている。
投資・財政計画の見直しでは、過去5年間の事業実績を反映した収支計画の見直しを進める。収益的収支は計画的に施設の点検・補修等を行うことで、極力、維持管理費の増加を抑制していく。また資本的収支では、計画に基づき増設工事や改築更新工事、耐震化工事等を行うことで、事業費の平準化を図っていく。
資本的支出のうち、建設改良費は20年度から24年度の平均が22億8300万円で、25年度は36億0800万円、26年度は21億1200万円、27年度は18億4200万円、28年度は19億1700万円、29年度は19億7200万円を想定する。
経営戦略の策定後は、PDCAサイクルを活用して年度ごとに各種施策の実施状況を確認し、進行管理に努める。また、経営戦略の実施は流域下水道や下水道資源化工場に関係する市町との情報共有・連携を図りながら進め、計画と実績の乖離が著しい場合には、経営のあり方や事業手法について改めて検討する。