日光道は期間延伸 道路施策懇談会 有料道路のあり方を提言(県交通政策課)
[2025/3/8 栃木版]
県交通政策課は8日、県庁で5回目となる県道路施策検討有識者懇談会(座長:根本敏則敬愛大学経済学部教授)を開催し、有料道路の管理・運営のあり方に関する提言を取りまとめた。提言では、日光道についてサービス水準の維持と安全性の確保が必要であり、その財源は料金改定や料金徴収期間の延伸で確保すべきとしている。また、さつきロードは料金抵抗で機能が十分に発揮されておらず、予定通り無料にすべきと提言した。提言を受けて県は、年度内にも国交省との協議を開始し、県議会での議決のあと事業変更を国に申請して、順調にいけば2026年3~4月ごろの料金改定を目指す。
さつきロードは来年3月無料化へ
議事の前に、県土整備部の星野晃秀次長は「埼玉県の八潮市で道路陥没事故が発生し、改めてインフラの管理・運営の重要性を再認識した。有料道路を取り巻く環境が変化しているが、まずは安全・安心に利用できるようにしていかなければならない」と話し、提言を踏まえてそれぞれの特性に応じた適切な管理運営に取り組んでいく考えを示した。
議事では、「栃木県の有料道路の管理・運営のあり方に関する提言」にの内容を協議。この提言は、社会情勢や利用者のニーズの多様化など有料道路を取り巻く環境が大きく変化するなか、有料道路が将来にわたり持続的にその役割を果たしていくための適正な管理・運営が求められていることから、2つの有料道路の今後の管理・運営のあり方を2年間議論した内容を踏まえてまとめた。
それによると、日光宇都宮道路(日光道)は高規格道路としての位置付けや、年間を通じて観光利用が多いなどの交通特性を踏まえると、今後とも定時性や走行性能の確保など一般道より高いサービス水準を維持するとともに、現在実施中の耐震化や老朽化対策とった大規模リニューアル事業の着実な実施により安全を確保することが必要としている。
高いサービス水準を維持するための維持管理や大規模リニューアル事業に必要となる財源は、利用者負担を前提としつつ、将来の交通量や収支の予測に基づき、料金改定や料金徴収期間延伸で確保すべきとし、それを広く情報公開して理解を得ていくことも必要としている。
今後については、将来の物価変動などの社会情勢の変化や多様化する利用者ニーズ等へ適切に対応するとともに、渋滞対策などに資する変動料金など柔軟な運用についても検討することが望ましいと提言している。
宇都宮鹿沼道路(さつきロード)は、交通量の実績が計画の3割未満にとどまるなど、料金抵抗により機能が十分に発揮されていない状況であることから、交通量を増やす策を講じ、整備効果を十分に発現させることが必要としている。
無料化により交通量が増加するとともに、利用者の時間短縮効果や迂回車の減少による周辺地域の安全性向上、沿線への産業誘致による経済活性化等の効果が期待されることから、予定通り無料化するべきとし、26年3月の無料化を提言した。
この提言内容に対し、委員からは「日光道は料金徴収期間を延伸し、さつきロードは無料化するという、県民には分かりにくい内容となったが、目的は県民の負担をなるべく少なくして、不公平のないように道路を維持管理して、できるだけ道路から大きな利益を生み出すことであり、料金はあくまでその手段。これを県民に分かりやすく説明していくのが県の役割」などの意見が出た。
アドバイザーを務めた国土交通省宇都宮国道事務所の笹木和彦所長は「埼玉県八潮市の道路陥没事故は、インフラの予防保全への移行段階で起き、本格的なメンテナンスの構築体制のきっかけになった笹子トンネルの事故よりも事態は深刻だと思う。インフラの老朽化問題は顕在化してくると想定され、道路管理者の責任・責務はますます重くなっている。有料道路の管理運営のあり方を考える際もその点をしっかり再認識し、安全を最優先に引き続き検討を続けなければ」と話した。
提言を受け、星野次長は「速やかに方針決定に向けて国との協議を進めていきたい」と感謝の意を表した。
これまでの協議で、日光道については大規模リニューアル事業の増額にやETC機器等の更新などがあり、20年度以降の支出が増大して償還金残高は増加すると予測する。このため、まずは支出を見直し縮減を図るとともに、高騰する物価にあわせた適正な通行料金も検討。現行の普通車470円から仮に670円としたうえで、さらに割引も廃止した場合、大規模リニューアル事業が完了する29年度から償還金残額が減少傾向を示すことが確認され、あわせて料金徴収期間を延伸することで将来的に償還が可能と予測した。
またさつきロードは、料金徴収期間の「延伸無し」と「延伸」の2案を作成。「延伸無し」の場合は現行の料金徴収期間満了(26年3月)をもって無料化し、「延伸」は必要な事業を実施したうえで未償還金を最大限圧縮できる「10年延伸」として比較検討した結果、「延伸無し」が適当と結論付けた。
県は提言を受け、このあと年度内にも国交省と日光道の改訂料金や料金徴収期間などの協議を開始する。協議がまとまれば、県議会にこれらの変更に関する議案を提出し、議決を得たあと国土交通大臣へ事業変更の申請を行う。
県の担当者によると、国交省との協議次第となるが、順調にいけば9月の県議会通常会議に議案を提出し、議決されれば10月にも国に申請して、認可されれば県民への周知期間を設けたあと、年度の切り替わる時期にも料金改定を行いたいとしている。
この懇談会は、道路施策の検討にあたり客観性・透明性を確保するとともに、効率的で効果的な道路行政を推進することを目的に設置した。これまでは有料道路の今後の管理・運営のあり方を取りまとめ、今後は新広域道路計画に位置付けた(仮称)つくば・八構縦貫・白河道路や(仮称)北関東北部横断道路の検討に着手してルートの比較検討や今後の進め方について議論していく。