[2025/3/4　栃木版]

　県河川課は3日、県庁舎内の会議室で本年度第1回の河川整備計画懇談会を開催した。今回は、渡良瀬川上流圏域河川整備計画の第4回変更原案について事務局から説明し、各委員からの意見を聴取した。今回の変更は、足利市を流れる一級河川尾名川の旗川合流点からJR両毛線橋梁まで、延長約2.7kmの河川整備を追加するもので、整備内容は掘削や築堤、護岸のほか、道路橋6橋の架け替えや排水樋門1カ所を改築し、計画流量毎秒130立方ｍを確保する。今後はパブリックコメントや関係市町などへの意見照会を経て河川整備計画案を作成し、国土交通省に申請して9月頃の計画認可・公表を目指す。

　議事に先立ち、県河川課の細井俊一課長は「渡良瀬川の上流圏域の今回の主な変更点は、令和元年東日本台風で甚大な被害が発生した一級河川尾名川で整備を行う区間に追加をしようとするもの」と説明し、各委員それぞれの立場から忌憚のない意見を求めた。

　また、第1回の懇談会ということで、座長に宇都宮大学地域デザイン科学部の池田裕一教授を選出。池田座長は「委員の皆様には、栃木県の河川が水害に強く、また県民にも親しまれて貴重な財産として後世に引き継げるよう、それぞれの立場からご意見をいただきたい」とあいさつした。

　本県は利根川水系、那珂川水系、久慈川水系の3つの水系に属しており、県内の河川を13の圏域に分割して、現在、13圏域中10圏域で河川整備計画を策定している。今回変更する利根川水系渡瀬川上流圏域の河川整備計画は、2009年に策定し12年、13年、20年の変更を経て、今回が4回目の変更となる。

　渡瀬川上流圏域は、渡良瀬川に流入する支流をまとめた圏域となっており、足利市、佐野市の一部、日光市足尾町が含まれている。圏域面積は約690キロ平方ｍで、圏域内の県管理河川数は35河線、総延長は267.9kmとなっている。

　今回河川整備計画に追加する一級河川尾名川は、足利市の南東部を流れ、旗川に合流し、さらに渡良瀬川に合流する。尾名川では東日本台風により大規模な浸水被害が発生し、宅地をはじめ農地や工業団地に浸水被害が発生している。

　渡良瀬川上流圏域では、秋山川から姥川まで8河川で事業を施行しており、今回、尾名川について旗川合流点にある尾名川水門からJR両毛線橋梁までを追加する。施工区間はの2.65kmで、計画の確率規模は5分の1とし、計画流量はJR両毛線橋梁下流で毎秒85立方ｍ、あしかがフラワーパーク方向から流入する支流が合流して以降は毎秒130立方ｍとする。

　整備内容は、掘削が約8万立方ｍ、築堤が約9万3000立方ｍ、護岸が約3500平方ｍとし、このほか道路橋6橋や排水樋門1カ所を改築して、この区間の計画流量を安全に流下できるよう整備する。築堤については、概ね現況から3～4m程度嵩上げする。事業期間は20年間とし、改修工事に際しては現況の瀬や渕など可能な限り再生し、生物の生息・生育・繁殖環境を保全・創出する。

　河川整備計画の変更原案では、この尾名川に関する河川整備を追加するほか、各種データの時点修正なども行う。

　これら事務局からの説明に対し、委員からは旗川や出流川の洪水に対する改良の状況について質問があり、旗川は「合流部について直轄区間になっており、国で河道掘削を実施している。県管理区間についても下流の直轄区間の状況を見ながら、確率規模30分の1で対応した河道を確保するよう改修を進めている」と説明。また、出流川については「確立規模5分の1で整備が完了しているが、東日本台風による越水が生じているので、堤防腹付や巻提による対策を行っている」と返答した。

　また、計画流量130立方ｍは河川の規模からしたら大きすぎて、過剰な整備にならないかといった指摘には「出流川は5分の1の確立で整備しており、尾名川も同一の規模として隣接する河川間の規模を整える。流量も雨量を解析した結果、130立方ｍとしている。尾名川、旗川、出流川の3河川のバランスをとりながら、流域の安全度を向上させる」と返答した。

　このほか、アーマ層の保全など河川環境に配慮した河床掘削や、人頭大の礫を現場に残すなどの対応を求める意見や、現場の植生に配慮し外来植物をなるべく排除した築堤などを求める意見などが出ていた。

　渡良瀬川上流圏域河川整備計画の変更は、このあと関係住民からパブリックコメントで意見を聴取し、5月にも第2回の懇談会で審議。その後は関係市町や関係機関に意見を照会して河川整備計画案を作成し、6月にも国土交通省へ申請して、9月ごろの計画認可・公表を目指す。