発注平準化へ目標共有 官民連携の新プロジェクト(国や6宮城県、東北建協連ら)

[2024/1/17 宮城版]

受発注者が建設業の担い手確保に向けた新たな取り組みについて協議した

受発注者が建設業の担い手確保に向けた新たな取り組みについて協議した

 東北地方整備局や東北6県、仙台市、東北建設業協会連合会(千葉嘉春会長)は15日、東北地方の公共工事品質確保のための連絡会議を開催し、2025年度版の「東北未来働き方・人づくり改革プロジェクト」(案)について協議した。地域建設業の担い手を確保するため、施工時期・業務納期の平準化に向けた目標を確認するとともに、受注者の求めに応じて発注者が遠隔臨場・WEB検査などを実施できるよう環境を整備することにした。

 会合は東北地方整備局で開かれ、同局から安岡義敏副局長ら5人、東北6県や仙台市から土木部長またはその代理、東北建設業協会連合会から千葉会長や各県建設業協会の会長らが出席した。話し合いは非公開で行われた。

 あいさつで安岡副局長は、地域の守り手である建設業の担い手確保対策を東北全体で進めるべく、受発注者が連携して「東北未来働き方・人づくり改革プロジェクト」を策定し、「取り組みを深化させてきた」と伝え、「次年度(2025年度)に取り組むプロジェクト案をご議論いただく」と述べた。

 千葉会長は建設業が多くの課題を抱える中、今回の会議で受発注者が「共通の目標を持って働き方・人づくり改革に関する施策を講じていくことは大変心強い」と話し、確実に取り組みを前進させることで諸問題の抜本的改善につながることを期待した。

 同局が示した25年度のプロジェクト案を見ると、働き方改革の推進、生産性向上の推進、担い手の育成・確保の3つに分けて取り組みをまとめている。

 働き方改革の推進では、週休2日工事や施工時期の平準化、工事書類作成等の負担軽減に関する取り組みを盛り込んだ。

 週休2日は国・県・市町村が月単位の週休2日工事で発注するとともに、国・県・仙台市が完全週休2日工事の試行を推進する。

 施工時期の平準化に向けては、閑散期の平準化率を設定し、取り組みを推進する。具体的には国・県・市町村が第1四半期の平準化率1.0を目指す。東北整備局は第1四半期の発注件数を年間の平均稼働件数並みにしたい考え。業務は国・県・仙台市で第4四半期の納期率が50%以下となることを目指す。

 ただし、平準化率は発注者協議会で25年度の目標値を定めることになるため、これを踏まえて今後に再調整する可能性がある。

 平準化率は「月平均稼働件数」を「年度の月平均稼働件数」で除して求める。1.0に近いほど平準化率が高いとされる。

 各県の建設業協会からは、3~6月に工事が稼働できるような早期発注を望む声が出された。

 千葉会長は近年の猛暑で夏場に暑さ指数が上がるようになり、1日8時間のうち3時間ほど休憩しなければならず、そうなると稼働が5時間になるため、単価や歩掛の見直しが必要と意見した。

 工事書類作成等の負担軽減に向けては、情報共有システムを国・県だけでなく全市町村で導入(仕様書に情報共有システムを実施できる旨を記載)するとともに、書類限定検査を国・県・仙台市で実施する。

 生産性向上の推進では、ICT活用工事のさらなる普及・拡大、遠隔臨場・WEB検査の推進、VFMに基づいたプレキャスト製品の活用検討といった事項を盛り込んだ。

 ICTについては、国がICT土工(発注者指定方式)の対象を5000立方m以上から1000立方m以上に拡大する。県や仙台市は発注者指定方式を増やすなどしてICT土工の実施率を高める。

 担い手の育成・確保では、受発注者が連携して建設業の魅力発信や技術講習会の開催に当たるほか、国・県・市町村が資材価格高騰への対応を進める。国・県・仙台市は除雪体制の強化として、期間待機の試行を推進する。

 新プロジェクト案は今回の会合で大筋の了承を得たことから、細かな修正を加え3月に成案化する予定だ。

予算確保と被災地特例の継続を要望(東北建協連ら)

千葉会長(左)が東北地方整備局の安岡副局長に要望書を手渡した

千葉会長(左)が東北地方整備局の安岡副局長に要望書を手渡した

 東北建設業協会連合会(千葉嘉春会長)は15日、東北地方整備局に予算の確保と被災地特例措置の継続を要望した。予算の確保では整備局予算の大幅な増額と、国土強靭化実施中期計画の早期策定を求めた。

 予算の確保は、東北公共工事品質確保・安全施工協議会と連盟で要望書を提出した。同局の予算が震災前に約4000億円規模だったが、復興予算の終了後に6割程度まで落ち込んでいることから、活力ある東北地方創生のためにも大幅な増額が必要とした。

 国土強靭化実施中期計画は、年度内の一刻も早い時期に策定し、2025年度からスタートさせることを要望。資材価格の高騰や人件費の上昇を踏まえ、現行の5カ年加速化対策を大幅に上回る5年で25兆円程度の事業量を確保することや、東北への傾斜配分を求めた。

 被災地特例に関しては、宮城・岩手・福島の被災3県に適用されており、現場実態に即した積算体系や復興係数などの係数化における被災地特例施策を来年度以降も継続するよう願った。

 被災地特例のうち、復興係数は間接費の割り増しを行うもので、宮城県と岩手県は「共通仮設費に1.3倍」(福島県は1.5倍)と「現場管理費に1.1倍」(同1.2倍)という補正率が適用されている。復興歩掛はすでに適用されていない。

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