浸水被害の軽減へ 流域治水計画 23河川にプロジェクトマップ(日立市)
[2025/1/15 茨城版]
日立市は14日、流域治水計画の素案を公表した。23年9月の台風13号による浸水被害を受け、今後の治水に対する基本理念と治水対策のあり方を示すもの。ハード整備である河川改修から、多角的な施策となる流域治水への転換を図ることで、水害の軽減を目指すとしている。対象は、市が管理する準用河川と普通河川の63河川(総延長約130.8km)で、優先度の高い河川(18流域23河川)ではプロジェクトマップを作成し、対策を進めていく計画だ。この素案に対しては、今月24日までパブリックコメントの募集が行われている。
市の流域治水計画は、24年3月に策定した「市災害復旧基本計画」の個別計画として位置付けるもの。計画策定に当たっては、各課所で構成する「市河川治水計画検討会」を設置。情報共有や連携の強化を図り、多角的な視点に基づいて治水対策の検討を進めている。
計画期間は25-44年度までの20年間。目標には豪雨や洪水による浸水被害の発生頻度や規模の軽減、洪水リスクの抑制、水害に強い地域社会の実現、持続可能な治水管理の実現など4項目を定めた。個別対策には、効果や実現性、経済性などを踏まえ、5-10年間の計画期間を設定した。
計画の推進に当たっては、全河川同時での対策は困難なことから、対策場所に優先度を設定する。優先度が高い市街化区域を流れる18流域23河川では、効果的な治水対策を進めるために「プロジェクトマップ」を作成。地域の特性に合わせた多角的な治水対策を視覚化し、流域全体でリスクを分散・軽減する取り組みを進める。
取り組むべき施策には、▽氾濫をできるだけ防ぐ・減らす▽被害対象を減少させる▽被害の軽減・早期復旧・復興──の項目ごとに、それぞれで実施内容を示した。このうち、「氾濫をできるだけ防ぐ・減らす」では、洪水溢水の防止として、遊水池・調整池の整備や河川の局所改修、河道内土砂の浚渫などを掲げる。河川への流出抑制として、雨水貯留槽の設置・拡張と助成、既存調整池・調節池の拡張、道路施設の浸透機能などを盛り込んだ。
「被害の軽減・早期復旧・復興」では、重要インフラの耐水化として、庁舎や池の川処理場、消防本部、大甕駅自由通路などの耐水化を掲げている。庁舎では昨年9月に策定した庁舎安全対策計画に基づき、数沢川の改修工事や庁舎外周の止水壁整備、庁舎地下階の止水化対策などを進める。
プロジェクトマップの策定対象となる18流域23河川のうち、▽田尻川▽北川▽所沢川▽数沢川▽雨降川▽舟入川▽池ノ川▽大川▽南川尻川──9河川は優先度「高」に指定されている。このうち8河川は水害リスク「大」とされ、数沢川では「氾濫をできるだけ防ぐ・減らす」対策として、上流部での遊水池・調整池整備や合流部の改修、国道6号横断吐口の水衝の解消などの局所改修が盛り込まれている。