強靭化予算の確保を 関東整備局整と栃建協が意見交換
[2024/12/11 栃木版]
国土交通省関東地方整備局(岩﨑福久局長)と県建設業協会(谷黒克守会長)、および県県土整備部(谷英夫部長)の意見交換会が9日、県総合文化センターの会議室で開催された。受・発注者双方の立場から公共工事の諸課題に活発に意見交換する場として、建設行政や建設業界の最近の状況など情報を交換したほか、栃建協が提案した3つのテーマについて意見を交換した。このうち「防災・減災、国土強靱化への安定・持続的な予算確保」では、整備局から補正予算案に国土強靭化予算として約1兆1000億円が措置されたと説明し、県も12月県議会に補正予算案を上程する予定で早期発注に努める考えを示した。
議事に先立ち、岩﨑局長は「先月29日に本年度の補正予算が閣議決定がされ、国土交通省は防災・減災、国土強靭化の5か年加速化対策の5年目の予算措置など1兆9000億円が配分された。国会審議を経て成立すれば早期発注していきたい」と話し、円滑な執行に協力を求めた。
また「本日は防災・減災国土強靭化への対応、国管理施設の共同受注方式、さらには広域道路ネットワークの充実強化について、受発注者双方が抱える課題解決に向けて活発に意見交換し、双方で知恵を出し合いながら一つ一つ前に進めていきたい」と述べて、忌憚のない意見を求めた。
谷部長も「総合経済対策が国会に提出された。本県も切れ目なく国土強靭化の取り組みができるように、また総合経済対策の趣旨に沿って早期発注できるよう、12月県議会に補正予算を上程する予定で、議決されればできるだけ早期に発注したい」との考えを示した。
谷黒会長は「昨今の物価高騰は発注件数の減少につながり、受注競争が今後激化していくものと危惧している。さらに人口減少・少子高齢化は担い手不足を加速させ、地域の守り手としての地域建設業の存続が危うくなることになる」と訴え、国・県に地域建設業の実情を理解したうえで、より一層の事業量の確保や制度の改善を求めた。
議事はまず、整備局と栃建協それぞれの取り組み状況などについて情報提供を行った。整備局からは24年度予算の概要や働き方改革・担い手確保への取り組み、品確法の改正と運用指針の策定、担い手3法の改正などを説明。栃建協は、経営体質の強化や維持管理業務共同受注方式の拡充、人材の確保・育成に向けた取り組みを説明した。
意見交換では、栃建協から提示した▽防災・減災、国土強靱化への安定・持続的な予算確保▽国管理施設における共同受注方式▽広域道路ネットワークの充実・強化-の3つのテーマを取り扱った。
まず「防災・減災、国土強靱化への安定・持続的な予算確保」では、栃建恊から国土強靭化を計画的、安定的に実施するとともに地域建設業の維持・存続を図るため、5か年加速化対策を上回る事業予算を確保した国土強靭化実施中期計画の年度内早期策定や、2024年の加速化対策と合致した年度内の予算措置、さらには補正予算での対応ではなく当初予算としての確保を求めた。
整備局は「骨太の方針では国土強靭化実施中期計画に向けた検討を最大限加速化し、24年度早期に策定に取り掛かるとされている」などと紹介し、整備局もその動向を注視すると答えた。また「11月29日に閣議決定さ入れた補正予算案では公共事業費として1兆9000億円を計上し、このうち国土強靭化の推進としては5か年加速化対策分や能登半島地震を踏まえた緊急対応分などを含めて約1兆1000億円を計上して、迅速かつ適切な執行に努める」と答えた。
次に「国管理施設における共同受注方式」では、栃建恊から県での共同受注方式の成果をもとに国管理施設への導入について検討するよう求めたほか、「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」の現実に向けて積極的に取り組むよう要望した。
整備局は「国における道路及び河川等の共同受注方式は、維持管理範囲が広域であることから発注者懇談会の維持管理部会における維持管理の効率的な入札契約方式の検討状況を注視するとともに、地域の実情や貴協会との意見交換を踏まえ調整していく」と説明。群マネについては「地方公共団体を対象にモデル地域の公募を行い、11件40地方公共団体のモデル地域を選定したが、関東整備局管内では選定地区はなかった」と答えた。
最後に「広域道路ネットワークの充実・強化」では、栃建協から東北自動車道の県内6車線化や栃木県北地域の国道4号の全線4車線化をはじめ、国道121号(栃木西部・会津南道路)や国道408号(常総・宇都宮東部連絡)の事業促進と(仮称)つくば・八溝縦貫・白河道路、(仮称)北関東北部横断道路の早期事業化、および那須岳火山噴火に備えた直轄による火山砂防事業の検討を要望した。
整備局は、東北自動車道の6車線化について「本省に伝えたい」と回答し、国道4号の4車線化は「事業中箇所の進捗状況や周辺の交通状況を踏まえて検討する」と答えた。つくば・八溝縦貫・白河道路と北関東北部横断道路は「栃木県・茨城県で調査を進めており、国交省としては調査に必要な協力を行っていく」とし、県も「今後とも両路線の早期実現に向け、隣接県との調整を図りながら事業化に必要となる調査・検討を進めていく」と回答した。
那須岳の噴火に関しては、日光砂防事務所が「火山噴火緊急減災対策砂防計画に基づき、小規模・中規模の火山噴火を想定した訓練を関係機関で実施している。もし近い将来噴火した場合は、日光砂防事務所に備蓄してあるブロックや強靭ワイヤーネットなどでハード対策の支援をしたい」と話し、その際の建設業協会の協力を求めた。
このほか自由討議では、栃建協から働き方改革への対応として建設ディレクター導入推進のための制度改善や発注機関によって異なる書類の統一化を要望。整備局は書類の統一化について「工事関係書類の統一様式について、栃木県は本年度中に統一化を完了し、来年4月から適用を開始する予定」と明らかにした。
このほか、建設分野を目指す若者の育成に向けて産官学が一体化して協働して建設業分野の魅力発信に取り組むことや、若年入職者を確保するための酷暑時期の工期の変更や経費の補正、災害発生時に最前線で活躍する建設業のイメージアップや地位向上に資する呼称の認証など、それぞれの立場から建設業界の将来の担い手の確保に向けて活発に意見を交換した。