利根川河口堰の大規模地震対策に着手 550億円投入し、ゲートの取替や耐震補強(水資源機構)
利根川河口堰大規模地震対策事業の着手式が7日、千葉県東庄町で開かれた。水資源機構が550億円規模を投じ、ゲートの取り替えや構造物を耐震補強するとともに、老朽化した設備を全面的に更新する計画。設計を進めており、早期の着工、2038年度の完了を目指している。
国土交通大臣から水資源機構法に基づく事業実施計画の認可を受けたことから、利根川下流総合管理所が本年度、利根川河口堰大規模地震対策事業に着手。事業の順調な進ちょくや安全を祈念するため、着手式を開催した。
式典には国会議員、国土交通省、経済産業省、本県、茨城県、埼玉県、東京都、銚子市、東庄町、茨城県神栖市、地元関係者などから約80人が出席した。
水資源機構の金尾健司理事長は、工事の実施に当たり、騒音対策や安全対策など、周辺環境への影響を極力軽減する考えを示し、「職員一丸となり、DX技術などを活用しながら、1日でも早い事業の効果発現に向けて、安全・確実に事業を進めていきたい」と意気込みを語った。
来賓として駆け付けた熊谷俊人知事は「災害が激甚化・頻発化するなか、利根川河口堰の耐震化は、県民の生命・財産を守るため、大変重要な取り組み。事業が円滑に実施されるよう、できる限り協力していく」と語り、事業着手に感謝した。
小池正昭衆院議員や谷田川元衆院議員、豊田俊郎参院議員、県議会の實川隆副議長、国土交通省の藤巻浩之水管理・国土保全局長が登壇し、祝辞を述べた。
利根川下流総合管理所の松村貴義所長が事業概要を説明。地元地域を代表して、岩田利雄東庄町長と石田進神栖市長が事業への期待を発表した。最後に代表者によるくす玉開きが行われ、事業着手を盛大に祝った。
事業名は「利根川河口堰大規模地震対策事業」。対象となるのは、利根川河口堰(東庄町・神栖市)と黒部川水門(東庄町)。耐震性能の不足、施設の老朽化、下流河床の洗堀など課題があるため、大規模地震に対する耐震性を備えた対策を進めていく。事業期間は本年度から38年度までを予定している。
主な工事としては、ゲート扉体の取り替えや門柱・管理橋の耐震補強、下流護床の復旧、開閉装置の更新、操作室上屋の更新などを計画している。
設計工務課の担当者は、ゲートの取り替えが大きな工事となっており、ゲートの製作に相当時間を要する見通しを示している。施設を運用しながらの施工となるため、年2門程度の更新を想定。仮締め切りも必要となるため、工事が錯綜することが大きな課題だという。
利根川河口堰は総延長834mで、制水ゲート2門、調節ゲート2門、閘門ゲート2門、魚道2カ所で構成。黒部川水門は総延長55mで、制水ゲート2門、閘門ゲート2門で構成している。
1971年に完成し、50年以上にわたり、本県や東京都、埼玉県に必要な用水を安定的に供給しているほか、洪水や塩害から利根川下流地域を守っている。
耐震性能照査の結果、大規模地震に対する耐震性能が不足していることが判明。今後予想される首都直下地震など、大規模地震時による施設損壊が懸念されているため、早急な対応が求められている。