名取での建て替えを表明 精神医療センター単独で(村井知事)
[2024/11/22 宮城版]
村井嘉浩知事は21日、名取市にある県立精神医療センターを同市内で建て替える方針を示した。建て替え場所については、県有地の県立がんセンター跡地が「大きな選択肢の一つ」であると有力視した。がんセンターについては、仙台赤十字病院(仙台市太白区)と統合する形で、日本赤十字社が名取市植松入生地区に建設する新病院に移る構想となっている。
県は当初、精神医療センターと東北労災病院(仙台市青葉区)の経営母体を残したまま富谷市内に合築する方針を示していた。ただ、精神医療センターの移転に反対する意見が多く出されていた。
さらに、東北労災病院を運営する労働者健康安全機構から「労災病院グループの現在の経営状況を踏まえた場合、東北労災病院の富谷市移転に向けた検討には一定の期間が必要」との見解が示され、協議に時間がかかる見通しとなっていた。
13日に開かれた県精神保健福祉協議会(富田博秋東北大学教授)では、東北労災病院だけ富谷市に移転し、精神医療センターは名取市内の県有地に建て替える案が全会一致で示された。
14日には日赤が、名取市に建設する「県立がんセンター統合新病院」の基本構想を公表。仙台赤十字病院とがんセンターの統合病院が、延べ2万8800平方mの規模で、建設事業費に約210億円を試算し、2028年度の開院を目指すこととされた。
こうした動きを踏まえて村井知事は、21日に開会した県議会11月定例会において「課題とされる身体合併症などへの対応について、精神医療センターにおける機能強化と、精神科病床を有する一般病院との一層の連携による体制構築に向け、関係者との協議による解決が図られることを前提として、精神医療センターを名取市内で建て替える方向で検討を進める」と表明した。
一方で東北労災病院については、労働者健康安全機構と引き続き「富谷市への移転に関する協議を継続する」とした。
その後に記者の取材に応じた村井知事は、精神医療センターの名取市内での建て替え方針を決めた理由の一つに、日赤が新病院の基本構想を示したことに触れ、「これがうまくいけば、(精神医療センターの建て替え場所として)がんセンターの土地を使うことができる。その下に看護学校の土地もある」と述べ、有力な候補地が出てきたことを挙げた。
東北労災病院が富谷市に移転するかどうかは、労働者健康安全機構の判断次第としつつ、県としては支援策を示しているとした。仮に移転するとなれば、精神医療センターのサテライト機能を持たせるように「県として手を打ちたい」と述べた。