耐震化の遅れ浮き彫り 上下水道急所施設 計画的・集中的な推進を(国交省)

[2024/11/7 栃木版]

 国土交通省は能登半島地震の教訓を踏まえ、上下水道システムの機能維持に重要となる施設の耐震化状況の緊急点検を実施した。全国の耐震化率は水道の浄水施設が約43%、下水道の処理場が約48%などで、接続する水道・下水道管路の両方が耐震化されている重要施設の割合は約15%と、全体的に低い水準に留まった。このうち本県は、浄水施設が約24%、下水処理場が約39%、上下水道が耐震化されている重要施設が約9%など、耐震化が十分でないことが改めて確認された。同省は今後、「上下水道耐震化計画」に基づく上下水道施設の計画的・集中的な取り組みや効率的な耐震化技術の開発・実装などで、耐震化を推進するとしている。

 上下水道は国民の生命や暮らしを支えるインフラで、特に能登半島地震では上下水道システムの「急所施設」(その施設が機能を失えばシステム全体が機能を失う最重要施設)や避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の管路などで、耐震化の重要性が改めて明らかになった。このため同省では、これら施設の耐震化状況の緊急点検を実施した。

 対象施設は、水道と下水道それぞれの基幹施設の中でも、特に上下水道システムの急所施設と避難所などの重要施設に接続する上下水道の管路やポンプ場を対象とした。また水道施設の点検対象には、簡易水道も加えた。重要施設は地域防災計画等で定められている避難所や医療機関などで、上下水道一体で耐震化を推進する観点から、給水区域内かつ下水道処理区域内の重要施設に接続する管路等を対象とした。

 緊急点検の結果、2023年度末時点での全国の耐震化率は、上下水道システムの急所施設については水道システムの急所施設が取水施設で約46%、導水管で約34%、浄水施設で約43%、送水管で約47%、配水池で約67%に留まっている。下水道システムの急所施設は、下水処理場が約48%、下水道管路が約72%、ポンプ場が約46%となっている。

 また、避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の管路等については、水道管路が約39%、下水道管路が約51%、汚水ポンプ場が約44%に留まっている。給水区域内かつ下水道処理区域内の重要施設のうち、接続する水道・下水道の管路等の両方が耐震化されている重要施設の割合は、約15%と低い結果だった。

 このうち本県の耐震化率は、水道の取水施設が27%、導水管が34%、浄水施設が24%、送水管が33%、配水池が45%。下水道は下水処理場が39%、下水道管路が91%、ポンプ場が63%となっている。

 避難所などの重要施設に接続する水道管路の耐震化状況は、対象管路延長約1314kmのうち耐震適合管の延長が約727kmで、耐震化率は55%となった。下水道管路は、対象管路延長約635kmのうち耐震化された延長が約260kmで耐震化率は41%、対象ポンプ場96カ所のうち地震時でも排水機能が確保されているのが36カ所で耐震化率は38%となっている。

 給水区域内かつ下水道処理区域内における重要施設は県内に487カ所あり、このうち接続する水道・下水道の管路等の両方が耐震化されているのは45カ所にとどまり、割合は9%となった。

 同省は今後の取り組みとして、全ての水道事業者や下水道管理者などに対して、緊急点検結果を踏まえた「上下水道耐震化計画」の策定を要請しており、計画に基づく上下水道施設の耐震化を計画的・集中的に推進し、取組状況は定期的にフォローアップを行って、その結果を公表するとともに必要な支援を実施していく。

 また耐震化の推進とあわせて、料金・使用料の適正化等による経営改善や広域連携・官民連携による事業の運営基盤強化、施設のダウンサイジングや統廃合、分散型システムの活用等による施設規模の適正化を推進していくほか、軌道下等の施工困難箇所での耐震化工法など、効率的な耐震化技術の開発・実装を推進し耐震化を加速していく。

 さらに上下水道施設の耐震化とあわせて、可搬式浄水設備や可搬式汚水処理設備の活用、代替水源の確保、配水系統間の相互融通、浄水場間や下水処理場間の連絡管整備など、災害時の代替性・多重性の確保を推進するとしている。

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