中橋架け替えなど推進 渡良瀬川河川整備計画 治水計画見直しも検討(渡良瀬川河川)

[2024/11/1 栃木版]

 国交省渡良瀬川河川事務所(荒井満所長)は10月31日、同事務所で利根川水系渡良瀬川河川整備計画フォローアップ委員会(委員長・長尾昌朋足利大学工学部創生工学科教授)を開き、2017年12月に策定した渡良瀬川河川整備計画の第3回点検と利根川総合水系環境整備事業(渡良瀬川環境整備)の事業再評価を実施した。河川整備計画の点検では、今後の方針として引き続き治水安全度の達成に向けて中橋架け替えなど予定している整備メニューを着実に実施していくほか、気候変動に伴う治水計画の見直しを検討していく。また、気候変動による水災害リスクに備えて流域全体での取り組みを促進し、水辺空間の確保に関する整備も継続することとし、委員会はこの方針を了承した。

 渡良瀬川河川整備計画は、渡良瀬川本川と支川の桐生川、蓮台寺川放水路、旗川、矢場川、多々良川、秋山川、および渡良瀬川(草木ダム)の直轄区間を合わせ、延べ76.9kmの必要な管理と整備事業を盛り込む。計画対象期間は概ね30年間とし、年超過確立30分の1から40分の1に相当する洪水による災害の発生の防止または軽減を目的とする。河川整備計画の目標流量は、高津戸地点で1秒あたり3300立方m、河道目標流量は同じく1秒あたり3000立方mとする。

 整備計画の点検は、事業評価の実施時期などを勘案して計画的に実施し、流域の社会情勢の変化や地域の意向、河川整備の進捗状況などを適切に反映できるよう行うもので、点検の結果、計画の見直しの必要がなければ現計画に基づき事業を実施し、計画の見直しの必要があれば変更計画の検討を進めていく。

 今回の点検にあたっては、本年7月に利根川水系河川整備基本方針が変更されており、気候変動による降雨量の増加などを考慮して、基本高水のピーク量は高津戸地点で毎秒5000立方m(既定計画は毎秒4600立方m)に設定された。洪水調節施設などで毎秒2200立方mに調節し、河道への配分流量は高津戸地点で毎秒2800立方mとしている。

 事業の進捗状況は、25年3月時点の予定として、堤防の整備が区間延長約22.8kmに対し進捗率約24%、河道掘削が同じく約2.3kmに対し約26%、橋梁架替が3橋に対し約33%、浸透対策が約14.9kmに対し約15%、浸食対策が約32.2kmに対し約16%となっている。

 堤防の整備は下流部から順次進めており、渡良瀬川本川は秋山川合流点下流部、および支川秋山川の堤防整備が完了し、順次上流を進めている。河道整備は、対象とする流量を流下させるために必要な箇所で河道掘削などを実施している。橋梁は、桁下高が確保されていない橋梁で架け替えを行っており、中橋は本年度に工事着手して整備を進めている。

 環境整備事業は、地域における水辺の交流拠点、ネットワークの形成として3地区で整備を実施し、「足利地区」は05年度に、「岩井地区」は19年度に、「五十部地区」は22年度に、それぞれ整備が完了している。

 事業進捗の見通しとしては、下流側から量的整備を進めるとともに、ネック箇所である中橋の改修を早期に実施し、その後は桐生川に架かる境橋の架け替えも予定する。また、堤防未整備区間の築堤をはじめ、流下能力確保のための河道掘削、浸透対策としての堤防強化対策などを実施し、新たに「足利市かわまちづくり」の整備も進める。コスト縮減の取り組みは、近傍の自治体の公共事業からの建設発生土を盛土材として有効活用することで、約0.7億円のコスト縮減を図る。

 河川整備に関する新たな視点では、気候変動の影響で治水安全度が目減りすることを踏まえ、必要な取り組みを反映して本年3月に「流域治水プロジェクト2.0」に更新している。プロジェクト2.0では、気候変動(2℃上昇)による降水量増加を考慮して雨量1.1倍となる規模の洪水を安全に流下させることを目指すとともに、多自然川づくりを推進する。

 これら河川整備の進捗状況や新たな視点を踏まえ、点検結果は引き続き河川整備計画に基づき事業を実施し、環境に配慮しながら早期に目標とする治水安全度の達成に向け整備を加速していくほか、気候変動による降水量の増加などを考慮した治水計画の見直しを検討していく。

 また、気候変動による水災害リスクの増大に備えるため、流域内の関係機関との連携を図り、流域全体での取り組みを促進するとともに、豊かな自然を再生し、安全かつ容易に触れあうことができる水辺空間の確保に関する整備を継続することとしている。

 これに対し、委員からは令和元年東日本台風による出水について下流域や上流域でどのような対応を行ったかや、県管理河川の整備の状況、流域治水プロジェクト2.0や環境整備の取り組みなどについて質問があり、事務局の示した点検結果案を原案通り了承した。

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