下水道の官民連携へ 来年度末までに可否を判断(宮城県 大崎市)

[2024/10/25 宮城版]
 大崎市は下水道事業に、官民の連携で管理・更新を一体的に行う「ウォーターPPP」の導入を検討している。専門的な知識を持つ日本下水道事業団(東北総合事務所・仙台市青葉区)に検討業務を委託している。本年度から2カ年程度で調査を進め、同市は来年度末に、導入の可否や対象事業、エリアなどを決定する方針だ。

 同市の下水道事業は、施設の老朽化や人口減少による使用料の減少など、対応すべき課題がある。2020年には、下水道・農業集落排水・浄化槽の3つの特別会計を企業会計として1つにまとめたこともあり、一般会計からの繰入金に依存する体質を改める必要がある。このため、10年間を計画期間とする「下水道事業経営戦略」(2021年2月策定)をまとめ、民間連携手法についてコスト縮減効果や効率性を検討することとした。

 検討の対象は、下水道事業(雨水含む)と農業集落排水事業、浄化槽の全般となる。合併前の事業を継続しているため、下水道事業は地域によって▽公共下水道▽流域関連公共下水道▽特定環境保全公共下水道事業、の3つに分かれている。汚水処理場は古川師山下水浄化センターと岩出山浄化センター、鳴子浄化センターの3カ所。雨水は古川・三本木・鹿島台・松山の3地域に6排水区ある。

 農業集落排水は荒谷・西古川・飯川・敷玉・新沼第一・一栗・田尻第一・田尻第二・富岡・大貫の10地区で実施している。高柳地区農集排は東日本大震災で被災したため、隣接する三本木地区流域関連下水道に統合している。

 検討業務は日本下水道事業団に委託して進めている。導入の可能性を探るため、官民の役割分担やリスク分担の検討、コスト比較、導入効果の評価などを行うことになる。検討の補助業務を担当するコンサルタントを選定するため、公募型プロポーザルの手続きを進めているところだ。

 ウォーターPPPには、同市が検討している「管理・更新一体マネジメント方式」のほかに、より民間が主体となる「公共施設等運営事業」がある。民間への委託範囲によって、レベルが定められており、3~5年程度の短期契約で複数業務を民間に委託する方式は、範囲の狭いレベル1~3とされている。多くの自治体はレベル3以下での検討や導入を進めている。

 民間が主体となる「公共施設等運営事業」は、レベル4とされ、水道と下水道を一体的に民間委託した宮城県をはじめ、浜松市(静岡県)と須崎市(高知県)、三浦市(神奈川県)が下水道事業に導入しただけにとどまっている。下水道事業の民間委託を段階的に進めようとする国土交通省は、比較的に導入しやすいように工夫したレベル3.5の管理・更新一体型を新設した。

 同方式では、民間との契約期間を原則10年間の長期とし、民間事業者が維持管理や更新などの業務執行を自ら決定し、業務を執行する責任を負う「性能発注」となる。ただ、管路については「仕様発注」とし、調査や更新の終わった区域から段階的に「性能発注」移行する。県内では、利府町が民間事業者の公募手続きを進めており、これが決まれば県内最初の導入となる。

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