管渠耐震化の対象拡大 流域下水道事業 経営戦略の改定へ(県上下水道課)

[2024/10/11 栃木版]

 県上下水道課は流域下水道事業経営評価委員会に、流域下水道事業経営戦略の改定素案を示した。成果指標は9つの指標のうち7つを見直し、主要設備の改築・更新は29年度の目標を66設備から61設備に、中継ポンプ場や処理場の耐震化同じく100%から66%に見直す。事業費の増大が主な要因で、このほか幹線管渠の耐震化率は対象施設を拡大したことで、29年度の目標が100%から56%に低下した。委員会で了承が得られたことから、今後は市町に意見を照会したあと、12月の経営評価委員会で最終案を説明し、そこでの意見も踏まえて23年2月か3月にも経営戦略を改定し公表する。

 流域下水道事業経営戦略は、流域下水道事業の経営基盤の強化を図り将来にわたり安定的・継続的な事業経営を推進するため、2020年3月に策定した。計画期間は29年度までの10カ年で、今回は策定後5年を経過することから、計画期間や経営方針は保持しながら、これまでの実績などを踏まえ後半5年間の成果指標の目標値や投資・財政計画を見直す。

 成果指標の目標値のうち処理場の処理能力については、29年度の目標を現行の1日当たり22万3600立方mから21万7100立方mに変更する。経営戦略策定した後に、中央処理区の増設工事に関する詳細な設計業務を行っており、必要処理能力が2池から1池に変更になったことから目標値も見直した。

 改築・更新を実施した主要設備数は、24年度の目標を現行の53設備から50設備に、29年度の目標を現行の66設備から61設備に見直す。近年、資材価格が高騰しており、今後も事業費の増大が見込まれることから、目標設備数の見直たうえで引き続き、優先順位を精査しながら設備の改築・更新を進めていく。

 幹線管渠の耐震化率は、24年度の目標を現行の66%から29%に、29年度の目標を現行の100%から56%に見直す。減少したように見えるが、これまでに当初想定以上の耐震化の進捗が図れたため、対象施設を優先箇所の431カ所から全数の1978カ所へと拡大したことで、分母が大きくなりパーセンテージが低下している。

 中継ポンプ場、処理場の耐震化は、24年度の目標を現行の51%から45%に、29年度の目標を現行の100%から66%に見直す。耐震診断や詳細設計を実施した結果、当初想定よりも工事費が増大したほか、施工が困難で対策に時間を要することが判明したため、耐震化率を見直す。引き続き優先順位を精査して、中継ポンプ場・処理場の耐震化に努めていく。

 再生可能エネルギー導入等によるCO2削減は過去の実績を踏まえて、24年度の目標を現行の年3800トンから4100トンに、29年度の目標も現行の年4000トンから4100トンに見直す。引き続き、消化ガス発電や水処理運転の安定稼働の維持に努めていく。

 下水汚泥の有効利用率は、昨年度に有効利用可能な新規の受け入れ施設を確保することができたことから、24年度の目標値78%、29年度の目標値82%ともに100%へと見直して、下水汚泥の有効利用に努めていく。

 企業債残高は、地方公営企業で建設改良費に充当するために借入を行う地方債の残高であり、耐震化工事等の前倒しや資材価格の高騰で年度ごとの新規借入が増加したことから、最終年度の目標を現行の46億円から52億円まで引き上げる。

 投資・財政計画の見直しでは、過去5年間の事業実績を反映した収支計画の見直しを進める。収益的収支は前半期に引き続き計画的な点検、修繕などを実施して経費を削減し、維持管理費の増加を極力抑制するよう計画している。

 また資本的収支は、建設改良費で思川浄化センターや県央浄化センターの処理施設増設のほか、ストックマネジメント計画に基づく施設の改築・更新や下水道総合地震対策計画に基づく施設耐震化を実施するための必要額を算出し、事業費の平準化を考慮しながら計画している。

 さらに今後の修正予定として、維持管理費に反映する物価上昇率を、現時点で見込んでいなかったが今後は2.0%とするほか、現在、0.82%としていた企業債の新規借入の利率を、名目長期金利が25年度から29年度にかけて1.2~2.1%まで上昇すると試算されていることから、この試算値を各年度に利率として用いる。また、現時点で24年度予算と同額で見込んでいる項目は、25年度当初予算編成が完了し次第、数値の置き換えを行う。

 このほか、経営戦略の本文についても時点修正
し、消化ガス発電や太陽光発電を脱炭素社会に向けた取り組みとして、特にGXの取り組みを明文化した。広域化・共同化は、22年度に広域化・共同化計画を策定して進捗管理を行いながら計画的に事業を進めていくことを記載している。官民連携の推進は、さらなる民間推進のため維持管理や更新を一体的にマネジメントするウォーターPPPの導入に向けた検討を始めたことから、これを記載している。

 この素案に対し、委員からは改築・更新を実施した主要設備数の目標値を現行よりも減らしていることについて質問があり、同課は「ストックマネジメント計画を策定するタイミングで各機器の劣化状況を確認しており、後ろ倒しにしても大丈夫と判断した設備を目標から落としている」などと説明した。

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