適正工期の必要性確認 時間外労働など意見交換(日建連東北支部と整備局)

[2024/10/9 宮城版]

 日本建設業連合会東北支部(勝治博支部長)は7日、仙台市内で東北地方整備局との意見交換会を開催した。建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されてから半年が経過したことを受け、日建連が会員各社の上限規制に向けた取り組み状況を報告するとともに、同局に対して適正な工期の確保や4週8閉所などをさらにもう一歩前に進める必要があると訴えた。

 意見交換会には日建連から勝治支部長ら14人、同局から西村拓局長ら15人が出席。主に▽東北地区における公共投資の推進▽時間外労働罰則付き上限規制に伴う完全週休2日の実現と適切な工期設定▽労働者の処遇改善▽工事事故防止への取り組み──の4つのテーマについて話し合った。

西村局長

西村局長


 あいさつで西村局長は、能登半島での地震や大雨など災害対応で日建連が尽力していることに感謝を表明。意見交換については4つのテーマのうち、特に時間外労働の上限規制に関し、「適用開始から半年が過ぎた。この間に見えてきた課題も含めていろいろ意見を聞き、整備局としても改善できる点は検討していきたい」と意気込んだ。

勝治支部長

勝治支部長


 勝治支部長は、上限規制の適用開始によって「建設業界の働き方のルールが大きく変わった。決められた労働時間の制限の中で工事を進めなければならない。規制開始から半年が経った現在、日建連の会員各社においてはぎりぎりの状態で基準を満足できるかどうかという状況にある」と告げ、同局に対し「適正な工期の確保や4週8閉所、契約の見直しなどに関する協議の取り組みをもう一歩前に進める必要がある」と訴えた。

 意見交換では最初に、日建連が東北地区における公共投資の推進について、国土強靭化年次計画に基づく諸事業の計画的な早期執行と発注の平準化を要望。災害発生時の災害協定に基づいた相互連携の強化も願った。

 同局は国土強靭化について、残り1年となった5カ年加速化対策に続き、次の「国土強靭化実施中期計画」に基づく取り組みを進める必要があるため、同計画の早期策定に向けて関係方面に働きかける意向を伝えた。

 さらに国交省の公共事業の当初予算が10年以上にわたって横ばいになっている状況について、物価や労務単価の上昇を踏まえれば実質的な事業量が減少しているため、「当初予算を必要に応じて伸ばしていくことも重要」との認識を示した。

 災害対応については勝治支部長が建設業のBCP(事業継続計画)に関し、企業の防災力を高め災害時の経済被害を軽減する効果があるため、積極的に取り組む必要があると指摘。同局で策定企業を認定しているのが港湾空港部のみに留まっていることから、認定制度を拡充するよう求めた。

 時間外労働の上限規制に伴う完全週休2日の実現と適切な工期設定については、日建連が土日閉所による完全週休2日の実現や、時間外労働上限規制の順守を前提とした適正な工期設定、現場の実態を踏まえた柔軟な工期変更と適切な経費等の増額などを要望した。

 同局は東北の各県・市町村と連携し、来年度から月単位の週休2日工事を発注者指定型で発注することを原則化していくと紹介。工期については余裕期間制度のフレックス方式を原則適用して適正工期の設定に努めていることを伝えた。

 日建連は東北支部で9月に正副支部長会社など13社に対して行ったアンケート調査の結果を報告。社員の時間外労働の抑制に関して民間工事で「もう一段の対応が必要な会社が複数ある」ことを紹介するとともに、各社の対応策として現場業務の一部内製化、アウトソーシング、派遣社員の増員などに取り組んでいることを明かした。

 工期については「土木工事に関する実態調査報告」において、国交省発注工事で18%が「適正でない、あまり適正でない」と回答していることなどを伝えた。

 これらに関して同局の宮本健也企画部長は「後で(アンケート結果を)詳細に見させていただき、われわれの方で改善すべきところはしっかり対応したい」と答えた。

 労働者の処遇改善に関するテーマでは、第三次・担い手3法の一体的改正が行われ、今後に具体策が打ち出されることから、新しい制度設計について日建連東北支部の委員会と同局の企画部で情報交換や意見交換する場を設けることにした。

 工事事故防止の取り組みに関しては、今年になって各地で大雨発生時における工事現場での死亡事故が相次いでいることから、同局が「国交省全体として大雨時における工事現場での対応について見直しが必要ではないかという議論が始まっている」と話し、さらなる取り組みが必要になる際には協力するよう求めた。

 意見交換の総括で勝治支部長は「もっとも大きい課題は担い手の確保」と述べ、技能労働者の圧倒的な不足によって専門工事会社が確保できずに工事に応札できない、あるいは工期が大幅に遅延するという事態も起きかねないため、「一日も早く新4Kを実現する必要ある」と力を込めた。

 西村局長は、適切な工期設定について「国交省発注で2割ほどできてないという指摘もあったので、適切でない事態等があったら対応したい」と発言。新4Kの実現は「われわれも目標を共有している」とし、適切な制度の運用や広報に努める考えを表明。事故防止に向けては「重大事故が異常気象の前後に起きている傾向が強いので、通常時の事故防止対策だけでなく異常気象の前後も特に注意する必要がある」と話した。

]時間外労働の罰則付き上限規制に伴う完全週休2日の実現と適切な工期の設定などについて話し合った

]時間外労働の罰則付き上限規制に伴う完全週休2日の実現と適切な工期の設定などについて話し合った

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