経営戦略年度内に改定 流域下水道経営評価委 成果指標は概ね達成(県上下水道課)
[2024/10/4 栃木版]
県流域下水道事業経営評価委員会(委員長・前橋明朗作新学院大学経営学部長)が3日に県庁で開かれ、経営戦略に基づく2023年度の達成状況と24年度の取り組み内容が報告された。成果指標9項目のうち8項目は目標値通りもしくはそれを上回る実績を収めたものの、企業債残高は耐震化工事などの前倒しのため目標に届かなかった。また今回の委員会では、県流域下水道事業経営戦略の改定素案も報告。成果指標の目標値や投資・財政計画を見直すもので、今後は経営評価委員会での審議や市町の意見照会などを経て、2025年2~3月にも経営戦略を改定・公表する。
議事に先立ち、県上下水道課の大塚功司課長は本年度から上下水道課が新設された経緯を説明し、「今後の耐震化や老朽化対策、災害対応を上下水道が一体となって取り組んでいく」と述べたほか、「本日は23年度の流域下水道事業経営戦略の達成度評価と、経営戦略の指標や投資財政計画の見直しについてご指示いただきたい」と、忌憚のない意見を求めた。
その後は前橋委員長を議長に、経営戦略の達成度評価について審議した。9つの指標のうち、「処理場の処理能力」については将采の流入水量増加に対応するため、23年度に県央浄化センター水処理施設増設工事の土木・建築工事を実施し、目標値を達成。24年度は同工事の機械・電気設備工事に着手して、25年度の工事完了を目指す。
「老朽化した幹線管渠の調査・点検」は、3処理区で合計9.2kmの調査・点検を実施し、目標としていた一巡目の対象管渠130.4km全線の調査・点検が完了している。24年度も引き続き、幹線管渠の二巡目の調査・点検を実施する。
「改築・更新を実施した主要設備数(累計)」も、汚泥処理設備更新工事で巴波川浄化センターの機械設備工事や大岩藤浄化センターの電気設備工事を実施し、目標値を達成。24年度は、巴波川浄化センターで事業用水槽設備を更新する。
「幹線管集の耐震化率」は、目標値の79%を37ポイント上回った。23年度は、重要な幹線管路の耐震化工事(マンホールと管渠接続部の可とう化)を224カ所で実施し、29年度までの目標としていた431カ所の対策が完了したことから、対象施設を広げて対策を実施している。
「中継ポンプ場・処理場の耐震化率」も、23年度は北那須浄化センターで導水渠の耐震補強工事(土木・建築)を実施し、目標値を達成している。24年度は、大岩藤浄化センターで沈砂池ポンプ棟の耐震補強工事を実施する。
「再生可能エネルギー導入等によるCO2削減量」は、各浄化センターで消化ガス発電や処理場の適正運転に努め、目標値を達成。「下水汚泥の有効利用率」は、下水汚泥等をセメント原料にできる新たな処理先を追加し、93%を有効利用して目標を達成した。
「経常収支比率」は、予算時に電気料金の高騰を見込み市町負担金を増額したが、電気料金が当初の想定を下回ったため経常利益が発生した。24年度予算も同様に電気料金高騰を見込んで編成しているため、現時点では黒字になると見込んでいる。
「企業債残高」については、耐震化工事などを前倒したことで企業債の新規借入が増加したため、目標値の78億円を1億9000万円上回り未達成となった。24年度は、企業債償還金に対して新規借入予定額が少ないため、企業債残高は減少が見込まれる。
委員からは、将来の流入水量の増加に対処するため処理場の増設を行っているものの、将来の人口減少に伴い流入水量が減った際には余剰設備になるのではといった懸念が示され、県は「6流域のうち県北で減少、県央でやや増加していくという見通しで、県央浄化センターを増設している。将来的には余剰分を、共同化計画による農業集落排水などの受け入れに充て、合理的な汚水処理を進めていく」と答えた。
県流域下水道事業経営戦略の改定では、策定後5年を経過することからこれまでの実績などを踏まえ、後半5年間の指標などについて見直す。時点修正となることから計画期間や経営方針は保持し、後半期の成果指標の目標値、後半期の投資・財政計画について検討・見直しを行う。
成果指標の目標値は、第2期ストックマネジメント計画に基づいた改築・更新設備数とするほか、第2期下水道総合地震対策計画を踏まえた施設の耐震化率、過去の実績などを踏まえた温室効果ガス排出量の削減量、下水汚泥の有効利用などを見直した。投資・財政計画も、過去5年間の事業実績を反映して見直し、委員はこの素案に基づいて改定作業を進めていくことを了承した。