引き提で断面拡大 一級河川尾名川 来年度に改修事業着手(県河川課)
[2024/9/19 栃木版]
県河川課は、一級河川尾名川の足利市奥戸町地先の河川改修事業に2025年度から着手するのを前に、パブリックコメントの手続きを開始した。この事業は、JR両毛線橋梁から一級河川旗川合流点の尾名川水門までの総延長2650mで築堤・掘削・護岸・排水樋門改築・橋梁架替などを行い、河川断面の拡大を図るもの。事業期間は44年度までの約20年間を予定し、総事業費は約53億円を想定している。
尾名川は上流端の足利市大久保町から、渡良瀬川左支川の旗川へ合流する流域面積12.0平方km、管理延長3.0kmの河川。この河川の流域では15年、16年、17年と、度重なる浸水被害が発生した。
さらに令和元年東日本台風では、尾名川からの越水により330haにも及ぶ浸水被害を引き起こしている。このように現況の断面が狭小で、氾濫が相次いでおり、早急な河川整備が求められていることから、改修事業で河川断面を拡大して、浸水被害の軽減を図る。
事業の内容は、計画流量毎秒130立方mの洪水を安全に流下させるため、築堤・掘削・護岸・排水樋門改築・橋梁架替などを行う。工事内容は、掘削約8万立方m、築堤約9万3000立方m、護岸工約3500平方m、道路橋の架け替え6橋、および排水樋門1カ所。河川断面の拡大による河岸・水際部の整備にあたっては、瀬や淵などを可能な限り保全・創出し、生物の生息・生育・繁殖環境の多様性に配慮する。
左右岸の引き提により、河川断面は整備前の約30mから、整備後は約40~65mまで拡大する。また計画流量は、現況の毎秒44立方mから130立方m(水路合流点より上流は28立方mから85立方m)へと増大させる。計画確率規模は5分の1で、概ね5年に一度の割合で発生する洪水を安全に流下させるように整備する。
尾名川では、令和元年東日本台風で甚大な浸水被害が発生したことから、この工区の下流部で緊急的に堤防強化事業(築堤)を実施している。この事業は24年度に概成する見込みであり、引き続き上流区間に継続して事業を延伸する必要があるため、25年度から事業に着手する。
氾濫シミュレーションの結果、想定される主な浸水被害は浸水面積が約147ha、浸水家屋数が45戸(床上8戸、床下37戸)となっており、この事業による総便益(供用後50年間の効果を金銭に換算したもの)は81.2億円、総費用(総事業費を現在価値化した事業費と供用後50年間の維持管理費を含む)は36.4億円、費用便益比(B/C)は2.2と見込まれる。
この事業に意見のある人は、10月12日までに県河川課企画治水担当へ意見を提出する。様式は任意となっており、住所、氏名、電話番号を記載して、郵送やFAX、電子メールで送付する。