スリーボンド工場など 建築・景観賞6作品を選定(足利市)

[2024/8/24 栃木版]

 足利市は、2024年度建築・景観賞の受賞作品を公表した。本年度は建築文化部門で「スリーボンドファインケミカル栃木工場」、まちなみづくり部門で「大岩山天空西公園 天空テラス」など3件が受賞し、建築・景観奨励賞でも建築文化部門で2件が受賞した。表彰式は9月25日午後2時から、県南地域地場産業振興センター大ホールで景観講演会とあわせて開催する。

 この賞は、足利の歴史・文化、自然と人が調和し、心地良さを実感できる都市を目指し、都市環境の資質の向上および都市景観に対する市民意識の高揚を図るため、良好な景観を創出する建築物、工作物、まちなみおよび魅力的な景観形成に寄与する活動を表彰している。

 本年度は「建築文化部門」と「まちなみづくり部門」に13件の応募があり、6月26日の最終審査で受賞作品6件を選定した。建築・景観賞は建築文化部門1件とまちなみづくり部門3件、建築・景観奨励賞には建築文化部門で「小松原邸」と「明治機械株式会社 事務所棟」の2件が選ばれている。

 本年度は表彰式とあわせて、三橋伸夫宇都宮大学名誉教授が「人口減少期における都市・農村の景観を整える」と題する景観講演会を実施する。

 建設関連の受賞作品と講評は次の通り。([1]建築主または所有者[2]設計者[3]施工者[4]完成時期[5]理由〔要旨〕。敬称略)
【建築文化部門】
▽「スリーボンドファインケミカル栃木工場」(県町206-24)=[1]スリーボンドファインケミカル(相模原市緑区大山町1-1)[2]竹中工務店(東京都江東区)[3]竹中工務店(東京都江東区)[4]2022年11月完成[5]あがた駅南産業団地内に新設された工場建築で、外壁と屋根が一体化した特徴的な外観は「赤城おろし」と呼ばれる地域特有のからっ風を受け流し、建築物への負担を軽減させるために考案された。機能性に優れた洗練された形状であり、意匠の面でも特異なファサードを構成しており、産業団地において一際目をひく建築物となっている。無機質になりがちな工場建築において機能性とデザイン性を兼ね備えた優れた建築物であり、景観形成の向上に寄与するものであると評価される。
【まちなみづくり部門】
▽「大岩山天空西公園 天空テラス」(大岩町570)=[1]-[2]-[3]-[4]2023年完成[5]大岩山天空西公園内に所在する天空テラスからは、足利の美しい自然景観や都市景観を俯瞰することができ、さらには広大な関東平野を一望することができる。大岩山登山の休憩施設としても活用されているこの場所からの眺めは、市民や観光客にとって心休まる景観となっている。
▽「竹あかりによる足利まちなかにぎわい創出
プロジェクト」(家富町2260)=[1]-[2]-[3]-[4]-[5]足利大学及び足利短期大学の学生が主体となって取り組んでいる活動で、里山において地域課題となっている放置竹林を伐採して竹あかりを製作し、市内各所に設置することで趣ある夜の景観を創出している。また、劣化した竹筒を「竹チップブロック」に再利用し、市街地で必ずしも有効活用されていなかった土地に円形の広場を整備することでイベントの場を提供している。
▽「山前公園パノラマ展望台」(大前町1600)=[1]-[2]-[3]-[4]-[5]公園内の樹木の成長に伴い展望台からの眺望が失われつつあった山前公園で、「山前公園守る会」と「山前観光協会」が協働し、環境の改善に向けた活動を行うことで、公園開設当時のパノラマ眺望が復活した。山前公園が当時の景観を取り戻したことも地域住民へ周知するほか、地元の中学生と一緒に清掃活動などにも取り組んでいる。
【建築文化部門(奨励賞)】
▽「小松原邸」(本城2-1778)=[1]古澤妙子(本城2-1778)[2]-[3]-[4]1891年完成[5]明治時代に商家として建てられた小松原邸は、木戸門をくぐると手入れの行き届いた緑豊かな庭園があり、敷石のアプローチの先に古き良き日本の邸宅が姿を現す。両崖山風致地区の自然景観とも馴染むこの建築物は、庭園を含め懐かしく落ち着く空間を形成し、時代の移ろいとともに手を加えながら丁寧に住まわれてきたことがうかがえる。古きを思い起こさせる伝統的建築物が今後も大切に保全されていくことが期待される。
▽「明治機械株式会社 事務所棟」(鹿島町1115)=[1]明治機械(東京都千代田区神田司町2-8-1)[2]石川建設一級建築士事務所(群馬県太田市)[3]石川建設(群馬県太田市)[4]2023年4月完成[5]主要地方道桐生岩舟線の拡幅工事に伴って、事務所棟の建て替えを実施した。新たな事務所棟には大きな連続窓が配置され、事務所棟の西側に植栽を設けることで潤いのある景観づくりに努めている。また、前面道路から建物を大きく後退させて配置することで、道路側への圧迫感を軽減し、工場全体が明るく開放的なイメージに一新されている。工場建築において、通りへの見え方等の関係性に配慮したひとつの好ましい事例として評価される。

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