都市ビジョンを改定 次期区域マスも来年度末の告示へ(県都計審)

[2024/8/20 栃木版]

 第187回県都市計画審議会(会長・大森宣暁宇都宮大学教授)が19日、県公館で開かれた。今回は、県都市計画審議会規程の一部改正について「原案のとおり議決」と決定したほか、このほど改定した「とちぎの都市ビジョン」について報告した。今回の改定では「とちぎのスマート+コンパクトシティ」を継承したうえで、災害に強い都市づくりや脱炭素型の都市づくりを基本目標に追加。今後はこのビジョンに基づき、土地利用や都市施設などの方針を定める「次期都市計画区域マスタープラン」の原案を作成して国と協議を進め、25年度末の決定・告示を目指す。

 議事に先立ち、県県土整備部の谷英夫部長は、能登半島地震に触れて「本県も東日本大震災や大雨などによる大きな災害を経験しており、災害に強いしなやかなまちづくりが重要と改めて認識している。こうした中、県では都市計画区域マスタープランの策定に着手しており、災害に強いまちづくりを市町と連携して進めている」と話し、委員の協力を求めた。

 「とちぎの都市ビジョン」は、人口減少や超高齢社会などがもたらす課題に対応し、安全で暮らしやすく持続可能な集約型の都市づくりを進めるため、都市づくりの基本的な考え方や都市政策の展開の方向性を示すものとなる。

 この都市ビジョンの考え方を踏まえて、各都市計画区域では都市計画の基本方針となる都市計画区域マスタープランを策定していく。なお、当初の都市ビジョンは2009年度に策定し、その後概ね5年ごとに見直しを行っており、今回で3回目の改定となる。

 今回の改定では、本年2月の同審議会による答申の内容を踏まえて案を作成し、3月27日から5月9日までパブリックコメントで県民から意見を募集。2人と1団体から計16件の意見が寄せられたが、概ね賛意・賛同や着実な推進を要望する意見だったため、原案から大きな変更は無かった。

 改定にあたっては、人口減少や超高齢社会のさらなる進行に加え、頻発化・激甚化する自然災害やカーボンニュートラルの実現、コロナ渦を契機とした多様なライフスタイルなどといった近年の社会情勢の変化に的確に対応していくために見直しを図った。

 現行ビジョンに掲げている多核ネットワーク型の都市構造「とちぎのスマート+コンパクトシティ」は、依然として人口減少や超高齢社会が進行する中、都市の持続性を高めるためには市街地の規模や役割に応じて都市機能を集約した拠点の形成が必要であり、また、様々なサービスを県土全体にわたって享受するためにはデジタルを活用しながら拠点間をネットワークでつなぐことが引き続き必要であることから、これを継承する。

 これに加えて、今回の改定では気候変動に伴い頻発化・激甚化する自然災害やカーボンニュートラルの実現、コロナを契機とした多様なライフスタイル、少子化対策など新たな社会情勢に対する取り組みを強化する。

 多核ネットワーク型の都市構造「とちぎのスマート+コンパクトシティ」を実現するため、5つの基本目標と具体的な取り組みを設定し、基本目標では「災害に強くてしなやかな都市づくり」と「環境にやさしい脱炭素型都市づくり」を今回新たに追加した。

 具体的な取り組みは、「災害に強くてしなやかな都市づくり」で立地適正化計画(防災指針)による災害リスクに対応した防災まちづくりの推進や、流域治水プロジェクトによるあらゆる関係者が連携した防災対策の強化など、「環境にやさしい脱炭素型都市づくり」で屋上緑化や広場・公園の緑化といったグリーンインフラの確保などを位置づけている。

 このほか従来からの基本目標も、「誰もが暮らしやすい集約型の都市づくり」では立地適正化計画と地域公共交通計画との連携、「誰もが安全でスムーズに移動できる都市づくり」では交通結節点の強化、「とちぎの魅力や強みを活かした都市づくり」ではインターチェンジや幹線道路の沿道など交通利便性の高い地域への産業の集積、誘導を設定して、取り組みを強化する。

 また、県都市計画区域マスタープラン専門委員会の調査検討状況についても報告した。23年2月の都市計画審議会で、知事から「次期県都市計画区域マスタープランの策定に当たっての基本的な考え方」について諮問を受けて専門委員会が設置され、昨年度は「目指すべき都市構造」「都市計画区域」「区域区分」の3項目を調査・検討して答申。「とちぎの都市ビジョン」は、この答申を踏まえて改定している。

 専門委員会では本年度、都市ビジョンの考え方に基づき、都市計画区域マスタープランの原案について調査・検討する。都市計画区域マスタープランは、都市計画区域ごとの将来像や都市計画の決定の方針を概ね5年ごとに定めるもので、この区域マスに即して、各市町はより詳細な方針として市町村都市計画マスタープランや立地適正化計画を作成する。

 次期マスタープランの目標年次は、2020年を基準年として20年後の2040年を展望しつつ、10年後の2030年を目標年次としている。区域マスタープランに定める内容は▽都市計画の目標▽区域区分の決定の有無及び区域区分を定める際の方針▽主要な都市計画の決定の方針▽本区域における都市づくりの実現に向けて-の4項目。主要な都市計画の決定の方針には、土地利用や都市施設の整備、市街地開発事業、自然環境の整備・保全、都市防災に関する都市計画の決定の方針を定める。

 専門委員会では本年度、次期区域マスタープランの原案作成を行い、25年度末の法定手続きや決定・告示に向けて調査・検討を進めていく予定としている。

 なお、審議事項は県都市計画審議会規程の一部改正1件で、県の組織改編による課名変更に伴い、規程の中にある都市計画課を都市政策課に変更するもの。規程は8月19日から施行し、本年4月1日から適用する。

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