出井保育所改築設計プロポの結果 アトリエ慶野正司に(小山市)
[2024/8/17 栃木版]
小山市は、出井保育所の設計業務を委託する業者を公募型プロポーザル方式で選考し、アトリエ慶野正司一級建築士事務所(小山市)を最優秀提案者に選定した。市は今後、同社と協議を進めて今月末から9月上旬ごろに契約を結ぶ考え。9月から2カ年で設計をまとめ、2025年10月から工事に着手して、26年10月の新保育所開所を目指す。旧保育所の解体や外構工事も含め、総工事費は5億7000万円(什器備品含む)を試算している。
来年10月から2カ年で工事実施
プロポには20者が参加表明書を提出し、1次審査(書類審査)で6者まで絞り込み、今月1日の2次審査ではプレゼンテーションおよびヒアリング審査を行った。
2次審査の技術提案では▽子どもたちが生活する場としてふさわしく、安心で快適な空間▽地域に開かれた子育て支援施設▽保育士等職員が働きやすい環境整備▽地球環境への配慮▽実施手順および工程計画(設計プロセス)-を確認し、面接審査で業務への取組意欲・質疑応答の的確性を審査した。
アトリエ慶野正司一級建築士事務所は124.8点を獲得し、最優秀提案者に選定された。同事務所の提案は、地域に親しまれる保育所を目指し、完成までのプロセスに園児・保護者・地域住民・卒園者と「みんなで作ろう」とする姿勢が感じられ、セキュリティに配慮しつつも出井公園との一体感があり、周辺の豊かな自然や田園環境や平地林との調和を活かしたコンセプトとなっている点などが評価された。
現在の出井保育所は1978年建設で、園舎の規模と構造はS造平屋建て・延べ床445平方mとなっている。老朽化が著しく、耐震性不足や設備の経年劣化、使い勝手の不便さなどの問題を抱えており、建て替えを計画した。
建て替えにあたっては敷地も変更し、隣接する市有地と出井公園の配置を整理して、北側に保育所、南側に公園を配置する。建設地の敷地面積は、約3000平方mを想定。なお出井公園も施設が老朽化しており、園児や地域住民の快適な利用環境形成のため、リニューアルを計画しているが、具体的な整備時期や整備内容は未定とした。
保育所の整備スケジュールは、9月から25年5月に設計を策定し、25年7月から9月に工事業者を選定して、25年10月から26年7月に施工し26年10月に新保育所を開所させる。旧保育所の解体工事は26年10月から27年1月、外構工事(園庭、駐車場)は27年3月から6月に予定している。
アトリエ慶野正司一級建築士事務所の提案によると、新たな施設は豊かな自然を大切にし、市北部の子育て支援拠点となる保育所を目指す。人・モノ・技術も「オールおやま」の保育所とし、施設全体を平地林に見立て、県木材業協同組合の協力で県産材(スギ、ヒノキ)を積極的に活用する。想定する敷地面積は3466平方m、園舎の延べ床面積は982平方mとする。
施設整備にあたっては保育所・公園・公民館を一体的に考え、地域で子育てする拠点とする。敷地北側に視認性の高いコの字型に園舎を配置し、園舎に囲まれるように園庭を配置。園庭の南で出井公園と隣接し、公園の東側に軒下アプローチを設置する。駐車場は西に出井公園、北に東出井公民館と隣接するように配置し、41台を確保する。
園舎南西には、緩衝帯となる既存樹木を残し、ビオトープも設置する。既存樹木の南に曲輪の桑山(築山)を整備し、園庭にはシンボルツリーとなる思川桜を植樹して、ネイチャーポジティブ・インクルーシブな保育所とする。
園舎内には、0~5歳児の保育室、遊戯室、職員室、調理室、休憩室、子育て支援室兼会議室、一時預かり室などを設ける。諸室は配置を容易に設計変更することができるようにし、多様なレイアウトが可能で柔軟な使い方を可能とするフレキシブルスペースとする。
施設の構造は、間取りの可変性を備え、木造トラス構造とする。建具で空間を多様に仕切れるようにし、トラスを搬入や荷上げができるサイズにユニット化して組み立てることで、安全性・品質向上・工期短縮・作業効率性を図る。
床下には点検ビットを設け、メンテナンスや配管・配線の修繕、将来の設備更新を容易にする。屋根は雨樋を設置せず、雨は砂利浸透槽に流して循環させる。保育所は72時間自立継続できるよう、備蓄倉庫、太陽光発電、地下水利用、防災設備などを設け、地域の避難所としても活用できるようにする。太陽光パネルや地下水活用など、再エネ・省エネに配慮し、ZEBReadyの達成を目指す。