本庁舎の防災強化 河川合流部改修や止水対策(日立市)
[2024/8/7 茨城版]
日立市は、昨年の9月に発生した「令和5年台風第13号」の豪雨災害による市役所本庁舎の浸水被害を受け、本庁舎の防災機能強化に向けた「市庁舎安全対策計画」の素案を作成した。ことし3月に策定した市災害復旧基本計画に基づく個別計画として位置付けるもので、河川合流部の改修や、庁舎地下階の止水化対策などを進めていく。計画期間は24年9月から27年3月までのおおむね3カ年で、概算事業費には約31億円を投じる計画だ。
この計画は、水害時における市役所本庁舎機能の継続を図るため、台風13号に伴う線状降水帯による豪雨災害を教訓とし、庁舎の浸水対策の現状と課題、国のガイドラインや流域治水の考え方などを踏まえて、庁舎安全対策の基本理念および浸水対策の在り方を定めるもの。目標には、国が定める毎時153mmの国内最大級の豪雨による浸水リスクに加え、今後の気候変動を考慮して10%割り増した毎時168mmの降雨に対しても、庁舎機能を継続することを目標とする。
具体的な庁舎の安全対策に向けては、▽河川の溢水対策▽庁舎外周の止水壁等整備▽電源設備の復旧位置の検討▽庁舎地下階の止水化対策▽庁舎業務継続計画(浸水対策編)の策定方針──を掲げている。
このうち、河川の溢水対策では、庁舎浸水の要因となった河川合流部の改修や二線堤及び導流堤の整備などを行う。河川合流部については、溢水した河川合流部の形状をT字形からY字形に改修し、水流の衝突による水位の上昇を抑え、河床を掘り下げて川の水を円滑に流す。庁舎西側の浸水を低減するため、二線堤(河川の外側に築造する堤防)や導流堤(溢水した水の流れを誘導する堤防)の整備も行う。
庁舎外周には、庁舎内への浸水を防ぐため、庁舎外周の水防ライン上に止水壁などを整備する(地下進入路の上屋整備に併せて止水壁の整備内容を見直す)。
電源設備の復旧位置については、屋上移設(約6.8年、概算62.2億円)、地上移設(約5.5年、概算55.6億円)、現位置(地下1階、約2年、概算9.3億円)復旧の3案について、建物の制約条件、工事の難易度、工事費などを比較検討。有識者の知見の下で総合的に評価した結果、現位置復旧案で復旧を行う。原位置案での浸水リスクについては、免震構造の長所をいかしつつ、多重の浸水対策を行うことで、地震対策と浸水対策の両立を図ることができるとした。
庁舎地下階の止水化対策では、庁舎外周の止水壁等整備により、庁舎内への止水化を図るが、万が一に河川から溢水した水が地下進入路等から流入した場合に備え、浸水経路の止水化対策を行う。具体的には、地下1階機械室と同掘り込み床、免震層の止水化対策を行う。
このほか、庁舎周辺地域の対策では、庁舎が位置する数沢川と平沢川流域での更なる対策として、2つの河川の上流域に調節池を整備するなどの中長期的施策を、現在策定中の「市流域治水計画」に位置付けるとしている。
概算事業費は、河川改修工事に約7億9000万円、庁舎の浸水対策工事に約22億4000万円、実施設計や工事監理に約7000万円の総額約31億円を試算している。本年度の当初予算には、本庁舎の災害復旧事業として総額8630万円の2カ年継続費を設定し、免震装置の復旧工事などを進めるほか、地下進入路に整備する上屋の設計をまとめる計画だ。本年度中には補正予算で事業費を確保し、庁舎安全対策計画の策定を待って庁舎の安全対策工事を行うほか、流域治水計画に基づく河川の改修工事へ準備を進める。