茨城港の長期構想策定に着手 岸壁不足など検討(県港湾課)

[2024/7/30 茨城版]
 県港湾課は茨城港長期構想の策定を進めている。5月には第1回検討委員会を開催し、港湾の主な機能である▽物流・産業▽環境・エネルギー▽人流・賑わい▽安全・安心──ごとに課題や今後の方向性について協議した。施設整備関係では岸壁や産業用地の施設不足、老朽化対策、自然災害への対応などが課題だと指摘されている。検討委員会は全4回の開催を予定し、長期構想をまとめる計画だ。

 茨城港では、18年代前半を目標とした茨城港港湾計画を09年に策定した。その後、社会情勢の変化によるさまざまな課題が生じていることから、同計画を改訂することを決定。改訂にあたり、県港湾課は茨城港の現状や要請を踏まえて、長期的な視点に立った茨城港が担うべき役割と目指すべき将来像(約30年先)を検討するとともに、港湾計画の素案(10-15年後)の検討を行うため、長期構想検討委員会を立ち上げた。

 第1回検討委員会では、委員長に日本港湾協会の大脇崇理事長が就任。茨城港を取り巻く状況や社会経済情勢の展望、課題、長期構想の方向性などについて議論を交わした。

 茨城港の課題には、RORO貨物取扱機能の効率化・拡充に向けた取り組みを挙げる。同港では現在、外貿RORO航路は12航路、内貿RORO航路は2航路が就航。このうち、常陸那珂港区における23年の産業機械の輸出貨物量は、過去最高の155万tに増加し、今後も世界的な産業機械の需要も増加傾向にあるため、さらに輸出量の増加が続くことが見込まれている。今後は労働力不足に起因する2024年問題への対応として、陸上輸送から海上輸送への利用転換がさらに進むことが想定されるため、内貿RORO航路の機能強化が必要になるという。

 産業用地の確保・拡充も課題だ。本県の工場立地件数は、23年の調査で県外企業立地件数と立地件数で全国1位、立地面積が全国2位となっている。一方では、臨海部で新規企業立地に対応できる用地は、日立港区で3.1ha、常陸那珂港区で42・7haであり、港の企業立地と港湾利用を促進するうえで、用地の確保・拡充に向けた取り組みが必要だという。

 港湾施設の整備状況をみると、茨城港は75年から04年に整備された施設が多く、整備後50年が経過する岸壁延長は24年時点で全体の約10%程度となる。ただし、34年には約27%、44年には約58%、54年には約80%に増加する見込みだ。今後は、限られた財源の中で必要な港湾施設の機能を維持するため、事後保全的な維持管理から予防保全型の維持管理へ転換し、計画的・総合的な港湾施設の老朽化対策を行うことが必要だと明記。加えて、港湾施設の戦略的なアセットマネジメントの構築にも取り組むことが必要だという。

 自然災害への対応について、県では16年に茨城沿岸保全基本計画を改訂した。これは東北地方太平洋沖地震による津波被害を受けて津波防護への見直しや、既存の海外保全施設の老朽化に対応するためのもの。今後の自然災害への対応は、引き続き海岸保全施設の強靭化に向けた取り組みを続け、港湾施設の耐震化や液状化対策を推進することが必要だとしている。

 委員からは、「茨城港は外洋に面していることから、長周期波やうねりへの対策も含めて検討する必要がある」「将来的な海面上昇や台風の強大化などにも対応できる安全・安心な港づくりが重要」「内陸部のみでなく、港湾の貨物も防護できる防災能力があるとよい」などの意見が出された。

 検討委員会は全4回の開催を予定している。第2回では長期構想の策定方針を決定し、第3回で茨城港のあるべき姿・役割、将来像、整備基本方針、ゾーニングをまとめた中間案をまとめ、第4回で最終案を決定する。

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