強靭化予算の確保を 適正な工期や労務単価求める(北関東3県合同会議)

[2024/7/27 栃木版]

 第43回栃木・茨城・群馬三県建設業協会合同会議が25日に宇都宮市内のホテルで開催され、3県の協会員のほか国や県の関係機関職員など約40人が参加した。今回の会議では▽防災、減災、国土強靭化への安定・持続的な予算確保(栃建協)▽「地球沸騰化」による熱中症対策(栃建協)▽「時間外労働の罰則付き上限規制」全面適用後の課題(茨建協)▽専門工事業者の担い手確保と処遇改善(茨建協)▽設計労務単価の設定(群建協)▽適正な工期設定に伴う適正な間接費の計上(群建協)-の6つをテーマに、建設業界の発展や課題解決に向けて活発に意見を交わした。

 開会にあたり、栃木県建設業協会(栃建協)の谷黒克守会長は「地域の建設業が存続するには、さまざまな課題を克服する必要がある。今後も3県の建設業協会の連携を図り、互いに切磋琢磨して建設業を発展させていきたい」と決意を表した。

 茨城県建設業協会(茨建協)の石津健光会長は「建設業者が地域の守り手としての社会的使命を果たすため、国交省や県と情報を共有して意見を交換し、課題を乗り越えなければならない」と述べ、課題解決の糸口が見つかることを祈念した。

 群馬県建設業協会(群建協)の青柳剛会長は、「建設業界で団結して建設業の本来の役割を発信していくことが大切であり、北関東3県の交流を深めていきたい」とあいさつした。

 来賓からは、国土交通省宇都宮国道事務所の笹木和彦所長が祝辞を述べたほか、福田富一知事の祝辞も披露された。

 議事に移り、「時間外労働の罰則付き上限規制」(2024年問題)全面適用後の課題については、働き方改革に民間発注者の協力が不可欠なことから、茨建協は設計・監理業務から適正な工期確保を要請するなどの働きかけを行っていると説明した。

 群建協では、群馬県の民間工事の時間外労働対策の取り組みが遅れており、会員企業にアンケート調査を行って課題を整理し、建設業の働き方改革を進める意識改革を促すよう行政に提言するなどの活動を行っていると報告した。

 栃建協では、生産性向上に役立つICTの活用や普及に向てロードマップを取りまとめており、研修の充実を図るほか、設備環境の整備促進も検討している。栃建協ではこのほか、長時間労働解消に向けた建設ディレクターの普及促進の検討、市町や民間への働き方改革関連法の周知徹底に向けた国・県への働きかけも行っている。

 茨建協が取りあげた専門工事業者の担い手確保と処遇改善では、群建協が第三次・担い手3法による処遇対応を進めるための具体的な内容を定めたガイドラインをまとめる段階で、専門工事業者の意見を伝えて反映させていく考えを示した。

 栃建協は、昨年12月に県設備業協会から働き方改革等の関連法の遵守に向けた要望を受け、契約の見直し、適正な工期確保、週休2日制が導入できる工期設定などについて同協会と協議し、的確な対応を行うと回答したほか、会員への周知を図っている。今後も、各団体と意見交換して課題の対応を検討するほか、労務単価設定や週休2日制に伴う割増率の引き上げを国に要望していく。

 設計労務単価の設定では、群建協が▽繁忙期、閑散期、その他市況に応じた柔軟な価格設定▽労務調査結果に加えて望ましい水準として政策的に単価を設定▽CCUSのレベルに応じた単価の設定-を提案した。

 茨建協は群建協の提案に対し、各企業の実情を踏まえた方法を検討する必要があると回答した。栃建協は、市況に応じた柔軟な価格設定に同意した一方で、労務調査結果に加えて望ましい水準として、政策的な単価の設定は実勢調査だけを基準にするのではなく、他産業との格差や地域格差など幅広い視点で設定する必要があると意見した。CCUSのレベルに応じた単価の設定は、CCUS登録にメリットがないことや、CCUSのレベル別年収設定の根拠に不明瞭であることに課題があると意見している。

 適正な工期設定に伴う適正な間接費の計上については、群建協が共通仮設費や現場管理費の影響を考慮した工期の設定のほか、土木工事における共通仮設費や現場管理費の算定式で工期も考慮した算定式への改訂を提案している。

 茨建協は、工期長期化に伴う間接費の計上について、現場の状況を反映する新たな仕組みづくりの検討が必要だと話し、栃建協も間接工事費への対応が必要だと回答した。国や県では、受発注者の協議で間接工事費における現場維持等に要する経費を計上して変更対応することとなっているが、栃建協は直接工事費への反映も重要であり、見直しを国に要望すべきと意見した。

 防災、減災、国土強靭化への安定・持続的な予算確保で栃建協は、5か年加速化対策を上回る予算を確保した国土強靭化実施中期計画の年度内早期策定と年度内での予算措置、国土強靭化事業を補正予算ではなく当初予算での計上を提案している。茨建協や群建協も、国土強靭化実施中期計画の早期策定や当初予算計上を望んでいる。宇都宮国道事務所は、国は計画の早期策定に着手する見通しと説明した。

 「地球沸騰化」による熱中症対策で、栃建協は気温上昇による作業効率の低下やゲリラ豪雨の頻発化で現場の作業不能時間が増加しており、実態に見合った適切な工期設定(工期延長)と対策費用の計上、日当たり施工量の減少を考慮した歩掛り改定が必要だとしており、民間工事発注者等にも熱中症対策の適切な指導・助言が重要だと指摘した。栃木県では猛暑日が続いた場合、受発注者が協議して工期を設定することとしている。

 茨建協は昨年度、茨城県に猛暑日の対応を申し入れ、暑さ指数が31度を超えた場合に現場を休工扱いして工期に追加するなど、柔軟な対応が行われていると報告した。民間への対応は検討段階にあり、今後は国や県への要望を考えている。群建協も栃建協と同様の対応が必要としており、2県の対応を参考に発注機関に要望すると述べた。

 最後に宇都宮国道事務所は、国の対応として▽関東地方整備局の全工事で発注者指定による、月単位の週休2日制の導入や補正係数の設定の実施▽工事関係書類の標準様式の統一▽現場管理費用の見直し▽2024年問題等の相談窓口の設置▽関東地方整備局管内工事で、インフラDX大賞を創設して、受賞企業を総合評価で加点する-などの取り組みに着手したと説明し、民間発注者に対しても建設Gメンを労働基準監督署とともに派遣していく考えを示した。

 また、設計労務単価については労務費の調査を行っていき、猛暑への対応では真夏日や猛暑日に配慮した現場管理費への計上や工期設定も行っている。

 栃木県は、ICT活用工事の普及拡大へセミナーなどのほか、本年4月から発注者指定型で発注件数の数値目標を設定しており、発注要件や工事成績評点を見直している。週休2日制については、原則すべての工事を発注者指定型で発注し、月単位での週休2日の維持を検討していく。このほか、発注時期の平準化、猛暑日を見込んだ工期設定の検討、資機材単価の適切な設定など、労働環境の改善に取り組んでいると説明した。

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