強靭化で中期計画策定 国と県が意見交換 思川開発の計画見直しも(県事業連絡協議会)

[2024/7/2 栃木版]

 国土交通省関東地方整備局は6月28日、県庁で2024年度の「栃木県事業連絡協議会」を開催した。整備局や各出先事務所、水資源機構および県県土整備部が一堂に会し、本年度の予算をはじめ河川、道路など所管する主要事業について、情報の共有や意見の交換を行った。国は本年度、国土強靭化の実施中期計画や首都圏広域地方計画を策定するほか、河川整備基本方針も近く変更される見通し。また、華厳上流砂防堰堤は本体の施工に着手し、国道4号のバイパス・現道拡幅事業も引き続き推進する。水資源機構は、思川開発事業の期間延長など計画の見直しについても言及。県は中橋架替事業や、巴波川の河川激甚対策事業などについて説明した。

 協議会には、整備局から西川昌宏企画部長や市川智秀建政部長、野坂周子道路部長ら幹部が顔をそろえた。水資源機構からはダム事業部の長田仁次長が、県からは県土整備部の谷英夫部長をはじめ次長、本庁課長らが出席した。(役職等は当時)

 開会にあたり、西川部長は「直轄事業の進捗状況をご説明するだけでなく、自治体の計画づくりや施策の進め方などを情報交換することで、県と地方整備局が密に連携しながら効果的に施策を展開でき、非常に大きな力になると実感してる」と話し、活発な意見交換を期待した。

 谷部長は、東日本台風の災害復旧事業や広域道路ネットワークの充実強化など県の取り組みを説明し、道路については「本県の場合は県境が非常に弱い状況にあり、特に力を入れている」と話した。水道事業は「老朽化・耐震化が待ったなしの状況」だとして、国交省の指導を受けながら市町の支援をしていきたいと意気込みを示した。

 議事はまず、整備局から本年度の事業について説明。栃木県内の本年度の当初予算の負担基本額は約98億円で、23年度補正予算と一体とすると約130億円になり、国土強靭化の事業などを切れ目なく執行していく。

 国土強靭化については、昨年改正された国土強靭化基本法に実施中期計画の策定が位置付けられており、早期に中期計画を策定して今後も計画的・安定的に取り組みを進めていく。また新たな首都圏広域地方計画は、本年冬ごろにも「中間とりまとめ」を公表し、その後に大臣決定する予定となっている。

 建設業の2024問題では、関東整備局として発注者指定による週休2日制の実施をはじめ、書類作成業務の負担軽減で国と県の工事関係書類の統一化を進めていく考え。生産性の向上では、小規模工事でのICT施工の普及を図っていく。

 河川事業は、渡良瀬川の中橋架替事業で21年度から特定構造物改築事業に着手し、工事は県に委託して本年度は3連アーチ橋の移設工事を実施する。鬼怒川直轄砂防事業の華厳上流砂防堰堤は、昨年度に法面処理を実施しており、本年度から砂防堰堤本体の施工に着手する。

 流域治水プロジェクト関連は、本年4月から「流域治水プロジェクト2.0」へ更新し、利根川水系では霞堤の保全やダム・調節池など既存ストックの徹底活用などを推進する。あわせて、河川整備基本方針の変更に係る審議を進めており、近く基本方針が変更されるとの見通しを示した。

 水道行政の移管については、本省と地方整備局の役割分担を説明。また、移管に伴い災害復旧制度が変更となり、補助率が従来の「2分の1」から、変更後は「3分の2」から「4分の4」までとなるほか、激甚法の対象にもなって国庫補助率が1~2割程度かさ上げになると解説した。

 道路事業は、国道4号のバイパス・現道拡幅事業を説明した。矢板拡幅は片岡地区ほかで用地買収、前岡地区で改良工事を実施し、中地区の用地買収にも着手する予定。矢板大田原バイパスは土屋地区で用地買収を実施し、西那須野道路は西富山地区の改良工事、三区町地区の電線共同溝工事、烏ヶ森公園の歩道橋工事を実施する。

 直轄権限代行で19年度に事業化した国道121号日光川治防災は、本年度も調査設計を実施するほか、工事用道路について県と相談して検討していく考えを示した。国土強靭化に関しては、関東地整管内の道路橋の修繕の状況を説明。関東地整は措置着手率が高いものの完了率が低調なことから、工夫して取り組んでいくと話した。

 建設業の担い手確保・育成では、本年3月に閣議決定された建設業法等の一部改正により、労働者の処遇改善や資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止、および働き方改革や生産性向上に関する取り組みが盛り込まれた。CCUSの活用促進は、都道府県発注でも何らかの企業評価で導入されており、市町でも取り組みが始まっている状況を説明した。

 盛土規制法では、規制区域の指定に向けた手続きが進んでいる状況と、これに伴い建設工事から発生する土砂の搬出先の明確化や、ストックヤード運営事業者登録制度などについても説明した。

 水資源機構は、思川開発事業で24年度に事業費約287億6000万円を確保してダム本体工事、導水施設工事、管理設備工事などを実施すると説明した。ダム本体は表面遮水工が完了しており、管理設備の工事も完了したら試験湛水を開始する予定。また、導水路・送水路工事における地質条件の変更などで計画の見直し手続きを進めており、事業費は約2100億円、工期は26年度概成へと変更になることが見込まれていると明らかにした。

 県からは、道路・交通事業で高規格道路の機能強化、広域道路網の整備、通学路の歩道整備など交通安全対策、中橋架替事業の推進、公共交通ネットワークの確保・充実、サイクルツーリズムの推進などの施策を説明。中橋架替事業や無人自動運転移動サービスの導入に向けた取り組みは、動画を用いて詳しく説明した。

 河川・砂防事業は、流域治水の普及促進や東日本台風からの早期復旧と再度災害の防止、さらには計画的な河川・砂防整備やソフト対策などを説明し、このうち巴波川の河川激甚対策事業を動画で詳しく解説した。

 意見交換では、関東地方整備局から無人自動運転移動サービスの取り組みや中橋架替に伴う通行止め・う回路などについて質問があり、県側が丁寧に回答した。

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