鹿行南部に新道路 検討委 潮来IC-波崎工団間を想定

[2020/6/27 茨城版]
 鹿行南部地区の道路構想具体化に向け、県や国交省、関係自治体らで組織する(仮称)鹿行南部道路検討委員会の第3回会合が24日、常陸河川事務所で開かれた。今回は、基本方針などを決定。それによると、潮来IC周辺と鹿島臨海工業地帯との速達性の強化を目的とした道路の計画の具体化が必要だとした上で、起終点は、潮来IC周辺から鹿島臨海工業地帯波崎地区工業団地周辺までに設定した。今後は概略ルート・構造を含め、計画の具体化に向けた検討を進めていく考えだ。

 鹿行南部道路検討委員会は、日本を代表する工業生産拠点の鹿島臨海工業地帯となっている重要港湾の鹿島港周辺や、カシマサッカースタジアム、鹿島神宮などの観光資源が多数立地する鹿行南部地域について、さらなる発展を図るために道路構想の具体化に向けた基本方針の検討を行うためのもの。14年2月に「鹿行南部地域交通課題検討会」として交通状況や土地利用、道路網の課題把握などを行ったあと、22年1月に第1回検討委員会が開かれ、基本方針の策定に向けて協議を重ねてきた。

 鹿行南部地区では現在、鹿島港外港地区国際物流ターミナル整備事業や洋上風力発電建設などの鹿島港を中心とする整備事業や、サッカースタジアムプロジェクトのような新たな観光資源整備などが構想され、周辺開発計画に伴う交通需要の増大が見込まれている。このうち、新たなサッカースタジアムについては、鹿島アントラーズFCが新スタジアム構想を発表し、26年をめどに新スタジアムについての方針を決定することしている。新スタジアムは、鹿嶋市内での建設を検討し、広域課題である渋滞問題など、課題解決に向けた検証を進めるとされている。

 道路交通の課題では、鹿島港周辺の交通集中があり、特に地域の幹線機能を持つ国道124号、水戸神栖線、鹿島港周辺道路に交通が集中。生活交通と物流関係車両双方の集中により渋滞が発生し、通勤時間帯における東関道水戸線潮来ICから鹿島港への所要時間は非混雑時間帯の約1.5倍を要する状況だという。

 このため、鹿行南部道路の整備により、▽鹿島港と高速道路ネットワーク直結による鹿島港の発展・物流強化・経済成長▽首都圏・北関東方面への物流機能強化と産業発展▽北公共埠頭と高規格道路の円滑なアクセスを確保し、今後の北公共埠頭の更なる産業・物流拠点▽企業活動の脱炭素化(高速アクセス性向上や渋滞改善による二酸化炭素排出量削減など)と、洋上風力関連企業の立地促進に寄与し、カーボンニュートラルポート実現への貢献▽津波浸水時における港からの緊急輸送ルートの確保▽交通分散による混雑緩和および潮来ICへの所要時間短縮──などが期待されている。

 今回策定した基本方針では、潮来IC周辺と鹿島臨海工業地帯との速達性の強化を目的とした道路の計画の具体化が必要だとした上で、起終点は、潮来IC周辺から鹿島臨海工業地帯波崎地区工業団地周辺までに設定。コンテナターミナルを有する鹿島港北公共埠頭と広域的な道路ネットワークのアクセス機能の強化が喫緊の課題だとして、検討の際には東関東水戸線および鹿島港北公共埠頭周辺へのアクセス機能を十分考慮するとした。

 ルートや構造の検討にあたっては、防災の観点も踏まえ、河川や電力施設等の既存インフラの機能に可能な限り影響を与えないよう努め、地域の分断や自然環境に考慮しつつ、地域産業に資する土地利用の促進に寄与する計画とする。

 基本方針の策定を受け、大井川和彦知事は、「基本方針が策定されたことは、高速道路計画の早期具体化に向けて大きな前進と捉えており、鹿島臨海工業地帯の国際競争力強化とカーボンニュートラル産業拠点の創出に大きく貢献するものと期待している」などとコメントした。

 今後は国、県、沿線自治体が連携し、鹿行南部道路の必要性などについて地域住民の理解を得られるよう積極的に取り組むとともに、地域とのコミュニケーションを行いながら概略計画の検討を進めるとしている。

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