国交省江戸川河川事務所 小池聖彦所長のインタビュー 水閘門改築に着手 流域全体で水害対策を

[2024/5/25 千葉版]

国交省江戸川河川事務所の小池聖彦所長

国交省江戸川河川事務所の小池聖彦所長

国土交通省江戸川河川事務所の新所長として、小池聖彦氏(56)が着任した。首都圏を流れる河川の維持管理を担い、「国だけではなく、県と市町村と一緒に水災害対策を進めていくことが大切」と語る小池所長に、流域自治体と連携した流域治水の取り組みや、江戸川水閘門の改築をはじめとした2024年度の主な事業について話を聞いた。

 ──就任の抱負を。

「江戸川河川事務所には、入省4年目の1994年4月から2年3ケ月つとめていたので今回が2回目。古巣に戻ってきた感がある。首都圏外郭放水路の整備に携わってきたが、事務所が所管する江戸川や中川、綾瀬川の3河川全体をみるのは初めて。歴代の諸先輩方が、これまで築き上げられてきた事業を受け継ぎ、あらためてしっかりやっていかなければと、身の引き締まる思いだ」

──思い出深い現場は。

「たくさんあるが、やはり最初に携わることができた首都圏外郭放水路の整備に、JVの方々に実際の施工について教えてもらいながら取り組んだことは良い経験となった。施工を担う建設会社のみなさんとのやりとりから学ばせてもらうことが多い」

「千葉県内の仕事は、前回とあわせ2回目だが、内閣府参事官補佐として2年間出向した際には、県庁で令和元年房総半島台風(第15号)の対応にあたり、霞ケ浦導水事業では関係者に大変お世話になった」

──地域との連携について。

「線状降水帯が停滞するなど、近年、気候変動の影響で雨の降り方が変わってきている。浸水被害が発生した中川・綾瀬川流域の“中川・綾瀬川緊急流域治水プロジェクト”はじめ、国だけではなくて、県と市町村と一緒に水災害対策を進めていくこと大切だ。流域自治体のほか、地域住民にも呼びかけ、ハードとソフト一体で“流域治水”に取り組みたい」

──今年度の主な事業は。

「新規採択された江戸川水閘門(市川市、東京都江戸川区)の改築事業や、市川市高谷地区におけるスーパー堤防の整備、野田市中野台地区での樋管改築や堤防整備に取り組む。江戸川水閘門(特定構築物改築)の改築では、1期工事として、新水門の一部と新閘門をあらたに整備する。工期は約45カ月、6月ごろの公告に向け準備を進めている」

──かわまちづくりについて。

「流域の自治体とは、自然環境に恵まれた川を軸として、憩いの場などとして活用できないかと話している。国交省では“かわまちづくり制度”に取り組んでおり、葛飾区中川のかわまちづくり計画をはじめ、川を活かしたまちづくりの取り組みを支援していきたい」

──心がけていることは。

「着任時に、“しっかりあいさつする、敬意を持って人に接する、何事も前向きに取り組む”の3つについて職員に話をした。あいさつすることで相手の様子もわかるし、敬意を持って接すると信頼関係が生まれる。仕事をしていれば、嫌なこともあるが、自分なりに工夫して、前向きに取り組めば楽しくなってくる。仕事の達成感や喜びを分かち合える職場を目指し、所内の雰囲気づくりに努めたい」

「特に、管内7出張所・1支所で工事の監督や施設管理を担う職員の話を十分に聞きたい。若手には、どういうものを、何のためにつくるのか、しっかり理解したうえで取り組むように話している。部屋にいて、机上で考えてばかりいては良いものは生まれない。忙しくても現場に足を運び、じっくり見るように伝えている」

──建設業界へのメッセージを。

「地域の安全が日々守られているのは、堤防などの整備や、除草・保守点検などの維持管理、調査・設計・測量に従事する建設に関わる企業のみなさんのおかげだ。建設業界では、技術者の高齢化や若手技術者の確保が課題となっており、令和元年房総半島台風での復旧復興活動はじめ、現場で取り組まれている活動をアピールするなど、建設業の魅力、やりがいを伝える取り組みを一緒に進めていきたい」

■プロフィル
こいけ・まさひこ 1967年12月生まれ。東京都東久留米市出身。東洋大学工学部土木工学科卒。91年4月、関東地方整備局河川部河川管理課に入省。河川管理課課長補佐、内閣府参事官補佐(風水害対策調整担当)、霞ケ浦導水工事事務所長など要職を経て2024年4月から現職。趣味はドライブや旅行。長期の休みには車で日本各地をまわる

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