楠山・須藤JVを選定 上大津統合小の基本・実施設計(土浦市)
[2024/3/20 茨城版]
土浦市は(仮称)市立上大津地区統合小学校の基本・実施設計に係る公募型プロポーザルについて、契約候補者に楠山・須藤JVを選定した。この設計では、校舎棟と体育館の新築に加えて、児童クラブと外構、既存建築物の解体などを行う。委託費の上限額は税込2億1452万2000円、履行期限は26年3月10日に設定していた。基本・実施設計策定後は、26-27年度の2カ年で建設工事を行い、28年度の開校を予定している。
この事業は、上大津地区の生徒数減少を受けて、上大津東小学校と菅谷小学校を統合するもの。統合の際には上大津東小の北側敷地1万1200平方mを取得して、既存施設との一体的な整備を実施していく。整備にあたっては、校舎と体育館の新築に加え、既存施設の解体工事を実施していく。
基本計画によると、メインコンセプトを「未来へ歩む地域とともに、子どもたちの成長と新時代の学びを支える学校」に設定。基本方針には、▽安心・安全な学校づくり▽新たな学びを積極的に取り入れた学校づくり▽心の豊かさを養う学校づくり▽地域に開かれた明るい学校づくり▽環境に配慮した学校づくり▽持続可能な学校づくり──を掲げた。
このコンセプトを踏まえて統合小では、ラーニング・コモンズを中心に児童同士、教職員、地域住民との交流・連携が図れる配置で整備していくことを明示。なお、同計画のラーニング・コモンズとは、学校図書室を核とし、多目的教室や地域開放を行う特別教室を一体的にゾーニングすることで、児童・生徒に加え、地域住民の学びの中心となるエリアを意味する。
整備にあたっては、校舎と体育館の新築に加え、既存施設の解体工事を実施していく。このうち、新校舎については既存施設の北側に配置する。新校舎棟の規模は約6900平方mを確保。内訳は、普通教室に2376平方m、特別支援教室に216平方m、特別教室に1080平方m、管理諸室に720平方m、共用部などに2500平方mを配分する。
また、体育館については当初、既存施設の長寿命化で対応する予定であった。しかし、体育館が隣接する東側の道路をスクールバスの進入路にすることに伴い、幅員を5mから9mに変更することを決定。これを受けて、体育館と道路との間が接近し、安全が確保できなくなる可能性があることから、体育館を新設することに変更した。
既存施設の活用は、校舎棟の一部(S造2階建て、延べ497平方m、14年建設)で長寿命化を行い、児童クラブに転用する計画。残りの施設については解体を行う。
工事手順については、既存の上大津東小が継続的に運用可能な計画を選択している。主な流れとしてはまず、同小北側の敷地拡張を行う。続いて新校舎と新体育館の建設を進める。その後、既存校舎の解体と児童クラブ改修を実施し、最後に既存児童クラブの解体とグラウンドの整備を行う見通しとなる。
概算工事費は23年1月時点で44億8400万円と試算した。内訳は工事費が36億3600万円で、設計・監理委託料が2億6800万円、調査・手続委託料が8900万円、外構工事費が3億7400万円、既存校舎の解体工事費が1億1700万円となる。なお、近年の物価の高騰などを踏まえ、概算費については基本設計内で再度、試算する予定だという。
プロポーザルには4者が参加。審査の結果、楠山・須藤JVの提案を選定することになった。
審査委員会の講評によると、同JVの提案は市の基本計画を踏まえ、地域と敷地の特性を活かした提案として全体的に高評価だったと指摘。ラーニング・コモンズを中心に学校と地域との繋がりを生み出しやすいゾーニング計画となっており、インクルーシブ教育の実現に向けて検討を進めることが期待できると評価した。
技術的には、1階をRC造、2階を木造とする立面混構造を採用。これにより、基礎に係るコストの低減や低炭素化への寄与に加え、木質空間により快適で親しみのある学習環境が提案されている。
設計の進め方については、ワークショップの具体的なイメージを提示。また、昨今の建設物価高騰に対応するため、早い段階からコストチェックを重ねることで、計画の実現可能性を高める姿勢も評価された。
今後のスケジュールとしては、24-25年度で基本・実施設計を策定する。26-27年度に建設工事を行い、28年度の開校を予定する。既存施設の解体は28年度中に実施する計画となっている。