全域を規制区域に指定 盛土規制法 25年度の運用開始へ準備(県環境森林部と県土整備部)
[2024/3/13 栃木版]
県環境森林部資源循環推進課と県土整備部住宅課は、盛土規制法の2025年度からの運用開始に向けて、この法律に基づく規制区域の検討や県土砂条例の見直しなどの準備を進めている。県土整備部では、24年度に部内へ盛土安全推進班を新設して準備を進めていくほか、6月頃にも宇都宮市を除く24の市町全域を規制区域に指定するための候補を公表する予定。また環境森林部では、県土砂条例から災害発生防止関連規定を削除するため、条例改正の手続きを24年度中に実施する。
本県では土砂の埋め立てなどに対し、土壌汚染や災害防止の観点から土砂条例を制定し、必要な規制を行ってきた。このような中、21年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害を受け、危険な盛土などを全国一律の基準で包括的に規制する「危険な盛土などを規制する宅地造成および特定盛土等規制法」(盛土規制法)が昨年5月26日に施行された。
このため県では、法律の経過措置期間を利用して、法に基づく規制区域の検討や土砂条例の見直しなど、25年度から法制度の円滑な運用の開始に向けた準備を鋭意進めている。
この法律は、盛土などによる災害から国民の生命・身体を守るため、「宅地造成等規制法」を法律名・目的も含めて抜本的に改正し、宅地・森林・農地といった土地の用途にかかわらず、危険な盛土などを全国一律の基準で包括的に規制する。
「スキマのない規制」としては、都道府県知事が盛土により人家などに被害を及ぼしうる区域を宅地造成等工事規制区域、特定盛土等規制区域という2つの規制区域のいずれかに指定し、それらの規制区域の中で行われる盛土などは都道府県知事の許可の対象とする。
「盛土等の安全性の確保」では、盛土などを行うエリアの地形や地質などに応じて災害防止のために必要な許可基準(主に技術的な基準)が法律に位置付けられており、許可基準に沿って安全対策が行われているか確認するために、施工状況の定期報告、施工中の中間検査、工事完了時の完了検査を実施する。
「責任の所在の明確化」は、土地所有者などが常時安全な状態に盛土を維持するための責務が法律上明記されており、災害防止のために必要な時は土地所有者だけでなく、原因行為者に対しても必要な是正命令が可能となる。
「実効性のある罰則の措置」は、罰則が抑止力として十分機能するよう、無許可行為や命令違反などに対する懲役刑および罰金刑について、条例の上限よりも厳しい水準の罰則が法律上位置付けられている。
本県の対応状況については、盛土規制法の執行体制を環境森林部と県土整備部の両部の共管として、24年度から県土整備部内に盛土安全推進班を新設して万全な準備を行っていくほか、市町と連携体制の構築を進めていく。主な役割として、県土整備部は法律に基づく規制区域の指定、許可等の関連事務(許可などに係る是正指導を含む)を、環境森林部は既存盛土の安全性を把握するための調査や、不法盛土への対応(無許可盛土などへの対応)を実施していく。
規制区域の指定は、国の基本方針に基づき、盛土などで災害が発生するリスクがあるエリアについて、隙間ができないよう宇都宮市を除く24の市町全域を、宅造規制区域または特盛区域のいずれかの候補区域として抽出を予定している。
今後のスケジュールは、引き続き市町との調整を行って本年6月頃に候補区域の候補を公表し、その後に法定手続きとなるパブリックコメントなどを行って、25年4月1日に規制区域を指定して法制度の運用開始を目指していく。
県環境森林部による県土砂条例の見直しでは、災害発生防止と土壌汚染の両面から盛土などを含む土砂の堆積について必要な規制を行ってきたが、このうち盛土などの災害発生防止について25年度から盛土規制法で対処することとし、条例から災害発生防止関連規定を削除する。一方の土壌汚染の防止は引き続き、条例により規制を行っていく。これら条例の改正は、24年度中に必要な手続きを実施する。