二軍施設移転で協定 守谷市とヤクルト 27年の供用開始目指す

[2023/11/15 茨城版]
 守谷市とヤクルト本社、ヤクルト球団は10日、市が整備する新総合公園内へのヤクルト球団二軍施設の移転について、関係者による協議が基本的な合意に達したことを受けて、県も加わった4者間での施設移転に関する基本協定を県庁で締結した。計画によると、ヤクルト本社は、新総合公園内に本球場とサブグラウンド、室内練習場を建設するほか、守谷SAスマートIC周辺土地区画整理事業予定地内の一部に選手寮やクラブハウスを建設し、いずれも27年の供用開始を目指していく。市では今後、総合公園整備へ用地取得の交渉や、パークPFIを視野とした可能性調査に着手し、24年度にも基本設計や造成工事に着手するもようだ。

 ヤクルト球団二軍施設の移転は、埼玉県戸田市にある現施設が完成後50年以上経過して老朽化が進んでいることなどから計画したもの。21年6月には、ヤクルト球団から守谷市に二軍施設移転計画の打診があり、22年4月から両者による協議を進めてきた。

 移転先となる市の新総合公園は、体育館の利用者が多いことや公園の不足、市内施設の設備不良などにより計画。建設地は、野木崎にある常総運動公園南側の敷地に決定した。昨年7月からは、オオバ(東京都千代田区)による基本構想・基本計画の策定に着手し、本年6月末までに作業を完了。全体敷地面積を20.8haとし、市が屋内運動施設や野球場、サッカー場(ラグビー場)など、ヤクルト本社が球団二軍施設を整備する。

 ヤクルト球団二軍施設は、約7万2000平方mの敷地を活用する。敷地内には、ナイター設備や3000席を有する本球場(建物:地上3階建て延べ5500平方m、フィールド:1万3750平方m、両翼100m、センター122m)と、サブグラウンド(建物:平屋延べ400平方m、フィールド:1万3250平方m、両翼100m、センター122m)、室内練習場(平屋延べ5900平方m、高さ22m)などを配置する。

 今回結んだ協定によると、ヤクルト本社が建設する本球場とサブグラウンド、室内練習場を守谷市に寄付したうえで、市は施設の営業権をヤクルト本社に付与することや、ヤクルト本社では守谷SAスマートIC周辺土地区画整理事業予定地内の一部用地を取得し、選手寮・クラブハウス(4階建て延べ4150平方m)を整備することなどを盛り込んだ。このほか、ヤクルト本社やヤクルト球団が認めた場合には、本球場とサブグラウンド、室内練習場をその他の者も使用できるとした。

 県庁で行われた締結式には、松丸修久守谷市長とヤクルト本社の成田裕代表取締役社長、ヤクルト球団の衣笠剛代表取締役会長CEO、大井川和彦県知事が出席した。

 松丸市長は、この日を迎えられたことを喜びながら、関係者一同の尽力に謝意を述べた。続けて、この協定を「新たなスタート」と位置付け、力を合わせながらスポーツ振興なども含めて邁進していく決意を示した。

 成田社長は、「27年のシーズン開始が今から楽しみ」と述べながら、関係者への謝意と喜びを語った。また、WBCや阪神優勝などの盛り上がりに触れて、「これからはこの施設を活用し、さらなる野球の盛り上げにも尽力していきたい。選手の育成と同時に、練習環境を整えることは球団を所有する企業の責任」などと述べ、スポーツを通じた振興と地域発展への貢献を誓った。

 衣笠会長は、27年3月中旬に開幕するファームの公式戦に間に合うよう、同年1月には完成を目指すとし、県民や市民と共に開業を待ち望む考えを示した。完成後には、「県のスポーツ振興にも積極的に携わらせて頂きたい」と話し、本県が主たる球場施設を有するプロ野球球団になることから、県民や市民に熱い支援と温かい声援を求めた。

 大井川知事は、本県は小中学生の体力が全国的にも高い一方で、アスリートが開花しないというギャップがある現状を紹介。県が進めている関連プログラムでは「出口が大事になってくる」として、サッカーは鹿島アントラーズがあるなど、「野球でも大きな目標ができるのでは」と述べ、BCリーグへの大きな刺激となることにも期待を寄せた。

 このあと行われた質疑では、衣笠会長が現在戸田にある施設移転の経緯について説明。施設の老朽化のほか、水害への懸念や700席しかない観客席などの3つの要因を挙げた。特に19年に発生した水害では、球場全体が4・5mほど水没する被害があり、現地や埼玉県内での施設更新も難しいことなどにより県外移転を決定したという。守谷市としたのは、沿線人口や神宮球場から近く利便性が高いところなどを挙げ、調査の結果「最適な環境にあった」と述べたほか、守谷ICスマートICが計画されるなど、今後はさらにアクセス性が高まることも期待できるとした。

 成田社長は、守谷市内にある強みを、「運動公園の中にあり、緑豊かな環境」と述べながら、「皆さまが楽しめる施設になればいい」と話した。衣笠会長も「プロ野球という醍醐味のある試合を見て頂きたい」と完成に期待を示した。

 このほか、市が整備する公園部分では、約3500平方mの屋内運動施設、約1万4000平方mの市民野球場、約1万平方mのサッカー場などを中心に、外構や駐車場などに6万8500平方mを充てる。サッカー場では、FIFAの規定に基づき公式試合も行えるような機能とし、野球場は高校野球などにも対応する施設とする。駐車場は約1000台分を見込む。

 市では今後、用地交渉やパークPFI導入に向けた民間事業者活用の可能性調査に着手する。調査が完了すれば、24年度中にも基本設計に着手するほか、用地取得が進めばヤクルト球団二軍施設部分を優先して造成工事も進める計画だ。

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