浸水要因は地盤沈下 堤防の嵩上げなど検討へ(牛久沼検討委)
[2023/11/7 茨城版]
牛久沼越水対策検討委員会(委員長:武若聡筑波大学教授)は2日、県薬剤師会館で第2回会合を開催した。今回は、氾濫事象の再現や越水被害の発生要因について議論を行った。シミュレーションの結果、浸水時に県が工事を進めていた八間堰水門の影響は主な要因ではないと指摘。浸水の主な要因は、経年的な地盤変動による堤防の沈下であったと想定した。今後は第3回検討会で越水防止対策を検討していく。主な内容としては、堤防の嵩上げなどの方針といったハード対策や、連絡体制強化などのソフト対策となる。第3回検討会は12月ごろに開催する予定だ。
この検討委員会は23年梅雨前線による大雨と台風第2号に伴い発生した牛久沼(谷田川)における越水被害について、越水発生の要因などを調査したうえで、総合的な対策を検討することを目的とするもの。組織は委員長の武若教授をはじめ、委員に堤盛人筑波大学教授、横木裕宗茨城大学教授、小渕康正国土交通省利根川下流河川事務所長で構成する。
あいさつに立った武若委員長は、第1回会合で検討した内容を説明したうえで、「本日は氾濫シミュレーションの結果を確認する。この結果を踏まえて、今後の越水対策に繋げていくことになる」と述べ、委員や関係者らに対して活発な議論を求めた。
今回の会合では、浸水シミュレーションを実施。牛久沼流域からの流出量を算出したうえで、八間堰水門で工事を実施していなかった場合を再現し、この工事の浸水被害への影響を確認した。
シミュレーションの結果によると、工事の有無による牛久沼の浸水範囲の差は約2%、平均浸水深の差は5cmという結果となった。そのため、浸水被害が確認された宅地部や農地において、水門工事を実施しない場合でも浸水があったと想定されるという。浸水発生の要因については、経年的な地盤変動による堤防の沈下だと示した。
堤防が沈下した箇所については、本年7月に実施したレーザ測量の結果、計画高水位であるYP7.5m以下に沈下していた堤防が牛久沼全域で6カ所あることが判明。具体的には、龍ケ崎市稗柄町で1カ所(最大マイナス0.29m)、同市佐貫町で1カ所(最大マイナス0.39m)、つくば市森の里で1カ所(最大マイナス0.46m)、八間堰水門下流で3カ所(最大マイナス0.68m)となる。
今後実施する越水対策として、ハード面では、沈下した箇所の堤防嵩上げや軟弱地盤対策、調整池・貯留浸透施設の早期整備が必要になるという。このうち、堤防嵩上げのイメージとしては、堤防高不足が判明した6カ所において、YP7.5m以上に嵩上げを行う。あわせて、地盤沈下を考慮し、余盛などの対策を実施する。嵩上げが困難な場所については、特殊堤(パラペット)の併用も検討していくことが示された。
堤防嵩上げをはじめとするハード対策の規模や事業期間については、現時点では未定としている。これは軟弱地盤対策を実施するかどうかで、工事の規模が大きく変わるのが理由となる。県としては、将来的には委員会の意見を踏まえながら、災害防止に向けた対策を早期に実施していきたい考えを示した。
ソフト対策については、考えられる内容として、▽監視カメラ、水位計の設置(増設)▽市町村との水防連絡体制の強化▽水防資材、ポンプ車体制の構築▽洪水浸水想定区域図の作成──などを盛り込んだ。
第2回会合について、若武委員長は浸水の要因のひとつとして、地盤沈下が挙げられることを確認したと説明。また、今回作成した氾濫シミュレーションモデルがさまざまな検証に耐えうるものだと指摘したうえで、「今後はこのシミュレーションモデルを使って、今後どういう対策を行えばよいのか、どういう対策が有効なのか、そういったことを検討していきたい」などとコメントしている。