創意工夫し模型地盤作製 液状化対策でコンテスト(地盤工学会)

[2023/10/28 千葉坂]

 地盤工学会関東支部(東畑邦生支部長)は、第16回ソイルストラクチャーコンテストを船橋市の日本大学船橋校舎で開いた。学生7チームと社会人3チームの計10チーム(約50人)が参加し、砂製の模型地盤を設計し作製。各々の発想力や設計力を駆使して創意工夫し、いかに液状化への対策効果があるかに加え、プレゼンテーションの能力を楽しみながら競い合った。

東畑支部長

東畑支部長


 同コンテストは、学生・社会人らで構成された各チームにより、指定された材料をもとに日頃から培った地盤工学の専門知識を披露するとともに、学生と社会人との交流の場として2006年度より実施されているもの。4年ぶりとなる現地会場で実施した今回のコンテストでは、参加者から好評だった「液状化対策工」が7年ぶりに復活。当日のくじ引きにより事務局が用意した指定材料と、各チームが持ち寄った2つの材料などを活用し、模型地盤を作製している。コンテストのテーマには仲間とチャレンジ!激しい揺れから建物を守れ!~「液状化対策工」~が掲げられた。
 開会にあたり、同コンテストのリーダー幹事を務める川崎地質の小林優起氏があいさつ。これまではリモートでも実施していたという同イベントが久方ぶりに現地で開催できることを喜ぶとともに、各自の健闘を祈念した。その後、応用地質の島崎章吾氏が今大会の規定などについて説明。参加者は、綿棒と不織布・スポンジいずれかの指定材料1つと自由材料2つと備品、土の手触り、研究成果などをもとに各チームで試行錯誤を重ね、プレゼン資料作成なども並行して進めながら模型を作製した。
持ち寄った素材を相談しながら活用し、模型地盤を作製していく

持ち寄った素材を相談しながら活用し、模型地盤を作製していく


 地盤材料の砂の試料は珪砂6号で統一され、対策材料を加工するための備品は、事務局から指定品が貸し出された。模型地盤は土槽により幅36.5cm、高さ19.5cm、奥行16cmとして作製された。審査にあたっては、完成した各地盤模型を振動台に移動させるとともに住宅模型を乗せる。その後、3段階の加振による載荷を通じて、レーザー変位計で住宅模型の屋上部分がどの程度に変位したかを測定し記録。変位量が少ないほどに高評価を獲得する。

 また、持ち時間2分のプレゼンはパワーポイントなどパソコンも駆使して各々が独自の工法などを説明。プレゼンの得点は参加者全員による自チーム以外への投票により決定している。

プレゼン後の加振審査で、参加者らは一喜一憂

プレゼン後の加振審査で、参加者らは一喜一憂


 コンテストでは、関東学院大学修士チームが総合優勝を達成。同チームは「対策効果」は千葉工業大学チーム・「プレゼン」は東京都市大Aチームに次いでいずれも2位だったものの、総合的な内容が評価されている。表彰式では東畑支部長が各1位チームに賞状、総合優勝した関東学院大学修士チームには賞状に加えてトロフィーも手渡し、会場からは大きな拍手が贈られている。
総合優勝を果たした関東学院大学修士チーム㊨

総合優勝を果たし、表彰状を受け取る関東学院大学修士チーム㊨


 続けて講評した東畑支部長は、コンテスト開催に際してのスタッフの尽力にねぎらいの言葉をかけると、学生ら参加者には「結果はそれぞれだが、試行錯誤へのプロセスを各々が考え、自分で成果を出す楽しみを知ってほしい」と説くとともに、同イベントで得た教訓や仲間をこれからの学業や仕事においても活用していってほしいと呼びかけている。これらを経て、同コンテストのもう一人のリーダー幹事となる関東学院大学理工学部の山口恵美氏が、来年のソイルストラクチャーコンテストのテーマも伝えつつ閉会を告げ、コンテストは幕を閉じた。

 表彰後、インタビューに応じた関東学院大学修士チームの川瀨優さんと小向春花さん、榎本拓朗さん、荻原進一さんの4人は、同コンテストに向けて用意していた工法のねらいが的中したことや、自由素材については発泡スチロールとカードケース以外にも複数の案を準備していたことが功を奏したことなどを振り返るとともに、他チームのアイデアには「とても大きな刺激を受けた」と目を輝かせながら口々に語り、今後の研究活動などに生かしていきたいと伝えてくれた。コンテスト後は、各校の教授ら関係者も交えた懇親会も催され、相互の親睦を深めている。

 参加チームは次の通り(順不同)。
▽都市大A(東京都市大学)▽都市大B(同)▽千葉工業大学▽関東学院大学4年(関東学院大学)▽関東学院大学修士(関東学院大学大学院)▽日本大学理工学部▽東海大学(東海大学都市建築学部)▽不動テトラ▽基礎地盤コンサルタンツ▽兼松サステック

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