民間にも適正工期を 関東整備局と茨建協で意見交換
[2023/11/1 茨城版]
国土交通省関東地方整備局(藤巻浩之局長)と県建設業協会(石津健光会長)は10月30日、水戸市内で意見交換会を開催した。会合では、最近の取り組みや活動状況などを互いに報告したあと、協会が提案した▽公共事業費予算の安定的・持続的な確保▽民間工事の適正な工期確保▽今後の建設業におけるSDGsの運用▽熱中症対策の更なる充実──の4つのテーマで意見を交わした。
この意見交換会は、県土木部も参加して毎年開催されているもの。受注者から実際の現場で起こっている実態を聴取し、整備局の施策などに反映させている。今回の会場となったホテル・ザ・ウエストヒルズ水戸には、藤巻局長や管内の関係事務所長ら整備局幹部と、茨建協の幹部のほか、県からは田村央部長ら土木部幹部が出席した。
議事を前に藤巻局長は、9月に発生した台風13号による県北地区での浸水や土砂災害に対し、被災地の対応に当たった協会員に敬意を表明。続けて、「安全安心を高めるインフラ整備を進めるため、何はともあれ予算確保を目指したい」と述べ、緊急経済対策や補正予算などを活用しながら、協会や県と共に取り組みを進める意向を示した。
来年4月に控える時間外労働の上限規制には、「あと5カ月しかないが、まだまだ改善できるところは残されている」と指摘。この会合を来年4月以降の発注の進め方について考える機会としながら、魅力ある建設業としていくため、協力を呼びかけた。
田村部長は、インフラ整備の担い手として重要な役割を果たしている地域建設業が、担い手確保などの問題に直面している状況を説明。県としては、適正な予定価格と工期設定、週休2日制促進工事の拡大やICT施工などに引き続き取り組む意向を示したほか、県が進める民間工事の工期適正化に向けた働き方について説明し、意見交換がさらなる連携を深める機会となることに期待した。
石津会長は、地域建設業の果たす重要な役割について説明する一方、資材価格や原油価格の高騰などで、先が見通せない状況にあると指摘。担い手確保や働き方改革、ICT施工などのDX対応が大きな課題になっているなか、時間外労働の上限規制には「全面適用で待ったなしの状況」として、国土強靱化も含めて、関係団体と連携しながら確実に進めていく考えを示した。
議事ではまず、整備局からの情報提供として、本年度の予算概要や上半期の執行状況、働き方改革と担い手確保への取り組み、インフラ分野のDX推進、総合評価方式の加点措置などについて説明。これに対して、協会からは活動状況の紹介として、災害時活動や生産性向上と働き方改革、担い手確保、イメージアップの各取り組みについて報告した。
このうち、協会の災害時対応では、台風13号による被害に対して昼夜を問わずに応急復旧作業に当たったことや、鳥インフルエンザ防疫業務では、22年11月から本年2月まで6つの農場などで協定に基づく対応を行ったことを紹介した。
意見交換では、協会から本年度のテーマに挙げられた4つの項目について、関東整備局の担当者が回答した。このうち、「民間工事の適正な工期確保」については、建設業の2024年問題を控えるなかで、公共工事の発注者からは一定の理解を得ているとしながら、民間工事では大変厳しい状況が多くあることを指摘。国交省として民間工事の発注者などに対し、適正な工期設定への注意喚起や指導助言を行うよう求めた。
これに対して整備局では、さまざな機会を通じて発注者や建設企業などに周知啓発を図っているほか、民間発注者に対する調査による工期の周知、管内の労働局などと連携した呼びかけ、駆け込みホットラインの違反疑義情報の収集などを行っていることを説明。本県での取り組みも横展開しながら関係機関と連携し、発注者や建設企業に対する必要な周知啓発を進めていくとした。
自由討議では、建設未来協議会の鈴木達二会長と人材開発委員の高橋修一委員長が意見交換にもテーマにあったSDGsへの取り組みを、建女ひばり会の柳瀬香織会長がさらなる女性活用などについて整備局の考えを聞いた。このうち、SDGsの認証には費用負担のない制度を求め、整備局では「どのような形があるのかを検討させていただきたい」などと回答した。
最後に、石津会長が地域建設業の窮状やインボイス制度などについて説明。地域建設業は、大手ゼネコンと比べて下請も含めて弱い立場にあるとして、こうした状況を踏まえた取り組みを要請した。藤巻局長は、「大手だけでなく、9月の局部災害で地域の守り手として頑張って頂いている皆さまの意見を受けながら、改善すべきところは改善しながら進めていきたい」などと応えた。