吊り天井対策が課題 公立学校の耐震改修実施状況(文科省)
[2023/9/23 茨城版]
文部科学省はこのほど、4月1日現在で公立学校施設の耐震改修状況フォローアップ調査の結果をまとめた。調査対象の公立学校施設(幼稚園、小中学校、高等学校、特別支援学校)の校舎や体育館などの非木造構造体の耐震化率は99.7%となり、前年の調査から0.1ポイント上昇した。本県では、高等学校や特別支援学校では100%を達成しているが、小中学校では99.9%、公立幼稚園では93.6%などとなっている。また、本県小中学校における体育館等の吊り天井等の落下防止対策では、全国で5番目に多い9棟が存在するなど、対策が課題となっている。
公立学校施設は、児童や生徒などが一日の大半を過ごす学習・生活の場であるとともに、災害発生時は地域住民の避難所となるなど重要な役割を担っている。建物の構造体の耐震化や非構造部材の耐震対策については、15年度におおむね完了した。ただし、同省ではその後の取組状況もフォローアップ調査し、調査結果として取りまとめている。
調査対象は、福島県の一部を除いた全国の公立学校施設で、調査項目は、▽構造体の耐震化状況(非木造/木造)▽体育館等の吊り天井等の落下防止対策状況▽体育館等の吊り天井等以外の非構造部材──などを対象としている。
今回の調査結果によると、校舎や体育館などの非木造構造体の耐震化率は99.7%となり、前年度から0.1ポイント上昇した。内訳は小中学校が99.8%、幼稚園が98.3%、高等学校が99.6%、特別支援学校が99.9%となった。耐震化が未実施の建物は、前年度から93棟減少して195棟(耐震化率は99.8%)となったほか、耐震化が未完了の設置者は前年度から18設置者減少して、残り47設置者となっている。
体育館等の吊り天井等の落下防止対策状況を見ると、対策実施率は前年度から0.2ポイント上昇して99.6%。体育館等の吊り天井等以外の非構造部材の耐震対策実施率は、前年度比1.9ポイント上昇して67.2%(耐震点検実施率は97.3%)などとなっている。
本県の状況を見ると、小中学校における体育館等の吊り天井等の落下防止対策では、全国に118棟ある対策が未実施の体育館等のうち、全国で5番目に多い9棟が存在している。このため、対策実施率も全国でワースト6番目の98.9%となった。
本県で100%に達していない自治体は、常総市と高萩市、常陸大宮市、小美玉市、阿見町、利根町の6市町。このうち、常総市と常陸大宮市では25年度中の事業完了を見込み、常陸大宮市では学校数が多く事業の平準化を図りながら進めてきたことを遅れている理由に挙げている。
完了時期が未定としている自治体のうち、高萩市では、改修範囲の広さを指摘しているほか、小美玉市では、統廃合について地域住民との調整に時間を要していることを挙げる。阿見町では、長寿命化改修工事等の大規模工事が多数予定され、全体の実施時期を調整検討しているとするほか、利根町では、町内小学校の統廃合を進めている状況で、統合後に耐震対策を進めていく予定だ。
一方、本県小中学校での非木造構造体の耐震化では、日立市に坂本中学校体育館の1棟が残っている状況だ。同市では市立学校再編計画を策定し、地域住民らの意見を踏まえながら統廃合などを進めているところ。坂本中学校では久慈中学校を受け入れ先とした統合計画があり、統合後の25年度以降に使用しなくなることから耐震化が完了する予定となっている。
文科省では、この調査結果の通知文において、構造体の耐震対策及び非構造部材の耐震点検・耐震対策が未実施の設置者に対して早期の対策完了を要請したほか、構造体の耐震化が未完了の設置者に対しては、個別に進捗状況を聴取し、設置者ごとの事情を把握しつつ早期完了を要請するなど、今後も構造体の耐震化の完了に向けたフォローアップを継続的に実施する。
老朽化した建物では、ガラスの破損や内外装材の落下など非構造部材の被害が拡大する可能性が高いため、安全確保の観点から非構造部材の落下防止を含めた老朽化対策の取り組みを支援し、非構造部材の耐震点検・耐震対策が未完了の設置者に対して、個別のフォローアップを実施するとしている。