捷水路工事着工へ 巴波川の激特事業 起工式で工事の安全祈願(栃木県河川課)
[2023/9/8 栃木版]
県は7日、一級河川巴波川地下捷水路本体建設工事の起工式を、栃木市河合町地先の同水路流出施設予定地で開催した。福田富一県知事や坂井康一県土整備部長をはじめ、国会議員、国土交通省、県議会議員、栃木市長、同市議会議長、地元関係者、施工者ら45人が出席し、鍬入れ式を執り行って工事の無事安全を祈願した。工事はこのあと、 流入施設の立坑工事などから本格的な地下捷水路工事を開始して、2025年度の完成を目指していく。
式にあたり、福田知事は「巴波川は栃木市街地に過去2度、大きな浸水被害を引き起こした。このため県では、巴波川の景観を保全しつつ水災害にも早く対応するため、地下トンネルによる捷水路を整備することとした。完成のあかつきには、流域住民と一体となって取り組む流域治水の基幹施設として機能することを期待している」とあいさつし、栃木市はもとより県の流域治水の要となることを期待した。
また、自由民主党幹事長の茂木敏光衆議院議員も「6月には国土強靭化基本法の改正を行ったところだが、引き続き国民の生命財産、住民の暮らしを守るために、防災減災、国土強靭化を一層進めていきたい。巴波川は古くから地域の物流を支える重要な河川だが、2度にわたり中心市街地が広範囲にわたり甚大な浸水被害を受け、治水対策が喫緊の課題となっていた。多くの文化財を有する栃木市の地域資源を守り、住民の安全安心を守るため県や地域と連携を図っていきたい」とあいさつし、国土強靭化による防災減災対策にまい進する考えを示した。
巴波川流域では、令和元年東日本台風の大雨で栃木市中心市街地区間が河川の溢水により約218haも水につかり、床上と床下あわせて2213戸が浸水する甚大な被害が発生した。また平成27年関東・東北豪雨でも、巴波川が流れる栃木市中心市街地で約171haが水につかり、床上と床下をあわせて1720戸が浸水する被害が発生した。
このように、流域の広範囲で幾度となく家屋浸水などの被害が発生している一方、巴波川は栃木市の重要な観光資源であり、沿川の嘉右衛門町などは「伝統的建造物群保存地区」に位置付けられ、河川沿いの歴史的建造物や景観、観光業への影響を考慮すると河川拡幅による改修は極めて困難な状況となっていた。
これらを踏まえて整備手法を検討した結果、道路の地下を活用した地下トンネルによる捷水路を整備する方針を固め、21年1月に国から河川激甚災害対策特別緊急事業が採択された。事業は栃木粕尾線の栃木市大町地先付近に流入施設、同市沼和田町地先に流出施設を設けて、直径5.5mの地下捷水路(延長約2344m)を整備する。
工事内容は、トンネル掘削を外径6mの泥土圧式シールド工法で行うほか、発進立坑築造工事はオープンケーソン工法で施工する。設計は三井共同建設コンサルタント(本社・東京都)が担当し、本体建設工事は奥村組・岩田地崎建設特定JVが施工する。総事業費は約153億円で、本体建設工事費は約96億円となっている。
巴波川の河川激甚災害対策特別緊急事業は19年度から対策の検討に着手し、20年度には対策方針を決定して事業に着手した。21年度は施設詳細設計や用地買収などを実施しており、22年度に 地下捷水路本体建設工事の技術提案型総合評価一般競争入札(技術提案型総合評価一般競争入札)を実施して、奥村・岩田地崎JVが落札した。
以後は準備工などを実施してきたが、今回の起工式を経て、このあと地下トンネル工事が本格的に着工となる。工事は3カ年で実施して、25年度内の工事完成を目指す。工事が完了すれば、東日本台風と同程度の洪水に対して床上浸水被害が解消できるとしている。