堤防高不足が判明 牛久沼越水対策検討委で初会合
[2023/8/10 茨城版]
牛久沼越水対策検討委員会(委員長:武若聡筑波大学教授)は7日、県竜ケ崎工事事務所で第1回会合を開催した。初会合となる今回は、被害状況や災害時の対応、八間堰水門の状況などを確認。このうち、牛久沼の堤防高については、計画高水位よりも低い箇所が複数あることが判明した。これらの箇所については今後、嵩上げなどの工事を実施する予定だという。今後は年内に2回の検討委員会を開催し、氾濫事象の再現や越水被害の発生要因などをまとめる考えだ。
この検討委員会は令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号に伴い発生した牛久沼(谷田川)における越水被害について、越水発生の要因などを調査したうえで、総合的な対策を検討することを目的とするもの。組織は委員長の武若教授をはじめ、委員に堤盛人筑波大学教授、横木裕宗茨城大学教授、小渕康正国土交通省利根川下流河川事務所長で構成する。
冒頭にあいさつに立った田村央県土木部長は6月3日の大雨において、特に牛久沼では、越水によって住宅地の床上・床下浸水など、甚大な被害が生じたことを紹介。続けて、検討委員会を設置した経緯と目的を説明し、「越水に対する事実確認や発生要因、今後の防止対策などについて、県としてどのように取り組んでいくべきか、委員の皆さまに議論をしてほしい」などと述べた。
武若委員長は「まずは牛久沼がどういう状況にあったか調べ、委員会で共通の認識を持つ。その後、どういった越水対策を行うのか、検討していくことになる」と述べ、関係各位に協力を求めた。
今回の会合では、牛久沼の概要や越水被害の状況、災害発生時の対応状況、八間堰水門の状況などを報告。このうち、牛久沼の堤防高についてはまず、越水した3カ所の確認を実施した。
その結果、現地盤高は龍ケ崎市稗柄町がY・P+7.25m、同市佐貫町が同7.11m、つくば市森の里が同7.04mとなり、いずれも計画高水位の基準となる同7.5mを下回っていることが判明。その後、県では牛久沼全域で堤防高の確認に着手した。現時点では牛久沼の下流部での測量が完了。それによると、下流部では越水はなかったものの、4カ所で計画水位を下回ることがわかった。
今後は下流部以外でも測量を進め、牛久沼全域の堤防高を把握していくことになる。なお、計画高水位以下の箇所の対応として、当面は大型土のう積みで暫定的な対策を行う。将来的には嵩上げなどの工事を実施することになるという。
検討委員会のスケジュールとしては、年内に2回の会合を予定する。第2回検討会では10月中の開催を予定し、氾濫事象の再現や越水被害の発生要因を検討していく。このうち、氾濫事象の再現では、コンピューターシミュレーションを用いて実施する。その際には、八間堰で水門更新工事を実施していなかった場合の水位も推算し、越水に八間堰の工事の影響があったかを検証していく。
第3回の会合は11月下旬ごろを予定し、今後の越水防止対策をまとめることを予定する。なお、嵩上げなどの対策工事については、検討の結果、緊急性が高いとの判断が出れば、集中的に実施していく可能性もあるとしている。
検討委員会について、武若委員長は「まずは何があったかを把握して、それをもとにコンピューターシミュレーションを行う。我々はシミュレーション結果が妥当かを判定し、妥当であるとすれば、今後の対策はどうすれば良いか議論していくことになる。この検討委員会で検討する内容が県土木部で進める治水対策に役立つよう取り組んでいきたい」とコメントしている。