流域治水で地域再生へ 大崎でイベント初開催 建設企業が協力(民間団体ら)
[2023/8/8 宮城版]
イベントを主催したのは、吉田川流域の大崎市鹿島台や大郷町、松島町に拠点を置く農業法人や福祉団体などで組織する「りゅうちるネットワーク」。国土交通省から流域治水オフィシャルサポーターに認定されている。
キックオフイベントは大崎市鹿島台の吉田川志田谷地防災センターで開催した。国土交通省北上川下流河川事務所や大崎市が後援。吉田川河道掘削協議会や鹿島台管内維持協議会などが協賛した。
あいさつで同ネットワークの早坂幸夫会長は、2019年の東日本台風で吉田川から越流して周辺が浸水被害に見舞われたものの、その後に河川改修が進められた結果、昨年の7月豪雨では水位が低く抑えられ「増水がなく大変ありがたく思っている」と感謝を表明。
ただし、流域の志田谷地地区などで住民が地区外へ移転するなどしているため、「この地域を元通りにしたい一心で取り組んでいる。河川管理はできなくとも、ごみ拾いなどのイベントを通じて地域の皆さんと一体となって取り組んでいきたい」と意欲を示した。
今回のイベントが最初の開催になることを告げた早坂会長は「今後もイベント活動を通じて河川を愛護していきたい」と述べ、国交省や企業などに対して引き続きの協力を求めた。
来賓では小野寺五典衆議院議員が「衆議院の区割り変更で鹿島台が私の地元になった」と紹介。これまで河川施設や農業用の排水機場など「造る方も管理する方もバラバラだった」が、吉田川と高城川が東北で初めて特定都市河川の指定を受け、各管理者が集まって計画を立てられるようになり、国もそれに対して補助率をかさ上げして後押しする体制になったため、「東北のお手本となるような流域治水の対策を行っていきたい」と意気込んだ。
排水機場は1.7倍の能力に改良へ
キックオフイベントでは最初に記念講演が行われ、北上川下流河川事務所の斉藤喜浩所長が「流域治水の取り組み」について、農林水産省北上土地改良調査管理事務所宮城支所の佐藤幸太郎洪水調節機能強化専門官が「内水排除対策の概要」について、それぞれ説明した。斉藤所長は、気候変動による降雨の変化や、吉田川流域の地形特性とこれまでの治水対策について紹介した後、流域治水対策として河道掘削や堤防整備、遊水地の整備、農水省と連携した排水機場の機能増強などを進めることを紹介した。
その上で「雨水浸透阻害行為の許可エリアを新たにかけさせていただいた。農地などを宅地に開発する方はご負担になるかもしれないが、全体が持続可能な地域で被害のないエリアにするためには必要なこと」と述べ、皆で一緒になって雨水タンクや雨水浸透桝の設置などに取り組むよう求めた。
佐藤専門官は、吉田川流域の19カ所に設けられた農業用の排水機場について、20年に1回に降る雨の確率で造られており、これを国営事業で「30年に1回の確率降雨に対して排水できるように造り変える」ことを伝え、流域全体で1.7倍のポンプ能力に改修する計画を伝えた。
具体的には排水機場の統合やポンプの改修、排水路の改良などを進める考え。国営の事業化に向けては本年度から土地改良事業地区調査を進めている。