事業費を200億円増額 思川開発事業 事業再評価で継続妥当(関東地方整備局)

[2023/7/6 栃木版]

 国交省関東地方整備局河川部は、2023年度第1回の利根川水系利根川・江戸川河川整備計画フォローアップ委員会(委員長・清水義彦群馬大学大学院理工学府教授)を鹿沼市で開催した。今回は水資源機構が実施している思川開発事業について、事業費が1850億円から2050億円に200億円増額することから再評価を行った。増額の主な要因は、各単価の上昇など社会的要因によるものや、工法の見直しなど現場条件の変更によるもので、あわせてコスト縮減にも取り組む。委員会は「事業の必要性は各都県の要望があり、事業は現段階は引き続き事業継続が妥当」と評価した。

 議事に先立ち、関東地方整備局河川部の藤本雄介河川調査官は「近年、地球温暖化による気候変動の影響で、毎年のように全国各地で水害が発生している。このような中、われわれは引き続き河川の治水・利水・環境とさまざまな観点から、河川管理施設がしっかりと機能を発揮できるよう、適切かつ着実に整備を進めていきたい」と話し、委員に忌憚のない意見を求めた。

 清水委員長も「議事の前に現場を確認し、進捗具合を実感した。非常に長い年月をかけて、ここまで事業を進めてきた。24年度完成ということだが、改めて思川開発事業の目的を踏まえながら、事業の再評価を行いたい」とあいさつした。

 議事は、水資源機構ダム事業部事業課の宇根寛課長が、思川開発事業について説明した。今回の再評価は、前回の再評価(19年度)から5年を経過していないが、事業費が当時の1850億円から2050億円に200億円増えることから、事業実施計画の変更に伴う再評価を実施する。

 増額する200億円の内訳は、社会的要因の変化によるものが約178億円と大半を占め、ほか現場条件の変更などによるものが約44億円。一方で、構造・施工方法を工夫するなど、約22億円のコスト縮減を実現する。

 社会的要因の変化については、公共工事関連単価が前回計画を変更した16年度から23年度までの単価変動実績をもとに、約158億円を増額する。労務単価や資材費、機械経費のうち、特に資材費が21年度以降著しく上昇している。消費税率は10%に引き上げたことで、約17億円増額。建設業の働き方改革に伴う週休2日工事の実施では、約3億円を増額する。

 現場条件の変更は、ダム本体について堤体材料や施工方法を変更することで、約10億円を増額する。表面遮水壁の裏込め材を河床砂礫のみから購入砕砂との混合材に変更したほか、ダム本体盛立時の転圧回数を当初の4回から6回に変更する。

 また導水路関連も、施工済箇所から発生する二次処理土(脱水ケーキ)から「ふっ素・ヒ素」の溶出が確認されたため、処理費用を約5億円増額。シールドマシンも地質条件の変化で、カッターヘッドの改良や部材の交換が必要となり、約16億円増加する。

 さらに、当初は計画していなかった管理用小水力発電設備を、経済性や大規模災害時の電源喪失に対応するため追加したたことで約8億円増加する。取水塔は、ダムの耐震性能照査に関する基準の変更に伴い、耐震検討結果を踏まえて下部の構造や配筋を変更したことで、約5億円増加する。

 一方、コスト縮減の方策としては、地すべり対策工を当初の鋼管杭から発生土を活用した押え盛土工法に見直したことで、約2億円縮減する。送水施設(南南摩揚水機場)は、受水槽方式からダム直結方式に見直し、受水槽を削減することで約6億円を縮減する。

 コンクリート遮水壁を保護するブランケット盛立は、水中の点検技術の向上などを考慮して特に注意が必要な部分に限定して配置することに見直し、約3億円を縮減。工事用道路計画は、付替県道からアクセスが可能となり見直したことで、約11億円縮減した。

 これらの変更により、費用便益比は全体事業で1・1、残事業で1・2と算出した。今後の対応方針は、現段階でも事業を巡る社会情勢や事業の必要性は変わっておらず、引き続き事業を継続することが妥当とした。

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