塚崎住宅跡地へ移転 杣井木川排水対策 中里と下泉で輪中堤整備(小山市)
[2023/6/29 栃木版]
小山市は、2015年9月の関東・東北豪雨で被害を受けた一級河川杣井木川で、排水強化対策事業を進めている。対象は中里地区・下泉地区・押切地区で、市治水対策課によると中里と下泉は輪中堤の整備、押切は防災集団移転促進事業を行う。移転事業の移転先は、旧県営塚崎住宅の跡地を候補地としている。
市は杣井木川流域や豊穂川流域の排水強化事業を進めており、県は杣井木川の排水機場のポンプ増設を行ったほか、排水機場付近で調節池の整備事業を進めている。県事業だけでは、関東・東北豪雨の実績降雨の場合に市目標の宅地無湛水を達成することが不可能と想定されるため、市でも別個に、杣井木川排水強化対策事業を行うこととした。
市の事業は、田んぼダムの整備のほか[1]輪中堤の整備[2]各戸嵩上げ等の整備[3]防災集団移転促進事業-の3つの対策方針案を計画した。市は3案について地元住民と協議を進めた結果、中里と下泉の2地区は輪中堤の整備、押切地区は防災集団移転促進事業の実施を決定した。
押切地区(28戸)の防災集団移転事業については、移転先を選定した後、市が住宅団地の用地取得や造成を行い、道路等の公共施設を整備する。移転者は移転先の土地購入や住宅建設を行い、市は住民の移転の支援、移転元地の土地の買い取りや建物補償などを行う。
移転先は、旧県営塚崎住宅の跡地を候補地とした。市は住宅団地の造成のほか、公共施設として道路、調整池、上下水道の整備を構想している。
23年度は、補償に向けた移転元地の測量や境界確認を行い、移転先整備に向けても予備設計を行う。24年度は移転元地の補償算定や移転先整備の実施設計の策定を行い、25年度は移転事業の計画書を作成して国に提出する。大臣からの承認を得られれば、26年度から移転先の整備工事に着手するとしている。
下泉地区・中里地区については、輪中堤を整備する。輪中堤は、低地の集落を囲むように設置される堤防で、県事業や田んぼダムの対策を行っても浸水する宅地箇所に盛土して輪中堤を整備する。輪中堤の整備が低い場合や、用地確保が困難な区間については、コンクリート擁壁などの構造物で対応する。
輪中堤の位置について、中里地区は一級河川永野川に南面するように設置し、下泉地区は杣井木川に西面するように設置する。23年度は整備位置周辺の測量や、輪中堤の基本設計および詳細設計を行い、輪中堤の高さや規模などの詳細について、設計を策定する中で決定する。
輪中堤の整備は、県の調節池の整備事業の進ちょく状況に合わせて進める。用地の買収に向けた用地測量を行った後、用地買収を実施して工事を行う計画となっている。