2カ年で基礎調査 盛土規制法の規制区域指定へ(栃木県住宅課)
[2023/6/9 栃木版]
2021年に静岡県熱海市で発生した土石流災害を受け、宅地造成等規制法が抜本的に見直され、宅地造成及び特定盛土等規制法として5月26日に施行された。この改正により、経過期間となる25年5月25日までに新たに「宅地造成等工事規制区域」と「特定盛土等規制区域」を指定し、その区域では盛土や切土、土石の堆積に関する工事で、規模により許可手続きが必要になる。県は区域指定に向けた基礎調査を、このほどパスコ(本社・東京都)に5000万円で委託。中核市の宇都宮市を除く県全域を対象に2カ年で基礎調査を実施して、規制区域の指定に向けた検討を行う。
基礎調査では、盛土等の災害リスクがあるエリアをできる限り広く規制区域に指定することが重要になることから、人命を守るため必要十分なエリアが規制区域に指定されるよう留意する。想定する災害は、主に地震や降雨による盛土等の表層崩壊や大規模崩壊、または盛土等の崩落で流出した土砂が土石流化する現象を想定する。
規制区域の考え方として、「宅地造成等工事規制区域」は都市計画区域(市街化区域や市街化調整区域)、または集落の区域などに該当する区域、「特定盛土等規制区域」はそれ以外の区域で土砂や土石流の流失により宅地造成等工事規制区域に影響を及ぼすと想定される区域の中から、盛土等に伴う災害が発生することがあり得ない区域を除いて設定する。
調査の手順は、「宅地造成等工事規制区域」が市街地・集落およびこれに隣接・近接する区域、「特定盛土等規制区域」はそれ以外で盛土等の流出により居住者に危害を生ずる恐れが特に大きいと求められる区域を抽出する。この中から盛土等に伴う災害が発生し得ない区域を除外して、各規制区域の候補区域を設定する。
基礎調査を実施した後は、関係市町村長に結果を通知するほか、規制区域の候補区域の範囲を図面で公表する。公表後は速やかに規制区域の指定の手続きを進め、指定後は概ね5年ごとに土地利用状況を確認して、規制区域の見直しなどの必要性を検討する。
今回の法律改正の主な内容は、「スキマのない規制」となるよう都道府県知事等が土地の用途にかかわらず、盛土で人家等に被害を及ぼしうる区域を規制区域として指定する。許可の対象は、農地・森林の造成や土石の一時的な堆積も含めて、規制区域内で行う盛土などとする。
また「盛土等の安全性の確保」のため、エリアの地形・地質等に応じて災害防止のために必要な許可基準を設定する。許可基準に沿って安全対策が行われているか確認するため、施工状況の定期報告、施工中の中間検査、および工事完了時の完了検査を実施する。
「責任の所在の明確化」では、盛土等が行われた土地について土地所有者等が安全な状態に維持する責務を有することを明確化。災害防止のため必要なときは、土地所有者等だけでなく原因行為者に対しても是正措置等を命令できることとする。
さらに「実効性のある罰則の措置」として、罰則が抑止力として十分機能するよう、無許可行為や命令違反等に対する罰則について、条例による罰則の上限より高い水準(最大で懲役3年以下・罰金1000万円以下・法人重科3億円以下)に強化した。
なお、盛土規制法に基づく規制区域が指定されるまで2カ年の経過措置期間は、旧法で指定されている宅地造成工事規制区域内の工事等の規制が引き続き適用される。旧法で規制区域が指定されている自治体は宇都宮市、足利市、鹿沼市で、この3市の規制区域内で宅地造成に関する工事を行う場合は各市に相談する。また中核市の宇都宮市でも、独自に新たな規制区域の設定に向けた基礎調査を本年度から実施する。