旧境小跡地周辺を提示 防災集団移転事業 下境地区の移転候補地(那須烏山市)
[2023/6/6 栃木版]
那須烏山市は、下境地内で計画している防災集団移転事業で、小規模相談会を4日に旧境保育園で開催した。市からは川俣純子市長が出席したほか、都市建設課が説明を行い、この中で移転候補地に旧境小学校跡地とその周辺を提示した。市は今後も地域住民に説明し、そこで出た意見を参考にしながら検討を進め、移転地を決めるとしている。
那須烏山市は、2019年に発生した東日本台風で被災したことから、下境地区や宮原地区で防災集団移転に向けた検討や地元との協議を進めている。下境地区は近年、おおむね10年に1回程度の頻度で住宅が浸水する被害が起きており、東日本台風では床上・床下浸水や道路冠水等が発生しているため、早急に防災・減災対策に取り組む必要があるとしている。
市は、宅地の測量調査を実施して高さを計測し、測量結果を基に洪水に対して危険性が高い区域一帯を災害危険区域に指定して、この区域で防災集団移転促進事業を進める。この事業は、一定の安全を確保できない住居を全戸移転するものとなっている。
移転先は▽災害への安全性を確保できる▽コミュニティを維持した集団移転が可能▽法規制等に沿って迅速で整備可能-を条件に検討した。ハザードマップの危険区域外でコミュニティ維持が見込め、市有地で新たに土地が取得する必要がないことから、市は旧境小学校跡地とその周辺の約1万2000平方mを候補地に選定した。
移転候補地では、アクセス道路の整備も構想している。候補地から北は、下境地内を南北に貫通する主要地方道那須黒羽茂木線に接続し、南は同県道と並行に通る市道浄土入山線に接続するとしている。
市民からは▽移転先の選択肢を増やす▽空き家を有効活用する▽移転スケジュールを早期に示す-などの意見が出たほか、候補地は下境地区の全世帯が移転できる規模ではないことも指摘された。市は、他の移転候補地についても検討を進めているという。
相談会では、下境地区の土地利用についての考えも提示された。那須黒羽茂木線から西で一級河川那珂川や荒川に挟まれた西地区や後石原地区、下境地内南の川辺地区については、土地利用を工夫するゾーンに設定した。住宅が水に浸かる危険性のあるエリアで、市は生活の場を維持するための取り組みなどを住民と検討する。
那須黒羽茂木線から東で、旧境小学校跡地とその周辺の移転候補地を含む上地区・尼寺地区・前石原地区などは、集落の維持を図るゾーンとした。危険性の低いエリアとなっており、土地利用を工夫するゾーンからの移転先確保などを検討する。
川俣市長は「市は住民が安心して暮らせる場所を確保できるよう、移転補償や住宅地造成などの財源について、国に対して補助の拡充を働きかけており、引き続き要望を続けていく」と、述べている。