発電施設の事業化検討 発電施設の事業化検討 堰堤維持費に約25億円(鬼怒川ダム管理)

[2023/6/2 栃木版]

 国交省鬼怒川ダム統合管理事務所の2023年度の事業概要によると、本年度は機器の老朽化対策など堰堤維持費に約25億2000万円を計上し、五十里ダムなど5つの施設を正常に機能させるため点検や修繕を行う。また、堰堤改良費には約1億1000万円を予算化して、川治ダム堆砂対策などの検討を行う。このほか、湯西川ダムではハイブリッドダムの取り組みとして、既設ダムへの発電施設の新増設の事業化に向けた民間事業者などの参画方法や、事業スキームなどについて検討を行うケーススタディを実施する。

 堰堤維持の主な内容を見ると、五十里ダムではクレストゲート設備を修繕する。クレストゲートは、想定以上の洪水時にダム天端からの越流を防ぐための非常用ゲートで、ゲートを操作する機側操作盤の老朽化が進んでいることから新しい機器へ更新する。更新する機側操作盤は3面で、第1四半期の発注を予定している。

 川治ダムでは、コンジットゲート設備を修繕する。コンジットゲートは洪水調節に使用するゲートで、開閉する油圧ユニットとそれを操作する機側操作盤の老朽化が進んでいるため、これらを新しい機器へ更新する。

 このほか、ゲート設備や電気通信設備、ダム本体などダム施設の点検整備を行って正常に動作させるとともに、施設の長寿命化を図る。また、ダム湖に流れ込んだ流木の回収を継続的に行う。

 堰堤改良事業では、川俣ダムの両岸の岩盤について岩盤変位計、ひずみ計で計測、解析を行いモニタリングする。川治ダムでは貯水池の堆砂が進行していることから、効率の良い土砂の撤去方法のほか、土砂受け入れ地や必要施設を検討する。

 ハイブリッドダムの検討では、管内の湯西川ダムを対象に、「既設ダムへの発電施設の新設・増設」への民間事業者などの参画方法や、事業スキームなどについてケーススタディを実施する。

 ハイブリッドダムは、治水対策とカーボンニュートラルに向けた取り組みの両立に加え、ダムが立地する地域の振興にも取り組むもの。国は治水機能の強化として放流設備の改造・嵩上げや堆砂対策などを実施し、民間は運用高度化などによる増電や発電施設の新設、増強を行う。また民間や自治体は、発電した電力を活用した地域振興に取り組む。

 本年度は既設ダムへの発電施設の新設・増設に向けて、民間事業者の参画方法や事業スキームについて検討する。現在発電に利用されていない湯西川ダムなどで、民間事業者の意見を聴取し、発電施設の新増設事業の実現可能性やスキームを検討して事業者の公募要領案を作成する。また川俣ダムや川治ダム、五十里ダムでは、洪水後期放流の工夫や非洪水期の弾力的運用で、既設ダムの運用高度化による増電にも取り組む。

 このほか同事務所では、カーボンニュートラルへの取り組みとして湯西川ダムの警報車に、関東地方整備局で初めてプラグインハイブリッド車を採用し、湯西川ダムの水力発電で生み出される電気で走行する。ダムの水中点検は、21年から水中ドローンを導入し、毎年操作講習会を実施している。

 同事務所では、鬼怒川上流部の五十里ダム・川俣ダム・川治ダム・湯西川ダム、および鬼怒川上流ダム群連携施設の5つの施設を一体として運用する「統合管理」を行っている。連携施設は五十里ダムと川治ダムを導水トンネルでネットワークし、五十里ダムで貯めきれない水を川治ダムで貯め置くことで、男鹿川や鬼怒川の流況改善に有効利用することを目的に造られた。

 統合管理は、4つのダムの能力、配列、位置関係、流域の地形的条件、降雨などの気象特性などを充分に把握し、これらの情報を統合して鬼怒川の高水(洪水)や低水(利水)管理を行うもの。光ケーブルをはじめ各種の無線回線を介して情報を収集し、ダム管理用制御処理設備(ダムコン)などで集約した情報を演算処理(予測計算)して、適切なダム管理を進めている。

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