計画段階評価に一歩前進 熊谷知事ら新湾岸道路で要望活動
[2023/5/31 千葉版]
慢性的な交通渋滞の著しい湾岸部で新たな自動車専用道路を早期に実現しようとして、新湾岸道路整備促進期成同盟会(会長・熊谷俊人知事)は5月30日、国土交通省で豊田俊郎副大臣(千葉選出)に要望書を手渡し、計画段階評価への着手などを求めた。副大臣との面談後、熊谷知事は「(新湾岸道路は)極めて優先順位の高い道路であり、早期の具体化をお願いした」と話し、「関係者を集めて来月にも会議を開くことを含め、着実に次の段階に進めたい」という言葉を副大臣から伝えられたことを明らかにした。
要望活動には、熊谷知事をはじめ、沿線6市の首長らが参加した。要望書は国土交通省で副大臣に手渡したほか、財務省と県内選出の国会議員に提出している。要望内容は新湾岸道路の関係で3項目、湾岸道路の渋滞緩和で1項目、道路事業などの予算確保で2項目となった。
要望に参加した関係者によると、県議や八千代市長を務めてきた豊田副大臣は、新湾岸道路に積極的に協力していく姿勢だったという。国と県、千葉市、NEXCOによる関係者会議を来月中旬にも開催し、概略ルートや道路構造の検討に向けた体制の整備について議論を開始することを明らかにした。
新湾岸道路に関する要望には、千葉県湾岸地区道路検討会が2020年に策定した「千葉県湾岸地域における規格の高い道路計画の基本方針」を踏まえ、ルートや構造の検討にあたって、千葉県三番瀬再生計画との整合性を図るとともに、地域の生活環境に配慮した計画とすることを盛り込んでいる。県三番瀬再生計画への配慮について、熊谷知事は要望後の会見で「地域の環境への配慮は、県も、沿線市も、国も、共通認識をもって臨んでいる。これを貫き、住民のみなさんにも丁寧に説明したい」と話している。
その上で、外環道の高谷ジャンクション周辺から京葉道路の蘇我インターチェンジ(IC)周辺、館山自動車道の市原IC周辺までの湾岸部において、多車線の自動車専用道路として、速やかに計画段階評価に着手し、早期に計画の具体化を図ることを求めた。加えて、湾岸部の都県間についても検討を行い、計画を具体化することを要望した。
計画段階評価では、解決すべき課題などを整理し、おおむねのルートや道路構造について、事業の効果や環境、費用などの観点から複数案を出し、それを比較評価して概略計画をまとめる。
期成同盟会は今月26日に、県と湾岸地域の千葉・浦安・市川・船橋・習志野・市原の6市で設立したばかり。湾岸地域には、京葉臨海コンビナートや国際拠点港湾「千葉港」、幕張新都心、広域防災拠点となる蘇我スポーツ公園、地域災害拠点病院、レジャー施設などが立地するほか、成田空港や港湾と都心を結ぶ重要な位置にある。
この地域一帯は、かねてより激しい交通渋滞に悩まされており、歴代の千葉県知事らが渋滞を解消するための新たな道路整備の必要性を訴えてきた。
いまの湾岸道路より海側には、第二湾岸道路が検討されていた。一般道路よりも構造・規模が大きい地域高規格道路の候補路線として1994年に指定され、国土交通省湾岸道路調査事務所が調査を進めていた。関連する計画が撤回されたことなどから、同事務所は2009年に廃止されている。
その後、国土交通省や県、千葉市らは19年に「千葉県湾岸地区道路検討会」を設置し、環境に配慮した道路計画の新しいあり方を踏まえながら、交通の状況や規格の高い道路の必要性などを検討している。国土交通省は21年に、広域的な道路交通の方向性を定める「新広域道路交通ビジョン」(関東ブロック)と、計画的な道路整備の基本となる「新広域道路交通計画」(同)を策定し、湾岸地域の高規格道路について、計画の具体化に向けた検討を進めることとした。