地元企業への発注を 県土木部が常陸河川に要望活動
[2023/5/27 茨城版]
県土木部は23日、国土交通省常陸河川国道事務所を訪れ、国の直轄工事における県内建設業者の受注機会の確保要請についての要望活動を行った。今回の要望では、県内に本店を有する建設業者への優先的な発注など5項目について要望を実施。田村央土木部長が日下部隆昭所長に要望書を手渡した。これに対して日下部所長は、地元建設業者が果たす役割の重要性を認識したうえで、工事の特性や地域の実情を踏まえつつ適切に発注していく考えを示した。
県土木部による県内建設業者の受注機会確保の要請は、県内を管轄する関東地方整備局の各出先事務所に対して例年実施しているもの。今回県土木部が要望した内容は、▽県内に本店を有する建設業者への優先的な発注▽自治体実績評価型や地域密着工事型の総合評価落札方式の積極的な活用▽総合評価落札方式における企業の信頼性社会性項目(地域精通度・地域貢献度)の高配点化▽県内の建設資機材の活用▽県内に本店を有する測量・調査・設計業者への優先的な発注──の5項目となる。
あいさつに立った田村部長は東日本大震災や令和元年東日本台風などの大規模災害や、鳥インフルエンザや豚熱をはじめとした防疫作業において、地元建設業が果たす役割が大きいことを指摘。その一方で、建設業界では担い手の確保や2024年問題など、課題が山積していることに触れたうえで、「我々土木部が発注する工事だけでなく、国が直轄する工事においても、県内業者の受注機会の確保など、特段の配慮をお願いしたい。本県はさまざまな課題を抱えているが、国と県で意見交換を行い、県内インフラの整備・管理が将来に向かって持続可能になるよう取り組みたい」と語った。
要望に対して、日下部所長は地域の建設業者について、社会基盤整備や維持修繕の担い手であると同時に、災害時には地域の守り手の役割を担っていると指摘。そのため、工事発注においても、将来にわたる品質確保や災害対応を含む地域維持の担い手確保への配慮が必要だとし、「工事発注にあたっては、工事の特性や地域の実情を踏まえつつ適切に発注していきたい」などとコメントしている。
要望に対する常陸河川国道事務所の昨年度の取り組み状況をみると、県内建設業者の受注機会の確保への対応として、地域密着工事型で20件(うち18件が県内企業)の契約手続きを行った。また、自治体実績評価型(自治体実績チャレンジ型)は2件(うち2件が県内企業)、地域防災担い手型は10件(うち10件が県内企業)、地域防災実績評価型は14件(うち10件が県内企業)となる。
すべてを合計すると、昨年度に契約手続きを行った66件の工事のうち、42件で県内企業が受注した。県内企業がメインで受注する工種である一般土木Cや維持修繕、アスファルトB、造園などに占める割合をみると、45件中42件の93%という結果になっている。
このほか、建設業界への若年入職者の減少による技術者不足や高齢化対策として、若手技術者活用評価型38件、ICT活用工事32件(うち発注者指定型13件)、監理技術者育成交代モデル工事3件で実施している。
また、同事務所では県内企業の受注機会の確保の取り組みとして、8月から企業能力評価型を新たに導入することを説明。これは地域インフラを支える担い手としての企業の確保や受発注者の事務手続きの軽減などをより推進するもの。具体的には、近隣の施工実績や災害協定の締結といった地域精通度などの配点割合が高くなっている。同事務所では今後もこうした取り組みを推進し、県内企業が優先的に受注できるよう努めていく考えだ。
以下、要望書の内容は次の通り。
【県内建設業者等の受注機会の確保等に関する要望】
本県では、東日本大震災や関東・東北豪雨、令和元年東日本台風などの大規模災害からの復旧・復興を早期かつ着実に実施するとともに、施設の耐震化など防災・減災、国土強靭化に資する社会資本整備を進め「災害・危機に強い県づくり」に全力で取り組んでいる。このような中、災害発生後における被災箇所の迅速な復旧や二次災害の防止、鳥インフルエンザなどの防疫作業において、建設業者が大変重要な役割を果たしていることから、本県における災害対応の強化を図るためには、県内建設業者の育成支援が重要であることを改めて認識している。
その一方、建設業を取り巻く状況は、2024年問題を含めた働き方改革への対応が喫緊の課題であるほか、若年入職者の減少や高齢化による担い手不足、資材価格の高騰などの問題も抱えており、本県では県内の経済対策、雇用対策および地元業者育成の観点から、県内建設業者の受注機会の確保に努めているが、今後さらなる広範な対応が必要と考えている。
ついては、本県内で予定されている貴所所管の直轄工事においても、県内建設業者の受注機会を確保するため、県内に本店を有する建設業者への優先的な発注、本県の工事成績評定点と表彰を評価する自治体実績チャレンジ型や地域密着工事型の総合評価落札方式の積極的な活用、および総合評価落札方式における企業の信頼性社会性項目(地域精通度・地域貢献度)の高配点化、県内の建設資機材の活用などについて、特段の配慮を要望する。
また、測量・調査・設計業務においても、県内業者への発注について、特段の配慮を要望する。