発電施設の新増設へ ハイブリッドダム 湯西川ダムなどで事業検討(国交省)

[2023/5/17 栃木版]

 国交省は「ハイブリッドダム」の取り組みとして、本年度は「既設ダムへの発電施設の新設・増設」と「既設ダムの運用高度化による増電」に取り組む。このうち既設ダムへの発電施設の新設・増設では、事業化に向けて本県の湯西川ダムなど国交省が管理する3ダムを対象に、民間事業者などの参画方法や事業スキームなどについて検討を行うケーススタディを実施する。

 「ハイブリッドダム」は、国交省が近年の水害の激甚化・頻発化を踏まえた治水対策とともに、2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させるため、治水機能の強化と水力発電の促進の両立に加え、ダムが立地する地域の振興にも官民連携で取り組んでいる。

 国などは治水機能の強化として、運用高度化による治水への有効活用や放流設備の改造・嵩上げ、堆砂対策などを実施。民間では水力発電の促進として、運用度化などによる増電や発電施設の新設、増強を行う。また民間や自治体は、地域振興として発電した電力を活用したダム立地地域の振興に取り組む。

 ハイブリッドダムの手法は、洪水後期の放流の工夫や非洪水期の弾力的運用をはじめ、既設ダムへの発電設備の新設・増設、および堤体のかさ上げといったダム改造や多目的ダムの建設などで、それぞれ水力発電を実施するものとなる。

 本年度の取り組みは、既設ダムへの発電施設の新設・増設として、民間事業者の参画方法や事業スキームについて検討を行うため、現在発電に利用されていないダム下流への補給水(利水や河川環境の保全等に利用)を活用することで増電が期待できる湯西川ダム(栃木県)、尾原ダム(島根県)、野村ダム(愛媛県)を対象にケーススタディを実施する。

 このケーススタディは、発電施設の新増設などをしようとする民間事業者の意見を聴取した上で、発電施設の新増設の事業の実現可能性やスキームを検討し、事業者の公募要領案を作成するもの。その上で、この3ダム以外のダムも含め、24年度以降に事業に参画する民間事業者の公募を行うダムの選定を進める。

 湯西川ダムは総貯水容量7500万立方mで、管理用発電施設を有している。国交省では近年の流況から、3ダムそれぞれで数百から1000程度の最大出力、3ダム合計で一般家庭約5000世帯の年間消費電力量に相当する年間約2000万h程度の増電を想定している。

 このほか、洪水後期放流の工夫や非洪水期の弾力的運用で、既設ダムの運用高度化による増電に取り組む。22年度には国交省管理の6ダムで計8回の試行を行い、一般家庭約500世帯の年間消費電力に相当する215万hの増電が図られた。

 そこで23年度は、本県の川俣ダムや川治ダム、五十里ダムなどを含め、国土交通省と水資源機構が管理する計72ダムに試行を拡大する。それぞれのダムで年1回、前年度試行したダムと同程度の増電を実施した場合を仮定すると、その増電量は約2000万hと想定されている。

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