15カ所に約42億円 事業概要 華厳上流や高徳で堰堤工(日光砂防)
[2023/5/12 栃木版]
国交省日光砂防事務所は、2023年度の事業概要を公表した。本年度は堰堤工9カ所と床固工2カ所、山腹工4カ所の計15カ所で事業を計画し、事業費は当初予算と補正予算をあわせて対前年度比5.6%増の42億8000万円を計上する。本年度の重点事業は、日光市街地と世界遺産を土砂災害から保全するため稲荷川山腹工整備事業や華厳上流砂防堰堤整備事業などを実施するほか、土砂災害から「いのち」と「くらし」を守るため高徳地区砂防堰堤群整備事業など、また土砂・洪水氾濫被害の防止・軽減のため大谷川流域施設改築事業などに取り組んでいく。
同事務所の管内は世界有数の観光地である一方、急峻な地形と日光火山群からなる脆弱な地質、厳しい気象条件で荒廃が著しく、過去に度々大規模な土砂災害が発生してきた。さらに近年、土砂災害が激甚化・頻発化しており、土砂災害から地域を守り安全・安心な社会を構築するため、砂防堰堤や山腹工などの整備を進めている。
本年度の予算は、当初予算が32億9500万円で前年度から7.0%増加し、補正予算も9億8500万円と前年度から0.7%増加したため、合計では前年度を2億2500万円、率にして6.6%上回った。
同事務所の事業のうち、大谷川流域では上流部が火山地帯のため急峻な地形や脆弱な地質で形成されており、多数の崩壊地が存在していることから、渓流の土砂流出を抑制するため砂防堰堤や山腹工の整備を進め、市街地や観光資源、重要交通網を保全する。また、老朽化した砂防堰堤の補強・保全を実施し、砂防施設の機能維持を図る。
鬼怒川流域も、上流部は大谷川と同様に多数の崩壊地が存在しており、山間部に点在する集落の災害時の孤立化を防止するため砂防堰堤や山腹工の整備を進めるほか、老朽化した砂防堰堤の補強・保全を実施する。あわせて下流部でも、土砂災害から住民の生命や財産を守るとともに避難経路を確保するため、砂防堰堤の整備を進める。
男鹿川流域では、各渓流に2015年9月の豪雨災害で流出した不安定土砂や流木が多く堆積していることから、災害時の交通網寸断による山間部の集落の孤立化防止などのため、砂防設備の整備を進める。
主な事業を見ると、稲荷川山腹工整備事業は稲荷川の源頭部に大鹿落しをはじめ多数の大崩壊地が存在し、土石流で甚大な被害が発生しているため、稲荷川下流にある日光市街地や世界遺産「日光の社寺」などへの土砂災害の防止を目的に、山腹工の整備を引き続き実施する。
華厳上流砂防堰堤整備事業は、大谷川上流域が火山性の脆弱な地質で形成されているため荒廃が著しく、大谷川で土砂災害が発生すると下流の日光市街地や世界遺産「日光の社寺」などに甚大な被害が生じる恐れがあることから、土砂災害の防止を目的に砂防堰堤の整備を本年度も実施する。
高徳地区砂防堰堤群整備事業は、高徳地区に土石流危険渓流に指定された渓流が複数あり、土砂災害警戒区域には多数の人家や重要交通網の国道121号があることから、土砂災害から地域住民を守り、国道121号を保全するため、砂防堰堤や管理用道路の整備を実施する。
大谷川流域施設改築事業は、大谷川の砂防設備が大正時代から整備され、老朽化した砂防設備が多数存在していることから、改築を行い機能を維持することで土砂災害から地域住民を守り、地域交通網を保全する。本年度は小米平上流砂防堰堤の改築を実施する。
本年度の流域別の事業箇所は次の通り。
【大谷川】
▽馬返山腹工(日光市細尾町)=山腹工
▽稲荷川山腹工(日光市日光)=山腹工
▽荒沢砂防堰堤群(日光市日光)=砂防堰堤工
▽華厳上流砂防堰堤(日光市中宮祠)=砂防堰堤工
▽所野地区砂防堰堤群(日光市所野)=砂防堰堤工
▽大谷川流域施設改築(日光市日光)=砂防堰堤工
▽大谷川床固群(日光市所野)=床固工
【鬼怒川】
▽ワミ沢山腹工(日光市上栗山)=山腹工
▽野門沢山腹工(日光市野門)=山腹工
▽鬼怒川流域施設改築(日光市川俣)=砂防堰堤工
▽野門沢砂防堰堤(日光市野門)=砂防堰堤工
▽高徳地区砂防堰堤群(日光市高徳)=砂防堰堤工
▽湯沢砂防堰堤群(日光市川俣)=砂防堰堤工
【男鹿川】
▽芹沢床固群(日光市芹沢)=床固工
▽上三依砂防堰堤群(日光市上三依)=砂防堰堤工