経営者と若手にズレ 本県建設業の現状分析を公表(CIIC)

[2023/4/20 茨城版]
 建設業情報管理センター(CIIC)はこのほど、地域建設業のあり方に関する調査研究タスクフォース(茨城県)報告書を公表した。この報告書では、担い手確保や働き方改革といった建設業の課題について、アンケート調査などを実施して、問題点を分析した。その結果、経営者と若手就業者の間に認識のズレがあることが判明。このほか、働き方改革に必要な条件や、本県在住者からの建設業のイメージなども分かった。県では、今回の調査結果を踏まえ、業界のイメージアップや就業改善などの取り組みに役立てていく考えだ。

 CIICは、都道府県からの要望に応え、建設産業行政をサポートすることを目的に「地域建設産業のあり方検討委員会」を10年度に設置。22年度には本県をモデル都道府県に選定し、県勢と建設業の現状分析に特化した調査研究タスクフォース(座長・中川雅之日本大学教授)を設置して報告書を作成することになった。

 その際には本県の課題である若年層の担い手確保や、今後の働き方改革への対応に取り組むことを明記。そのため、タスクフォースでは、建設業を取り巻く環境変化や課題の現況を分析した報告書を取りまとめている。調査では経営者(データ数441票)や、10代~30代の若手就業者(同132票)へのアンケートに加え、本県在住者へのイメージ調査(同720票)、関係者へのインタビュー調査などを行った。

 調査の結果についてCIICは、「担い手の確保・育成」と「従業員の就業環境」、「建設業のイメージアップ」の3項目にまとめ、分析を行っている。

 このうち、「担い手の確保・育成」の項目では、企業と就業者の考えや、不満を抱えている内容の認識にズレがあると指摘した。具体的には、人材不足の原因として、若手は「休日の少なさ(70.5%)」や「3Kのイメージ(65.9%)」、「労働時間が長い(50.8%)」、「建設業への関心が低い(47.7%)」が上位を占め、その次に「給与・待遇面で劣る(42.4%)」、「建設業の社会的役割や魅力が伝わっていない(33.3%)」と続く。一方、経営者からは担い手確保の重要な要素として、「給与・賃金(81.6%)」、「休日・労働時間(64.5%)」、「仕事のやりがい(47.9%)」の回答が多く、「業界のイメージ向上(13.1%)」の回答は少なく、若手と経営者の認識にズレが生じている結果となった。

 このズレに対応するため、人材採用の観点からは、技術や専門性が身に付き、資格取得など成長できる環境が用意されていることや、会社の雰囲気をアピールすることも重要だと指摘。また、離職対策の観点から、給与面に加え、それ以外の要素も重要視していることがうかがえるため、労働時間の削減や休日の確保など、若手側が重視している環境を整備することが重要だと示した。

 「従業員の就業環境」のうち、働き方改革を実施する上で必要な条件として、「発注者への提出書類の簡素化・削除(71.9%)」、「発注者による適切な工期の設定(66.5%)」、「発注者による適切な経費の反映(64.9%)」など、発注者側への理解を求める声が多かった。その一方、ICT技術を活用した生産性の向上については、経営上の問題や働き方改革を実施する上での必要な条件、県に力を入れてもらいたい支援施策のいずれのアンケート結果においても回答の割合は低いという結果になった。

 そこで、今後の課題として、ICT技術を活用した取り組みによる働き方改革や生産性向上の効果を周知し、取り組みを普及・促進していく必要があると指摘。あわせて、建設業にはツールの導入だけでなく、ITリテラシーの高い人材を確保することが必要と言及している。

 「建設業のイメージアップ」については、在住者の約6割が建設業に良いイメージを持っており、その半数以上が建設業の役割について、正しい理解を持っていることが分かった。しかし、その一方、約9割が就職先として建設業に自分が就きたくない、または家族・親戚に就かせたくないと回答。その理由は「体力的につらそう」や「危険そう」が上位を占めた。従来のイメージ改善に向けて、学校への出前授業やインターンシップ、現場体験学習会など、直接的に建設業に触れる機会が望まれていると指摘。また、建設業には高い専門性や公共性が期待されていることを踏まえ、職業としての魅力や重要性を積極的に打ち出していく必要があると示した。

 県監理課の担当者は、今回の調査によって、本県独自のデータを得ることができたことが収穫だと説明。これにより、これまで進めてきた働き方改革や担い手確保などの取り組みについて、数値的な裏付けをとることが可能になったという。

 また、通常のアンケートとは異なり、若手就業者や業界の外にいる人の声を拾うことで、さまざまな視点から業界の現状を把握することも可能になったと指摘した。今後は「この調査結果を業界全体で共有し、建設業のイメージアップや就業環境の改善に役立てていく」などとコメントしている。

 なお、今回の調査結果については、CIICのホームページで閲覧することができる。

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