6ブロックに広域化 生活排水処理構想案 普及率を26年度に91.2%へ(県都市整備課)
[2023/2/3 栃木版]
県都市整備課下水道室は、新たな県生活排水処理構想(案)を公表し、パブリックコメントで県民から意見を募集している。従来の県生活排水処理構想を見直して、県全体の生活排水処理人口普及率の目標を設定したほか、「広域化・共同化」に向けて最適な汚水処理の構築を計画している。それによると、生活排水処理人口普及率は、短期目標の26年度に91.2%、中期目標の35年度に94.7%、長期目標の50年度に98.5%を設定。広域化・共同化は県内を▽県北▽塩谷▽県西▽県南▽県東▽宇都宮・小山-の6ブロック割とし、ハードの統廃合により30年間で汚水処理施設の46施設を廃止する。 =2面に広域化・共同化計画のハードの統廃合スケジュール
統廃合で汚水処理46施設を廃止
本県の生活排水処理人口普及率は2021年度末で88.8%と、全国平均の92.6%に比べ整備が遅れており(全国25位)、また既存施設の維持管理や更新などの持続可能で安定した運営管理も必要になっている。こうした中、15年度に県生活排水処理構想を策定し、生活排水処理施設の整備を実施してきた。
今回は、これまでの社会・経済情勢の変化をはじめ、18年1月に総務省、農水省、水産庁、国交省および環境省から「広域化・共同化」のさらなる推進を求められたことなどを踏まえ、県生活排水処理構想を見直す。あわせて、SDGsにも積極的に取り組む。
目標年度は、国が目指している10年概成と整合を図り、短期的な目標として4年後の26年度、持続的な汚水処理システムの構築を目指した維持管理体制のあり方を示す中期的な目標として13年後の35年度、長期的な目標として28年後の50年度を設定した。
県内25市町の現状は、21年度末で流域下水道事業を4流域6処理区、公共下水道事業を24市町、農業集落排水事業を20市町、コミュニティ・プラントを1市、個人設置型浄化槽の整備事業を25市町で実施している。
21年度末の生活排水処理人口普及率は、県全体で88.8%(下水道68.9%、農集排4.0%、コミュニティ・プラント0.1%、浄化槽15.8%)に達し、生活排水未普及率は11.2%になる。
本県の総人口は05年をピークに減少傾向に転じ、21年で193.5万人となっている。50年度には161.6万人まで16.5%減少する見込みで、地域により現在の半分程度となる市町も見受けられる。また浄化槽は、21年度末時点で県内には約4万8000基の単独処理浄化槽が残存しており、これらを合併処理浄化槽へ転換する必要があるが、個人負担が大きいことから整備が鈍化している。
下水道施設は老朽化が進んでおり、持続可能な経営を確保していくために効率的な施設の更新や改築を行い、安定した維持管理を行っていく必要がある。さらに、下水道事業では多くのエネルギーを使用するとともに多量の温室効果ガスを排出しており、下水処理場を核とした地域におけるエネルギー対策と地球温暖化対策に取り組んでいく必要がある。
これらの課題を踏まえて、施策には▽広域化・共同化計画の推進▽浄化槽の整備▽汚泥の有効利用▽県民への啓発活動-の4つを位置付けた。
生活排水処理施設整備計画で、構想見直しにおける処理区数は、現況の173処理区から50年度には128処理区に減少する予定。下水道施設は2市で他の単独公共下水道への接続により処理区の変更を予定し、農業集落排水施設は11市町で下水道への接続により農業集落排水の処理施設の統合を、1市で農業集落排水同士の接続により処理区の変更を予定している。集合処理(合併処理浄化槽)施設は、1市で下水道への接続により処理区の変更を予定する。
生活排水処理人口普及率の目標は、短期目標の26年度に91.2%、中期目標の35年度に94.7%、長期目標の50年度に98.5%、最終目標として100%と設定するよう見直す。50年度には、生活排水処理人口普及率が95%以上となる市町が22市町となる。
広域化・共同化計画を見ると、21年度末で本県にある汚水処理施設は、下水道45施設、農業集落排水94施設、その他集合処理29施設の合計168施設あり、し尿や浄化槽汚泥を処理するし尿処理施設も13施設ある。
広域化・共同化のブロック割は、県が地理的要因を考慮し既存の汚水処理事業など(流域下水道の処理区域、し尿処理の広域行政事務組合)の枠組みを基に案を作成し、県内を▽県北(大田原市、那須塩原市、那須烏山市、那須町、那珂川町)▽塩谷(矢板市、さくら市、塩谷町、高根沢町)▽県西(鹿沼市、日光市)▽県南(足利市、栃木市、佐野市、壬生町)▽県東(真岡市、益子町、茂木町、市貝町、芳賀町)▽宇都宮・小山(宇都宮市、小山市、下野市、上三川町、野木町)-の6ブロックに決定した。
各ブロックでハードの統廃合を具体的に検討した結果、長期に定める30年間で統廃合により廃止が予定されている汚水処理施設は合計46施設(下水道2施設、農業集落排水43施設、集合処理〔合併処理浄化槽〕1施設)となる。下水処理場でし尿汚泥の受入れが予定されているし尿処理施設は6施設で、広域化.共同化による県全体の事業効果は年間12.6億円程の事業費削減につながる。
進行管理は、成果指標を設定し実施状況を評価していく。また、生活排水処理事業を進めていくには県民の理解と協力を得ることが重要となるため、生活排水処理構想の内容や目標に対する進行状況を公表・周知し、構想の見える化を図る。
今回の構想は、県が示す「基本的な考え方」を基に市町ヒアリングを実施し、市町ごとに作成した構想原案を取りまとめ、パブリックコメントを実施して策定している。今後は今回のパブリックコメントも踏まえ、3月に構想を策定して県議会県土整備委員会に報告し、その後住民に公表する。