最有力は大貫台地区 消防本部移転の基本構想を公表(大洗町)

[2022/12/20 茨城版]
 大洗町は15日、町消防本部庁舎改築工事基本構想案を公表した。それによると、建設候補地については4カ所を選定し、検討委員会の評価では大貫台地区を最有力としている。建設地の正式決定や整備スケジュール、概算事業費などは基本計画で決定していく。本年度中に基本計画を策定し、23年度から設計業務に着手する計画だ。なお、町は基本構想の策定に町民の声を反映させるため、パブリックコメントで23年1月10日まで意見を募集している。

 大洗町は太平洋と涸沼川に囲まれており、年間を通して水難事故が発生しているほか、町内に立地する原子力施設などにおける消防活動など、高度な消防本部機能が求められている。しかし、11年の東日本大震災の際には、消防本部庁舎が津波被害を受け、消防車両を高台に一時避難させるなど、現在の庁舎は災害対策の中枢機能を十分に果たせていない状況にある。また、庁舎建設当時と比較して職員数や保有車両数が増加していながら、消防訓練を実施するスペースや複雑多様化する災害へ対応するための訓練設備が不足しているなど、消防力の維持・向上が課題となっている。

 これらの課題を踏まえて、今後の消防活動拠点として果たすべき機能を考慮した場合、浸水想定区域内にある現在の消防本部庁舎で対応していくことは困難と判断。さらに、現在の敷地や庁舎では十分なスペースが確保できず、建て替えや改修の対応も困難なことから、町は新たな敷地に新庁舎を建設することを決定し、基本構想に着手した。なお、基本構想・基本計画の策定業務は柴建築設計事務所(水戸市)が担当している。

 基本構想案によると、新消防本部庁舎建設の基本理念は、▽あらゆる災害における消防・防災体制の維持▽最大限の消防力を発揮するための職場環境整備▽機能的かつ経済的な庁舎──の3つを掲げる。このうち、消防・防災体制の維持としては、災害時の停電や断水、燃料不足に備えて、自家発電設備や蓄電設備、井戸水などによる給水設備、自家給油設備などの機能を導入する。また、役場庁舎が浸水などで被災した際の代替災害対策本部機能も盛り込む。

 職場環境整備では、職員間での感染症防止対策として仮眠室の個室化や、女性消防吏員採用のための女性専用施設を設けるほか、職員や団員の技術向上や連携強化のための訓練設備を整備する。

 また、施設整備にあたっては、自然エネルギーなどの各種省エネルギー設備を積極的に導入し、経済的な庁舎を目指していく。

 移転候補地は、あらゆる災害の想定区域外であることに加えて、町の地理的な中心地点に近く、幹線道路とのアクセスが良好で、現庁舎の敷地面積を超える面積の場所が条件となる。これらを考慮し、▽JAEA旧夏海寮跡地▽防災ふれあい公園▽大貫台▽旧大貫小跡地──の4つを候補地として選定した。このなかから、基本理念と照らし合わせて総合的に検討を加えた結果、検討委員会の中では大貫台地区を現段階での最有力候補地としている。今後は住民説明会やパブリックコメントの意見などを反映させたうえで、建設地を正式に決めていく。

 今後のスケジュールは、年度内に基本計画を策定し、概算事業費や整備スケジュールを決定していく。順調にいけば23年度から設計業務に着手する方針だ。

 この基本構想案に意見のある者は、持参または郵送、いばらき電子申請・届出サービスで意見書を提出できる。詳しい問い合わせは、町消防本部消防総務係(電話029-266-1119、内線23)まで。

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