堤防4.1km改修案示す 粘り強い構造に築堤 名蓋川復旧で(宮城県)
[2022/11/4 宮城版]
7月豪雨災害で堤防が決壊した名蓋(なぶた)川の復旧について、宮城県が設置した有識者会議の2回目の会合が11月4日、仙台市内で開かれた。宮城県土木部は大雨が降った当時の状況や堤防決壊のメカニズムを踏まえ、堤防強化に関する対策案を示した。延長4.1kmを対象に法覆護岸を施工するなど、堤防を粘り強い構造に改修する考え。12月中に国の災害査定を受け、2023年度から調査設計に着手する意向だ。
11月4日に開かれたのは「名蓋川復旧対策検討会」(座長・風間聡東北大学大学院工学研究科教授)。河川や土質などの専門家、沿川自治体の関係者らが、浸水被害を受けた大崎市古川矢目周辺の洪水対策について意見を交わした。
鳴瀬川水系の名蓋川は7月15日から16日にかけて降った大雨により、下流側の左右岸の堤防3カ所が決壊した。2015年の関東・東北豪雨、19年の東日本台風でも堤防が決壊していることから、有識者会議で流域治水の方向性を検討している。
9月に行った初回会合の検討を踏まえ、2回目の会合ではどのような状況で水が流れていたのか、より詳細な検証を行った。名蓋川では計画流量(毎秒40立方m)を上回る毎秒58立方mの水が流れたとみられ、越水によって堤防の裏法が洗堀された。さらに、堤体に水が浸透し、水の通り道ができる「パイピング」が起こって決壊したと推測されている。
関東・東北豪雨、東日本台風で決壊した箇所は良質土で築堤し、法面を被覆するなどの災害復旧を行った。今回、復旧した箇所は越水しても決壊しなかった。その実績を踏まえ、宮城県は越水しても洗堀や水の浸透が起こりにくい対策案を示した。表法は法覆護岸工、遮水シートなどで浸食を防止し、さらに施工箇所を覆土して環境に配慮する。裏法は堤体に水が浸透しても排水できるよう、ドレーン工を施工する。
決壊した箇所の土を調べたところ、砂質土で粘性が弱く、越水や水の浸透に対して脆弱だったことが分かった。そのため、良質土で堤体を盛土し直し、堤体そのものを粘り強い構造に作り変える。また、現況の天端は幅が2m未満の箇所もあることから、3mを確保した上で舗装する。改修する区間は、河川整備計画で定めている多田川との合流地点から、約4.1km上流の国道347号までとする。
名蓋川の災害復旧に向けて、12月中に国の災害査定を受審する予定。「流域治水型災害復旧」、「越水させない原形復旧」など復旧方法の違いで支援を受けられる国の制度が異なるため、最適な支援制度の活用を検討する。査定額が確定後、23年度から調査設計、用地取得を進め、改修工事を行っていく方針だ。
宮城県は12月に最後の有識者会議を開く予定。河川改修だけでは災害抑制が難しいことから、住民の意見を聞きながら輪中堤や二線堤、遊水地などの整備、田んぼダムの活用など、最適な流域治水を検討している。最後の有識者会議では、抜本的な対策を提案することにしている。